過去
光に飲み込まれ、真っ白な何も無い空間へ放り出された。
無数の球体の光が四方八方から飛んでくる。
ドンっ!
衝撃と共に球体が身体の中に吸い込まれた!?
また全身が、温かくなってきた。
次の瞬間―――!
頭の中に無数の声と、フィルム映画の様に次々と映像が入ってくるっ。
苦しいっっ!
また死ぬのだろうか?
前世では走馬灯すらみなかった。
……………………………………………
(苦しさがやっと治った…。が…!どこだ?)
―見覚えの無い教会―
そこにはシャルルそっくりの、あの女神がいた。
ボロボロの教会で、割れた窓から風が入って来る。
柔らかく靡く髪をそっと押さえて、隣に佇む男に微笑みかける。
黒髪の長身の男は目を細めて、愛おしそうに頬に触れた。
そして、彼女の手を取り…左の薬指に指輪をはめた。
幸せそうな二人。穏やかな時間が過ぎる。
(あぁ、あれは最奥の間を開けた指輪だ…。)
―突如!視界が真っ暗になった。―
暗闇から禍々しい物が溢れてくる。
ぶるりと…背筋が粟立つ。
次に見えたのは戦禍にみまわれた人々の叫びと、無数の死体。憎しみを溢れさせた人々が殺し合う。
手が震える…吐き気が止まらない。
(戦争…?…この惨状はいったい…)
―景色が変わった―
泣きじゃくる小さな子供達が、ボロボロの教会に集まっている。
皆あちこちを怪我している。目を覆いたくなる惨状だ。
堪らず手を伸ばすが触れる事は叶わない。
(くそっ!何も出ないのかっ!)
肩で息をしながら女神が走ってきた。
一気に癒やしをかける。
女神が七色に輝き、みるみる子供達の怪我が治っていく。
(…良かった!)
―また暗闇が広がる―
「――――!」
女神の…声にならない叫び声だ。
教会で一緒にいた男が倒れている。
(血…?どんどん広がっていく。)
涙を流し続ける女神と、息絶え絶えの男は何か言葉を交わす。
そっと抱き合い、二人が青い光に包まれた。
………………………………………………
ゴボッ!!
苦しいっ!息ができないっ…!
『…ふふふ…だいじょうぶ。力を貸してあげる…』
呼吸が楽になる。
(ああ、光たちが力を貸してくれたんだ…。)
懐かしい精霊達…何故だかそう思った。
遠退く意識の中…あの女神と一緒に居た黒髪の男の顔がルーカスだった…と、気づいた。




