戦いの跡
教会はボロボロになってしまった。
全ての窓は割れて、壁は崩れて、床は裂けている…。酷い有様だ。
床に転がったカミラ、壁に打ち付けられ気絶したままの司祭とグレイ男爵。
取り敢えず、そのまま拘束して、裁きを受ける為王城へ転移陣で送った。ニコルによって、手際良く作成された報告書と一緒に。
生贄とされた子供は、事切れる直前に女神の癒しが間に合った。助かって本当に良かった!
教会内部には、他にも痩せ細った具合の悪そうな数人の孤児が居た。
皆まとめて女神の癒しをかけると、驚くほどの回復をみせた。
孤児達の居場所である教会は、早急に建て直し必須な様だ。
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さて、この状況はどうしたものだろう?
とてつもない美貌で、ひたすら愛おしそうに見つめ、後ろから抱きしめて離してくれない…魔王。
この場から逃げ出したい…女神…の私。
事後処理しつつ、複雑極まりない表情のニコル。
カオスだ…。
どうにか魔王の腕を振り解き、振り返る。
「ところで、魔王様はルーカスの記憶があるのですか?」
「いや、この身体ルーカスの中に魔王の魂とルーカスの魂の二つが存在している。」
「えぇ!?では、ルーカスは別に存在しているのですかっ?」
「そうだが?」
当たり前の事のようにサラッと言ってくれちゃってるっ!
「シャルルはルーカスが気になるのか?」
魔王は切なそうな表情になる。
「勿論です!彼は大切な友…」
そこまで言って気がつく。
魔王がルーカスでないなら、本来の私、皇子…男である事。異世界転生者である事とか知らないのではないのか??これ、1から説明しなきゃなの?
もしかしたら…と、希望的観測で尋ねる。
「魔王様とルーカスは記憶を共有する事は出来るのですか?」
駄目元で聞いてみる。
「できるが。」
それがどうした、と言わんばかりの顔をする。
うーん………便利だっ!
「魔王様に知って頂きたい事柄があります。」
他の人の前では言えない、私の秘密…。見る見るうちに険しい表情になる。
「まさか…お前達は俺の知らぬ間に…恋人に?」
は?何か勘違いしてらっしゃる…。面倒くさっ!
「ないです!それより、早くルーカスと共有して下さい。」
仕方ないとばかりに額に白く長い指を置き瞑目する。
――身動き一つしない。
どうしたのだろう?まさか、ルーカスに何かあったのか?
たった数分の事が、とても長く感じた…。
瞼が動き、眼を開くと私を見て頷き一言。
「問題ない。」
「へ?」
変な声をだしてしまった。
(…何が?)
いったい何が問題ないのだろうか?




