湖のほとりで
朝日を浴びて、眩しさに目を覚ます。
そこには…黒髪の男―――
ではなく、ルーカスの顔があった。
そしてここは、湖のほとりだ。
直接脳に流れ込んできた情報で、大体のことは理解できた。
数百年前――私は女神と呼ばれる人間だった。
最愛の黒髪の男は…魔王…だった。
そして、あの剣は…。
全てを理解するには、情報が足りない。
(いつの間にか、日付けが変わっていたのか…。)
王城から学園までは、だいぶ距離がある。
あの直後に、ルーカスは馬で学園に向かったのだろう。
なぜ、私が湖に現れるのをしっていたのか。
じとりとルーカスを見る。
過去の出来事と、異世界からの転生、そして何かが起ころうとしている現在。
髪色は違うが…同じ顔の男。
全てが繋がっているはずだ。
「…シャルル様、寒くないですか?」
私の探るような視線を無視して、背中を起こしてくれた。
彼の手が震えている。
ああ、本当に心配してくれているのだ。
ルーカスは、湖にいつ到着したのだろう?
どの位の時間…私が目を覚ますのを待っていたのか?
「…だいじょ…うぶ。」
あらら。
自分の声に、また女神の姿になっていることに気が付いた。
しかも、湖から出たはずなのに濡れてもいない。やはり、あの光の力が作用したのだろう。
春の朝日で、湖のほとりは暖かい。
幸い学園は連休で、誰も居ないはずだ。
だから、この場で聞いてみる。
「貴方は何を知っているの?」
敢えて女性の口調で聞く。
きっと、ルーカスも…私の知らない何かを抱えている。
この際、全てを受け入れよう。
―おばちゃんポジティブスキルなるようなる!始動よ!―
(さあ、話してもらいましょうか。)
ルーカスは苦しそうに眼を伏せた。
そして、視線を上げ重い口を開いた。




