表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/24

14 セーフハウス

ホイールルート。

4体の女王の縄張りの境目。女王と配下のモンスター同士が牽制しあっている安全なルート。ただあまり高額なアイテムも手に入らない。


ネズミ。

ホイールルートを回すハンターのこと。危険を冒さず安全な探索しかしないハンターを侮蔑する言葉。

 湊さんと別れ、渡世は徳さんと一緒に≪女王の庭園≫に潜る。2人で無言で異界の植物や虫を採集し、鉱石を掘り、モンスターと戦う。今回はいつものホイールルートを回るネズミになるのではなく、ハンターらしく異界を探索する。


 女子高生に世話を焼かれているという事実に、ネズミのおじさん2人も流石にちゃんと仕事をしようと我が身を省みたのだった。


「ちょっと休もうか」


「うす」


 渡世と徳さんはコバルトブルーの湧き水が小さな湖を作っている場所で腰を落ち着ける。木々とツタ、葉と草がドーム状に湧き水の周囲を囲っており、コバルトブルーの湖が優しく輝いている。

≪女王の庭園≫のセーフハウスの1つだ。

 

 異界にはモンスターが寄ってこない場所があり、ゲート周囲のスポーン地点、そしてセーフハウスがある。

 セーフハウスの大きさは様々だが、必ず人が休めるぐらいの空間がある。異界に点在しており、セーフハウスは秘境のように壮大で美しい場所が多いため、それを探す専門のハンターもいるぐらいだ。


 このセーフハウスも綺麗な場所である。あまりにも美しくてカップルが盛り上がる場合もあるため、『公序良俗に反する行為はお止めください。ハンター協会』と看板が立ててある。それが景観を崩しているとハンター協会にクレームが来るらしいが、撤去されることはないだろう。


 その看板の横辺りに火をおこす場所や調理器具が置いてある。水場もあるしキャンプ場みたいな雰囲気だ。


「綺麗なとこですね」


 渡世は初めて訪れたのでキョロキョロ辺りを見回す。


「気温も良いし、心地いいよね」


 今日は貸し切りだし、と徳さんはペットボトルの残りを首からかけている。


「渡世くん、水は心配しなくていいよ」


 徳さんはそう言ってくたびれた体を引きずり、コバルトブルーの湧き水をペットボトルに汲む。


「くぅ~……! キンッキンッに冷えてるぅ~」


 まるでよく冷えた生ビールを飲むときのような徳さん。それに釣られて渡世も湧き水を汲む。


「おぉ……」


 徳さんの言うようにキンッキンッに冷えているのに、手がかじかんだりはしなかった。ペットボトルを傾け、湧き水を口に含むと、渡世は一気に飲み干した。

 口当たりが柔らかく、スーッと体にしみこむようだ。思わず何度も湧き水を汲んでしまう。

 

 ペットボトルで3杯飲んだところで、渡世はゆっくり息を吐いた。ジワジワと失ったエーテルが回復している気がする。


「気持ちいいよね、この水。冷たいのに飲んだ後、体がじんわり温まって」


「サウナみたいな感じですよね。整うというか」


 そーそー、と徳さんは間延びした返事を返し、渡世も地面に寝転がる。探索の後の疲れた体にエーテルが染み入る感覚は気だるげな快感がある。


 銭湯や温泉の一角でダラダラするおっさんを見事体現した2人は、彼らを狙う影がセーフハウスを囲み始めていることに、まるで気づかなかったのだった。


面白ければ高評価ブックマーク登録お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ