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欠損奴隷

僕、エルフェ.サーシャはとある女冒険者に再開し、恩を返すために冒険者となった、迷宮に潜るために奴隷を買おうとしていた、そんなある日ー

2年前、14歳の頃。僕は魔物に襲われ、その時に助けてくれた女冒険者に憧れて冒険者になった、その女冒険者の通称は


“銀の流星”ソフィア


E〜Sまである冒険者ランクは最高のSランク、最強の獣人と呼ばれ、その剣戟という戦闘スタイルの為に、戦闘中は長い銀髪と9本の尾が激しく揺れる…まるで銀の流星が流れるような様から付けられた二つ名らしい


彼女の強さを讃える逸話は多々あり、“最強と謳われる先代竜王を相手に3日3晩戦い通し、友と認められた”という物や“同盟を組んだ複数体の魔王種を相手に打ち勝った”等、とにかく凄まじい


そして2年後となり成人した今、僕エルフェ.サーシエルは、彼女にもう1度会うために冒険者になっていた!と、言っても各地にある迷宮に入りながら、ドロップアイテムを売って暮らしているんだけどね


「さて…ついにこの階層に突き当たる日が来たな…6階層はゴブリンがメインだから随分と余裕があったけど次はスペクターか、光属性の魔術を使えるパーティーメンバーがいないと厳しいけど俺ソロだしな…遂にこの時が来たか」


ギルドのメンバー募集掲示板にも求人を載せているが、いかんせん自分を入れて新米冒険者2人との、総勢2人のパーティーなど誰も入りたがらない、ましてや貴重な光属性の魔素持ちとなれば尚更そうだろう


と、言うわけで俺はこの日のために低位階層を周回してお金を貯めていた、何故かって?奴隷を買う為だ、

おっとここで誤解をして欲しくないのはあくまで共に戦闘できる仲間としての奴隷だ、性目的の奴隷は今の僕には需要がない


迷宮を出ると裏市を目指し歩き出す


裏市というのは通常の市場と違い、奴隷1つをメインに扱う市場だ、奴隷自体は違法ではないが国王曰く“賑やかな市でやることではない、市をそれぞれ裏表でわけ、裏でのみ奴隷を扱うようにせよ”とのことらしい


薄暗い路地をいくつも抜け地下道を抜ける、どれほど歩いただろうか、日が僅かに傾き始めた頃に裏市に着いた


市とは言っても、露店が連なっている訳では無い、それは国が管理、運営していてかなり大きなテント1つの中にいくつもの檻が並べられていて、さらにその中に奴隷達が並べられているのだ


…予算は大丈夫、安い戦闘奴隷なら1〜2人は買えるはずだ


「失礼、商品を見せてくれるかな」


「おい…坊ちゃんが来るような店じゃねぇ、とっとと帰りな」


入り口を見張っている兵士が帰れと促してくる


「はは、こう見えても成人はしてるんだ、これが僕の冒険者カードだよ」


「おっとこれは失礼、ちゃんと公認のカードだな、もしこれが偽造ならあんたがここの商品になっちまうから気をつけろよ、じゃあごゆっくり見ていってくれや」


そう言って見張りの兵士はテントの入り口を開けた


てか怖!冒険者カードの偽造が重罪なのは知ってたけどまさか奴隷落ちするとは…


さて品揃えを見ていくが…まず1〜4列目までの性奴隷は論外だから飛ばす、5番目〜12番目までの戦闘奴隷が僕の目当てな訳だが


高い!!!


流石に最初の方の檻は種族が良かったり、元騎士団などだけあって流石に高い…


「ん〜…これだけいても光属性の魔素使いはほぼいないか、いても手が届かないし」


そう考えていると不意に一番奥の檻が目に入った


《欠損奴隷》

用途

魔物の囮役に最適、逃げる際の捨て駒にも最適


難点

奴隷によっては自分一人での日常生活すらままならず餓死して価値を失うのを避けるために買ったら比較的すぐに使わなければいけない


「なんだよこれ…奴隷落ちした時点で奴隷は人じゃない扱いを受けるとは聞いたことがあるけど…これじゃ…家畜以下じゃないか」


自分たちの末を知っているのか、ここの檻にいる奴隷達は他の檻にいる奴隷達と違い自らを売り込まない、


自分を買わないでくれ、そう言わんばかりの目で見てくる


「そう睨まないで、僕は買わないから」


そう言って後にしようとした時、弱々しい声が聞こえて来た


「私を…買わないか…。。?」


「え」


その声は聞き覚えがあるというような物ではない、絶対に忘れられない声だ


「光属性の魔術全般と…癒しの魔術が使え、る…この体じゃ使えないが剣も使える…どうだ…?」


汚れても尚輝きを失わない銀髪、汚らしい衣を纏っても光り輝く様に白く美しい肌、泥に塗れても高貴さを失わない9本の尾


「あなたは…何故こんな所に…?」


「私を知って…いるの、か…?」


僕は溢れ出る涙を拭うと


「買います…貴女は、僕が買います…!」


「坊主…その奴隷を買うのか?」


いつのまにか、スキンヘッドのおっさんが後ろに立っている…ここの店員さんだろうか


「…その奴隷の正体を知っているなら、どうしてそうなっているのか、それを知る権利がある…それを知る覚悟はあるか?」


「…はい」


そして僕は聞いた


その“物語”はあまりに残酷で、不憫で、理不尽な物だった


「そういう事だ…お前はそれでも、彼女を買うか?」


「勿論です…あの人は…僕が幸せにしてみせます!」


「はは!幸せにか、せいぜい頑張れ!会計はここで済ませてやる、俺の名前はゲイツ、奴隷関係で困ったことがあったら俺に聞きに来い、わかる範囲で教えてやる」


「はい!」


「嬢ちゃん、出な…買い手が出た」


「!いい、のか…?」


「勿論です…!貴女は、僕が幸せにしてみせます…!!」


「坊主…ここでイチャつくな」


「す、すみません!!」


それから僕は会計を済ませると、彼女をおぶりながら外へ出た


見張りの兵士が何か言っていたがそれすらも聞こえない程、僕は再開への喜びと、その呪われた物語への強い憤りを覚えていた


無言で彼女をおぶりながら歩いていると、彼女が口を開き、語りかけてきた


「ご主人様…この様な体ゆえに自力で歩けぬ事、申し訳ない」


「いえいえ、全然大丈夫です!それとこれはお願いなのですがご主人様という呼び方はやめてください、ソフィアさんは僕の命の恩人なんです…恩人にご主人様と呼ばれるのは少し違う気がして…エルフェと呼んでください」


「私が…エルフェ様の…?」


「はい!小さい頃、ロバルの森でトロールに襲われた僕を助けてくれて…それでソフィアさんみたいになりたくて冒険者になったんです!」


「あぁ…あの時の少年がエルフェ様だったのですか…エルフェ様は、今の私の様をみて…失望しましたか?」


「失望だなんて…そんなことはありません、ただー」


「?」


「ソフィアさんの仲間は絶対に許しませんよ」


聞いていた、歴戦の冒険者であるソフィアが身震いを覚える程に、感情の籠っていない冷たい声で、エルフェはそう呟いた




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