表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/120

はじめてのクエスト(1)

 昨日はあれから宿探しをしました。最初は後払いを渋っていた宿も、奥の手のパスポートの刻印をチラ見の術を使いましたところ、スムーズに決まりました。ふっ。キモいけど王様(仮)、役に立ちましたよ。キモいけど。ここは大事な事ですね。


 今日のスケジュールは、「朝:牛乳配達」「牛乳配達終了後~昼:ベビーシッター」「午後:広場の草抜き」「夕方:荷物の配達」「夜:宿屋の食事スペースの掃除」以上名声各1、合計5名声分の依頼です。


 まだ、日が登る途中の薄暗い中私は牧場を目指しました。

・・・牧場めっちゃ遠いです。徒歩で行くとこじゃないです。絶対。街から牧場に向かって牧場から牛乳をお預かりして、また街まで戻って配達するなら、牧場近辺を拠点にして“街から牧場へ向かう”という無駄を失くさないと、このクエストはキツイかもしれませんね。

まぁ、私にはそんなのは無問題ですけど。ふふん。

昨日チュートリアルで確認したステータスの体力と速さならイケる筈です。

私は猛ダッシュをかましました。


チャラララ〜♪

【リリーシュカはスキル・高速移動を獲得しました】


 あぁっ、私今走っています!思いっ切り走っています!めちゃくちゃ体力あるから息もあがりません。

こんなに長く心臓を気にしないで走ったのは生まれて初めてですっ♪

これが・・・これが・・・生きているって事なんですねっ!


「おはようございまーす!牛乳配達のバイト・・・クエストに来ましたぁ〜!」

「おはよう。今日の配達先のリストと地図と牛乳ね。頼んだよ」

「はいっ!お任せください。お任せっ・・・くださぃぃぃ!ふんぬっ・・・」

「おいおい、お嬢ちゃん大丈夫かい?」

「だいっ・・・じょう・・・ぶっで・・・すっ」


 くっ・・・私とした事がとんだ失態です。牛乳を積んだ荷車がクッソ重たかったのです。びくともしません。力の無い私にはとてもこの荷車を引いてダッシュは出来そうもありません。牛乳配達・・・舐めてました・・・。


「お嬢ちゃん、これじゃ駄目だよ。今日は仕方ないから俺が行くよ」


 牧場主のおじさんにガッカリした顔をさせてしまいました。

あぁっ。私が尊敬してやまない、世紀末の英雄ケン・シローだったら!ケン・シローとフュージョン出来たならっ!!


『アイテムボックスめがけて物を投げ込めば冒険はラックチーン♪だょ☆』


 はっ!!そ、そうです!その手がありました!!モルゾーの口調はキモいけど抜群のインパクトのせいか、耳に残っていて覚えていました。くっ。王様(仮)恐るべし・・・。私の脳内にまで侵食してきています・・・。


「お、おじさま!私行けます!」


 私は牛乳を一本一本アイテムボックスに入れて牧場を後にしました。


「お嬢ちゃん、頼んだよぉぉ〜〜〜」


 コツさえ掴めばチョロいもんです。私はさっさと牛乳配達を終わらせて次のクエストに向かいました。


 

 次は・・・午前中お出かけする婦人に代わって赤ちゃんの子守ですね。 


「おはようございます。赤ちゃんと一緒にお留守番にきました」

「あら、早かったのね。助かるわ。私これから美容室の予約をしているのよ。でもこの子が居たらお店にご迷惑がかかってしまうから冒険者ギルドにお願いしたのよ。」

「お任せください」

「じゃぁ、終わったらすぐに戻りますからそれまでこの子・・・ラブリーちゃんと待っててくださいね。これ、ラブリーちゃんのお気に入りのおもちゃとお着替えですので。あ、おやつはテーブルの上に用意してあります。では、宜しくお願いします」

「行ってらっしゃいませ」


 ラブリーちゃん・・・ラブリーちゃん?前世でいうところのキラキラネームってやつじゃないでしょうか?あの、お子様用椅子にでーーーんと座ってらっしゃる横綱級の赤ちゃんがラブリー・・・ぷっ・・・ちゃん・・・。いえ、笑ってないですよ!笑ってなどいませんから!あー、でも困ったなぁ。私の力じゃラブリーちゃんは抱っこ出来そうにないなぁ。泣きだしてしまったらどうしましょ。


「ラブリーちゃーん。お姉ちゃんと一緒にお留守番しましょ〜ね〜」


 私は見事なまでの余所行きの笑顔をラブリーちゃんに向けました。


「チッ」


 ん?今この子舌打ちしませんでしたか?


「ん!ん!」


 なんでしょう?何かを指差しています。

あ、どうやらテーブルの上のおやつをご所望の様です。


「はい、どうぞ〜」


 テーブルの上のビスケットを1枚取ってラブリーちゃんに渡しました。


バリッバリッポロポロ


「あぁ、ラブリーちゃん!食べ物で遊んだらダメですよぅ」


 ラブリーちゃんはビスケットを粉々にしてカーペットの上にこぼしました。


 えっと掃除機掃除機・・・勝手にそこら辺開けますね!緊急事態です、すみません。

そこら中の収納スペースを開けて回りましたが、掃除機がありません。もしかして、この世界には掃除機なるものは無いのではないでしょうか?だとしたら、この世界では掃除はどうやって行っているのでしょうか。

 その時です。ふと、外を見るとお隣の家の窓から女の人と男の人が抱き合っているのが見えました。ふふふ、朝からお盛んですね。


 いやいや、そんな事より早くお掃除しなくちゃです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ