過去の傷
森の動物達に見送られて、ファルシを連れてヘーナの森を後にした私達一行はアミュールさんが寄りたがっていたスシクィーネを目指したのでした。
「スシクィーネは大体ここから一時間くらいで着くよ」
「馬車凄いな!喋るキノコ、大きな鳥!凄い凄い!」
ファルシは初めて森の外に出るので興奮しています。
「リリーシュカちゃん。これから行くスシクィーネには孤児院があるんだ」
うん。そんな気はしていました。ファルシの様なこどもが沢山いる所。
「私とリジットはそこの孤児院に居たんだよ」
「え?」
「私が7つ、リジットが4つの時に、孤児院に預けられたんだ。物心着いていたから両親の事は私も・・・リジットもおぼろげながらに覚えてる」
孤児院・・・。両親が不慮の事故とかで亡くなってしまって身寄りが無いとかならわかりますが・・・。親の都合で預けられる場合の方が圧倒的に多いのでしょう。アミュールさんとリジットさんのご両親もきっと後者・・・。
「知ってる?孤児院はさ、ボランティアなんだよ。国から補助が出ないの。何度も申請したけど“こどもは実の親か血縁の元に”っていう教会の教えがあるから取り合ってくれなかった」
ちょっと・・・。光の子とかを優遇している場合では無いじゃないですか・・・。何を考えているんだあのおっさんは・・・。国民の気持ちを無視して何が王族ですか!
「それなのに、孤児院に連れられてくる子は後を絶たない。孤児院を作った方・・・マザーは身体が弱く、こどもが出来なかったから沢山のこどもに囲まれて幸せだと常に言っていた。けど、私が11歳の時に病気で死んでしまった。私は孤児院に寄付をする為にまだ8つのリジットを連れて冒険者になった。そして出来るだけ早くSランクになって稼げる様になりたい。その一心でひたすらクエストをこなし続けた。信じていた大人にお金を預けたら持ち逃げされたりもしたけど・・・。でもリジットが居たから頑張ってこれた」
アミュールさんとリジットさんは私みたいに軽い気持ちで冒険者になった訳ではないのですね。自分が恥ずかしくなりました。冒険者になって無双する・・・。出来ないとわかると拗ねていじけて。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ちょっと!リリー!ビックリするじゃない!」
「すみません、ちょっと過去ののほほんとした自分を呪い殺しているとこです」
「こわっっ!!」
「後、ソフィアス様もこれから・・・」
「やっ!やめなさいよ!坊やだってそういう国に都合の悪い事は教えられてこなかったんでしょ!」
「私・・・。今始めて知ったのだ。知ろうとしなかった事も罪なのだ。リリーシュカ!私も一緒に殺してくれなのだ!!」
「がってんです!!」
「やめろーーー!!」
ファルシが叫びました。
「殺すとか言うなっ!!死んだら悲しいんだぞ!!」
「ごめん・・・なさい。そうですよね」
大人気なかったです。母親を亡くしたファルシの前で。
私は自分が死んだ時の事を考えていました。魂が抜けて、アニーが迎えに来て・・・荷車乗って天界ランドでキャラメイク、おまけに最後はジェットコースター・・・あれ?悲しくないかも・・・?あれ?特殊な扱いを受けているのでマヒしてるのかもしれません。
そう思ったらなんだか、この世界が凄くいびつに感じてきました。転生者には優しく、元々住んでいる人には厳しいような。教会の教え・・・って誰の教えです?ゼウス様?そしておっさんとアネッサ様の天界の繋がり等・・・私とソフィアス様にはまだまだ知らなくてはならない事がありそうですね。
とりあえず今は虹の子になる為、目先の事をひとつひとつクリアしていかなくてはですね!
【~スシクィーネ~】
スシクィーネは観光色が薄く、住宅街が多いイメージです。その一角に孤児院がありました。“マリーメリーの我が家”という名前みたいです。
「アミュール、リジット!お帰りなさい!」
「アミュール!リジット!」
「ただいま。お友達を連れてきたよ〜!ファルシって言うんだよ〜。仲良くしてねぇ〜」
「「「「「はーーーーい」」」」」
建物の中や、庭からこども達が沢山出て来ました。皆アミュールさんとリジットさんを慕っているようです。
「さ、ファルシ。皆と遊んでおいで」
「う、うん!」
ファルシは早速皆と一緒に遊具の所に行きました。
「ロバギルと小鳥ちゃんも遊んでおいで」
「なっ!アッシはコドモじゃないッスよ!」
「わぁ、大きなキノコ!カッコイイー!!遊んで遊んでー」
「チッ・・・しょ、しょうがないッスね」
小さな女の子にカッコイイと言われて満更でもなさそうですね。
「ここの子達は皆良い子達ですね」
「あはは。やんちゃ盛りだから暴れる暴れる」
建物の中から一人の女性が出て来ました。
「あら、アミュールとリジット!お帰りなさい。半年ぶりねぇ」
「ただいま、メリー姉ちゃん」
「・・・ただいま」
「こちらの方々は?」
「第一王子のソフィアス様と奥様のリリーシュカさん、ジェシーさん。今一緒に旅してるんだ!」
「お、王子様と旅ってあなた!!こ、こんな何も無いみすぼらしい所ですがどうぞ、中へ・・・」
「メリー姉ちゃんはマザーが亡くなった後を継いでくれているんだ」
私達は建物の中の一室に案内され、メリーさんとお話する事になりました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました┏○ ペコリ