マザー
「えと、初めまして。私がマリーメリーの我が家の代表をしています、メリーと申します。こどもたちからはマザーと呼ばれています。いえ、マザーは先代の代表のマリーの呼び名だったんですが、先代のマザーが病に倒れ、私が後を継いだのでそう、呼ばれています。まだまだマザーの様にはいきませんけどね」
メリーさんは20代半ば位の清楚な方です。栗毛色の髪の毛を1つの三つ編みにして、眼鏡をかけているのでおとなしめなイメージです。
「メリー、これ。遅くなってごめんね」
「まぁ!こんなに沢山・・・。これで当面の間は安心です。でもあなた達ばかりに負担を追わせてしまって・・・」
「いいんだよ!メリーは日頃こども達の相手で忙しいんだから」
アミュールさんがメリーさんにクエストの報酬を渡しました。
「あのー、王はここに来た事は?」
「・・・ありません。補助金の申請をしに行った時に会ったっきりです」
「ソフィアス様、城に帰ったらおっさんぶん殴っていいですかね?」
「リリーシュカが手を汚す事無いのだ!!やるなら私がっ・・・私がっ・・・」
汗をだらだらとたらしていますね。怖いんですね。おっさんが。しかし、おっさん抜け目が無さそうな狸親父なのに、何故この問題を放置しているのでしょうか。
「ここには様々なこどもが連れてこられます。ここに連れて来られる子はまだいい方です。中には親元に居ても愛情を注がれず疎まれたまま育つ子や、山や森などに置いて行かれてしまう子など、私達の保護が及ばず辛い思いをするこどもも少なくありません」
「まぁ!なんて無責任なの!!」
「でも、一概に親が悪いわけではないケースも沢山ありますので、とても難しい問題です。私達は、そういう悩みを抱えた家族の助けになれば、こどもが傷つく前に如何にして救う事が出来るかを常に考えています」
うーん。重たいなぁ。実に重たいものを抱えていますね。しかし、この人達だけが重たい荷物を背負っているのはおかしいです。
「・・・この事は私とソフィアス様が責任を持って王に進言します。ただ、私もソフィアス様もそんな権限は無いので何も出来ないかもしれませんが・・・」
「いえ、そんな!滅相もございません!」
「ソフィアス様・・・。私が何をしても、ついてきてくださいますか?」
カチッ
「勿論だよ、リリーシュカ。私は一度城を捨ててまでリリーシュカについていくことを誓った身。何があっても命に変えてもリリーシュカを守ると決めたんだ!」
「わかりました。ありがとうございます。男に二言は無いですね?」
「勿論だとも!」
何でここでスイッチが入っだのかはわかりませんが、皆の前で言質も取れた事です。カードを切る時が来たら役にたってもらいましょう。
「リリーシュカちゃん、ありがと。さ、次の所目指そっか」
「いえ、せっかく来たのでもう少しゆっくりしてください。こども達とも触れ合ってください」
「・・・ありがと」
アミュールさんは、そのまま庭に出て行きました。
「リリーシュカさん。俺もアミュールもリリーシュカさんを信頼してる。ありがとう」
「いっ、いえ!恐縮でござります!!」
わー、リジットさんが自分から会話文を話すのが珍しいのでビックリしました。
皆で外に出て、こども達と一緒に思い切り遊びました。なんか、私が健康なこどもだったら、こんな風に友達と遊べたんですよね、って思ったらこの施設を絶対に守らなくてはいけないと思いました。私はチョロいのです。すぐ、こうやって色々な事にちょっかいを出すのです。
でも、私が、このミラクルポジティブな私が住む国なんですから、楽しくハッピーにしなくちゃです!!
「ねぇ、リリーシュカちゃん。本当はさ、ソフィアス様が王子様だって聞いたから同行を持ちかけたんだ。その後にリリーシュカちゃんが光の子だって聞いて、利用出来るかもって思った。私、サイテーだよね。ごめん・・・」
アミュールさんがいち早く休憩をしている私の所に来て落ち込んでいます。あー、そういう訳でしたか。まぁ、Sランク冒険者がすんなり同行するとか、そんなにうまい話があるわけ無いですよね。
「利用出来るものは利用し、目的の為には手段を選ばない・・・。それで、いいじゃないですか。別に誰かを傷付けたりしてないんですから、気にする事はないですよ。皆で旅して皆でバカやって、そうやってたら細かい事はどうでも良くなりますよ」
「リリーシュカちゃん・・・。あの、私、リリーシュカちゃんが人妻でもいいよ・・・?えへ♪」
「ふぁっ!?」
「リリーシュカちゃん、漢らしくて好き(ハァト)性別的には何の問題も無いよね」
「あ、あのっ!?」
アミュールさんがキュッと手を繋いできました。いやいや、これってどうよ?見た感じは100%百合ですがな!!
向こうからこども達と遊んでいたソフィアス様が、ずんずんとこちらへ向かってきます!ひぃっ!
「アミュールさん!リリーシュカは私のなのだ!離すのだ!」
「きゃっ!痛ぁい!!乱暴にしないでよ!」
「わっ!ごめんなのだ!わぁ!泣くのは卑怯なのだ!女の子だと勘違いするのだー!!」
ふぅぅ。私をほっぽってやいのやいのとヒートアップしていく二人を見守るしかない私でした。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
少しいつもとテイストの違う暗めの話が続きましたが、お付き合いくださいましてありがとうございます。