メラニーさん、屁の突っ張りはいらんですよ!
メラニーは魔法使いである。
彼女は魔法使いの世界で有数の使い手であるが、ある呪いをかけられていた。
魔法を使用すると……屁が出まくるのである。
彼女の容姿は金髪のセミロング、ターコイズブルーの瞳の綺麗に整った顔の美人である。
18歳の若き魔法使いには、親しい友人もいない。
魔法使い仲間たちからも「屁こき魔法使い」
や「臭さすぎる魔法使いと話題に」と馬鹿にされてきた。
「この呪いを解かなきゃ友人はおろか恋人もできやしない!」
本日も一人魔法ギルドに仕事を貰いにやってきた。
「お疲れ様です、メラニーさん」
ギルド受付嬢のリサである。
「鼻をつまみながら喋るのやめて!失礼よ。」
「やだなぁ、冗談ですよww」
「はいコレ、ポーション50個納品ね。」
「はい、確認できました。報酬金貨3枚です。」
「はいどうも。」
彼女は報酬を受け取ると転移魔法でギルドを後にする。
「じゃ、また来るから…」
彼女が魔法陣に包まれ消える瞬間
「ブッ ビリ〜」
なんとも嫌な音を尻から奏でてから消えてゆく。
ギルド内には汚臭だけが残された。
「くせぇ!」「あいつは何食ってんだ!」
ギルド内に罵声があちこちから聞こえ、
鼻をつまみながら窓を開け換気をする職員たち。
「あれがなければ世界最高の魔法使いなのに。」リサはため息をはきながら呟いた。
ある日ギルド受付に依頼が届けられた。
「石化の魔法をかけられた王子の呪いを解いてほしい。」
王族よりの依頼を魔法使い達は、受注しては失敗してを繰り返していた。
これに痺れを切らした王族は、魔法使いギルドへ最終警告を行った。
『依頼を達成できないなら魔法ギルドを解散せよ。』
魔法ギルドがなくなれば職員達も職を失うばかりか、王族により国外追放処分となってしまう。またこの国の王様は、勇者の末裔。
その気になれば魔法使い達を殲滅する程の力を持っており、実力行使で排除されるのは避けたいところ。
「誰か優秀な魔法使いに心当たりはないか。」ギルド長のジーンは職員と対策会議をしていると、ある魔法使いの名前が浮上してきた。
「メラニーさんは?」リサはメラニーを推薦した。
各職員達もメラニーを推した。
しかしジーンは「たしかに彼女は優秀だが…あの王族は下品な者を嫌うんだよなぁ。」
「一度彼女と依頼について話してみては?」
「そうだな…リサ、明日にでもメラニーの家に依頼を届けて話をしてくれ。」
リサは嫌そうな顔で「うへぇ」と返事をした。
次の日リサはメラニーの家まで来ていた。
メラニーの家はギルドより山を越えなければならず、転移魔法が使えないリサは、浮遊魔法で彼女の家にたどり着いた。浮遊魔法は空を自由に飛ぶ事が出来るが、非常に繊細な魔法である。緻密な魔法制御と、魔力量が枯渇しない様に注意しなければならない。
「はぁ〜疲れた。私が一番下っ端ですけどギルド長は転移魔法が使えるんだから、ギルド長が行けばいいのに。」リサはギルド長に悪態をつきメラニーの家の扉を叩いた。
「メラニーさ〜ん。リサです、開けて下さいよ〜。」リサは鼻をつまみながらドアを叩く。ガチャ
「鼻をつまみながら喋るのやめてっていてるでしょ‼︎なんなのよ、こんな所まで来て新しい嫌がらせですか??」
「やだなぁ、いつもの冗談ですよw」笑いながらマスクをつけるリサ。
「なんでマスクつけてるのよ!」
「いや、なんか、こう…お部屋が汚屁屋な感じがしたりなんかしてw」
「……骨もならない様に燃やしてほしいのね?」無表情のままメラニーは手のひらから青白い炎を出していた。
「すいません。冗談です、話を聞いてください。」リサは土下座しながら今回の依頼を話した。
「ギルドを助けてあげたいけど、先ずは石化の状態よね。石化から5年を過ぎると石化は解けないわよ。」
「そうなんですか?確か王子が石化してから来月で丁度5年ですね。よかったぁ、まだ間に合いますね。って今オナラしました?ピリッて音がしましたよwうぇっ、くっさ」「おい、自分の家で屁こいてなにが悪いんだよ!私は別に依頼を受けなくても困らないケド?」リサは再び土下座して「嘘です、臭くないです。香ばしいです、お願いですから依頼を受けて下さい。」
ため息しながらメラニーギルドへ向けて出発した。