光の子
小鳥ちゃんのお母さん!死んじゃダメです!!
「ピ・・・ピャァ・・・」
か細い鳴き声です。頑張って!!
『リリーシュカ、回復じゃなくて治療の魔法じゃないか?』
「え?治療の魔法ですか?呪文なんてわからないです!キュア、とは違いますよね?」
『ヒールとキュアを合わせた感じの魔法だよ。病気で瀕死を治療するには代償が必要なんだ。それを使えば君のMPはゼロになる』
「構いません!!」
『わかった。じゃぁ、目を閉じて感じて。光の流れを。そして自分の中に沢山溜めるイメージ・・・』
私は、目を瞑り光の流れを必死に探す。周りにすぅーっと光が流れているのが見えます。この光を私の中に取り込む・・・。
『そして、気持ちを込めて発動するんだ』
私の魔力が全部無くなってもいい。だから、お願い。小鳥ちゃんのお母さんを助けて。
「光の癒やしっ!!!ヒーリングシャワー!!」
私の中から光が飛び出し、小鳥ちゃんのお母さんに降り注ぎました。
あぁ、本当ですね。一瞬にしてもう、魔力がカラッカラです。
「ピャァ!」
小鳥ちゃんのお母さんが、ゆっくりと起き上がりました。
「小鳥ちゃんの、お母さん!」
小鳥ちゃんのお父さんが小鳥ちゃんのお母さんに寄り添うと、2羽は金色に光りだしました。わっ!眩しいっ!
“ありがとう、心優しき光の子”
え?え?喋った!
“我が子は小鳥ちゃん・・・という名なのですね”
「は、はい。その名前が気に入ったみたいなので。あ、そうだ。これを・・・」
私は、小鳥ちゃんの両親に小鳥ちゃんの羽根を見せました。
「小鳥ちゃんは私と主人が責任を持って育てています・・・いますが・・・ご両親から授けてもらった大切な、大切な小鳥ちゃんなのに、眠ったまま起きなくなってしまいましたぁぁぁ。ごめんなさいぃぃ」
“泣かないでください。光の子。メルルーニィの雛は両親が揃っていないと成長しない場合があるのです。私が病に伏せり、生を終えようとしていた為小鳥ちゃんに影響が出てしまったのだと思います”
あれは、仮の両親の事では無く、本当のご両親の事だったんですね。
「じゃ、じゃぁ、もしかしたら今頃目が覚めてるかもですか?」
その時ソフィアス様から通信が入りました。
【小鳥ちゃんが目覚めたのだ!餌も沢山食べて元気なのだ。だから、もう心配ないのだ。気をつけて帰ってくるのだよ】
小鳥ちゃん!良かった!本当に良かったです!
“もう、心配要らない様ですね。どうかこれからも我が子を宜しくお願いします”
「あのっ、時々でいいので小鳥ちゃんに会いに来てくれませんか?」
小鳥ちゃんのご両親はお互いに顔を見合わせ、
“あぁ。我が子はとてもいいマスターの元に導かれた。光の子の迷惑では無ければ是非に”
と言ってくれました。
「大切な小鳥ちゃんのご両親です!迷惑なんてとんでもないです」
“では、早速向かいましょう。光の子、私の背中に乗ってください。送ります”
「いいんですか?ありがとうございます。魔力がスッカラカンなので、助かります」
「お、お師匠様!自分も、自分も連れて行ってください!」
「えっ?ギルバートもですか?」
「はい!自分もまたロバートさんの下で暮らし・・・」
早く小鳥ちゃんに会いたいのでギルバートを無理やりアイテムボックスに押し込み、小鳥ちゃんのお父さんの背中に乗せてもらいました。善は急げです。
小鳥ちゃんのご両親と共に大空をひとっ飛びです。
上空から見るセルドジルワールは何とも乙な感じです。
お城の入り口に降りると、先程通信を入れておいたので、ソフィアス様と小鳥ちゃんとロバートが待っていてくれました。
「お帰り、リリーシュカ!」
「ただいまですっ」
私は、両手を広げているソフィアス様の脇をすり抜けて小鳥ちゃんを思い切り抱きしめました。ソフィアス様も負けずに、小鳥ちゃんを抱き締めている私を抱きしめました。
「ピャァ♪ピャァ♪」
「あのね、小鳥ちゃん。本当のお父さんとお母さんが会いに来てくれたんですよ!」
「ピャァ?ピャァァァァァッ!!」
小鳥ちゃんはご両親の元へと走って行きました。親子水入らず。やっぱり本当のご両親の方がいいに決まってますよね。
私はその間、ギルバートをアイテムボックスから出しました。
「だから、お師匠様っ!話の途中じゃないですか!?ってうわぁぁぁぁ!ロバートさん!!」
「おぅ!ギルバート、久し振りッス。お前もアニキの子分になったっスか?」
ギルバートはロバートを見るなり地面とオデコのキッスです。そしてガタガタと震えています。せっかくのいいムードがぶち壊しになるからやめろぉっ!!
「ピャァ!ピャァ!ピャァ!」
小鳥ちゃんは何かをご両親に伝えると私達の方へ戻ってきました。私とソフィアス様にスリスリして甘えてきます。
「ロバート?小鳥ちゃんは何て?」
「お父さん、お母さん。パパとママに会わせてくれてありがとうって言ってたッス」
「こ、小鳥ちゃん!うぅ、嬉しいですっ」
“光の子よ。我が子は既にお二方の事も親と認識しています。我が子が成鳥になるまであと僅か。成鳥になれば私達に何があっても影響は出ないのでそれまでは時々こうして会わせてくれないでしょうか?”
「勿論ですよ!成鳥になるまでとか言わずに、沢山会いに来てください!」
“ありがとう、光の子。これを。この笛を吹けば私達はいつでも貴女の元へと駆け付けましょう。では、貴女達と小鳥ちゃんに幸せがあらん事を”
小鳥ちゃんのご両親は、私に銀色の笛をくださいました。そしてまたロックロック山脈の方へと羽ばたいていきました。
あ、安心したらなんだか眠くなってきました・・・。私は膝から崩れ落ち、地面に倒れそうになったところをソフィアス様に抱きとめられました。
「リッ!リリーシュカ!?」
「ピャァ!」
「アニキッ!小鳥ちゃんはママ大丈夫?って言ってるッスー!」
「お師匠様ーーー!?」
「フフッ。もう夢の中なのだ。リリーシュカ、お疲れ様。よく頑張ったのだ。さぁて、私もリリーシュカに添い寝するのだ。おいで、小鳥ちゃん」
「ピャァッ♪」
「アニキッ!小鳥ちゃんは眠くないって言ってるッス!そりゃあさっきまで寝てたッスもんね!」
「お師匠様ーーー!おやすみなさいーーー!」
皆の声がおぼろげに聞こえます。今はただ、この幸せな気持ちのまま寝かせてください。それでは皆さんおやすみなさい。
区切りとしまして、今回で第2部完結となります。明日からは3部が始まりますので引き続き宜しくお願い致します。
今回もお読みくださいまして、本当にありがとうございました!!