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10 ゲート

「人が多いですね……」


 渡世は少し人込みで酔ってしまう。ゲートターミナルにはハンターだけでなく観光客も多く訪れるので人が多いのはいつも通りだが、今日は更に多い気がした。


「だねー……」


 徳さんも若干テンションが落ちている。元ホームレス2人は活気のある場所が苦手なのである。


「――キャアッ!?」


「ウソッ!!!!?」


 顔をうつ向かせた渡世と徳さんを追い越した女子高生2人が、突然大きな声を上げ立ち止まる。


「………」


 顔を見合わせ、人込みに紛れるように女子高生2人から遠ざかる渡世と徳さん。何事かは分からないが面倒ごとの匂いを感じ取り、誰にも不自然と思われない熟練の距離の取り方である。


 そんな渡世と徳さんと入れ替わるように女子高生の2人の連れなのか、男子高校生2人が声をかけている。


(あ、見たことあるな)


≪女王の庭園≫でよく出会う高校生4人組だった。

 

「うわっ、赤備えだ……本物?」


「本物……じゃね? メンバー全員居るし」


 騒いでる女子高生二人ほどではないが、彼ら二人も興奮しているようだった。高校生4人組が浮足立つと同時に周囲の熱気が上がり人垣ができていく。


 その人垣の中心に、『赤備え』というハンターたちが居るのだろう。ハンターは生半可なアイドルや芸能人、俳優などの著名人よりよっぽど人気があるからだ。ただ、それにしても集まった観衆の熱意は異常だ。もしかしたらトップハンターが来ているのかもしれない。


 ――しかし、渋い。


 集まった観衆の年齢的に赤備えのメンバーは若そうなので意外である。歴史好きか、武田真田井伊辺りのファンでもいるのだろうか。


 名は体を表すというが、人垣からチラチラ見える赤色が鮮やかだ。


「周防君ッ!!? カッコイイッッ――!!」


「瑠璃ぢゃんッッッ――」


 そんなライブ会場のような熱狂を背に、渡世は青みがかったエーテルの奔流が生み出す空間の歪み――ゲートを見る。

 ゲートの周囲は防護壁で囲われ、その上を天蓋上のドームで覆ってある。ハンター協会の警備隊員が常駐しており、物々しい雰囲気だ。外の騒ぎも、ゲートの近くでは不思議と鳴りを潜める。


「どうしたの渡世くん?」


 ゲート前で固まった渡世に、徳さんは不思議そうに振り返る。内心足がすくんでいたが、渡世の表情は元より死んでいて無表情のため、気づかれていないようだった。


「――いえ、腹が減ったなと」


「はは、お菓子あるよ、いる?」


 あるのか。

 徳さんからお菓子を貰い、渡世はゲートに向かって歩き出す。

 何度ゲートに潜っても慣れやしない。異界に向かうとわかっているのだが、どうしても異世界がチラつき、自分が変わってしまわないかと不安になる。


 右手に握ったお菓子を握りつぶしながら、渡世はゲートに触れたのだった。


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