王城にて
さて、今の状況は思いだした。
明後日から国家最高峰の学び舎である、オンディーヌ学園に入学するのだ。
まあ、王族だの貴族だの一部の平民(能力の優れた者に限る)が、国の為に教養や魔術、社会組織を学ぶ。
15歳になると入学する、中学?高校?そんなところだ。
その最終準備をしていた時に、頭痛に襲われて倒れたんだ。
前世をなんとなく思いだしたが、社会人であり主婦でもあり学生時代オタクだった私は、(魔術って!)突っ込みどころ満載ながら適応できそうだ。
まあ、どうせなら性別は同じままが良かったんだけど。
今までの恋愛対象は男性で、これからは女性になるわけでしょ。
うーん。王族なら結婚しなきゃまずいよね?
ちゃんと結婚できるか、そこだけは不安。
もうアラフォーで(でも、40才に見られたことはないのよ。いつも実年齢よりだいぶ若く見られたし。)、夫婦仲よろしく不倫なんて面倒くさいこと興味もなかったし、出産育児も経験したし、超バリバリの美容師だったし―――早くおばあちゃんになって孫抱きたかったけど。
まあ、いっか。
いつか出来るであろう孫の面倒は、夫が見てくれるだろう。
うん。
私は私で王族三男坊として生きていこう。
また学生になれちゃうんだもんね。ラッキー。
「…シャルル様、御気分はいかがですか?」
と、心配そうな瞳で覗き込むのは―――
「ルーカス…」
幼なじみでもあり、親友で側近のルーカス。
超イケメン…容姿端麗、頭脳明晰な彼から不安そうな視線をうける。
「すまない、心配かけた。もう大丈夫だから。」
そう伝えると
ふぅ。と、
強張っていた瞳に安堵の色がみえた。
少し年上に見える彼も同い年、15歳でこれから一緒に学園へ入る。
「さあ、もう大丈夫だから続きをしてしまおう。」
サラッと薄茶色の髪が揺れた。
優しく微笑んで「はい。」と返事をした。
広い廊下の向こうから、数人の側近や近衛を連れた人物がやって来る。
少し癖のある金髪で、背が高く騎士の様ながっしりとした体つきではあるが、人の良さそうな朗らかな笑顔で白い歯をみせてニッと笑った。
「アンドレ兄上。」
兄である第二皇子だ。
「シャルル。倒れたと聞いたが、大丈夫か?」
「ご心配をおかけし、申し訳ありません。大丈夫です。」
笑顔を向けると、学園に入る前にしっかり回復しておくようにと、頭をグリグリ撫でられた。
弟に優しい、いいお兄ちゃんだ。
王族には珍しく、兄弟間は仲が良いのだ。
アンドレお兄ちゃんは、王になる長男のアーサーお兄ちゃんを助け騎士団総裁となりサポートしていくのだろう。
アーサーお兄ちゃんは外交とかで忙しく、公式の場以外ではなかなか会えない。
ただ一つ思う。
(何で皆んなイケメンなんだろう…。)
見目麗しい兄弟や側近は…うん、目の保養だな。