不安
そこには持ち出し厳禁の、重々しい雰囲気の本が沢山並んでいた。
(さて、どれから読んでいこうか…。)
なんとなく端の方を見遣る。
そんなに分厚くはないが、とても古めかしい少し埃っぽい本を手に取る。
古語で書かれている―。
(読める私って…以外と優秀ね…。)
―これは御伽噺?―
この世界の創造者=神と呼ばれる者。
神が創った世界。
上の人間界を女神が。下の魔界を魔王が治める。
相見える事のないはずの二人が出会い愛し合う。
嫉妬に狂った神による…悲恋。
(切ない話だなぁ〜。嫉妬に狂う神って!最早神じゃないんじゃない?)
他にも色々読んでみるが、外が暗くなってきたので今日はおしまいにする。
私が中に籠もっている間に、ルーカスは国中に点在する教会の位置等を調べて地図に印していた。
王の口伝の中に、教会の下に封印したとあったそうだ。
ただし、場所の特定は出来ていないらしい。
部屋に戻り二人だけになると、印された地図を広げてみた。
以外と多くて驚く。
女神の姿になり、教会の場所に何か感じないか手を翳しつつ、書庫で見つけた御伽噺の事を話した。
「確かに、それは引っ掛かりますね。王の口伝に似ています。ですが…、その神というのが魔を司るものなのか……」
本当に同じ噺しなのか定かではない。
瞑目して考えを巡らすルーカスを見詰める。
…魔王…と、同じ顔。
(相変わらず睫毛長いなぁ…。)
小さい頃から見慣れた、大切な友。
魔王の死を一瞬とはいえ見てしまった今…不安がどんどん増していく。
あの時の姿が重なり、胸が…苦しい―。
パチっと目が開く。
あ、顔近っ!
見詰めるあまり近付き過ぎていた。
次の瞬間…!ガタンっと椅子を倒して、ルーカスは後ろに飛び退いた。
(え?ちょっと失礼じゃない?そんなビビらなくても…凹むわぁ。)
見る見るうちにルーカスの顔が赤くなる。
何事!?
「す、すみません。お顔が近かったもので―。」
手で口を押さえつ、首まで真っ赤だ。
窓に映る自分が女神の姿…今は女性だったと気が付いた。




