山の上のメルルーニィ
なんとか、その日の夜の内にヴェルツィアの森まで来ました。
「シャイニー、なんか感じますか・・・?」
『うーん、やっぱりこの森にはもう居ないみたいだよ』
「そうですか・・・。じゃぁ、この近辺の森をガッツリ探索しますよ!」
『地図とか無くて大丈夫なの?メルルーニィは結構遠くまで飛んでいる可能性もあるよ』
「そうですよねぇ・・・」
私は小鳥ちゃんの羽根を月にかざしてみました。
『そうだ!リリーシュカ!ホーリーライトの上級者向けの使い方を教えてあげるよ』
「え?上級者向けとかあるんですか?」
『ホーリーライトサーチって魔法なんだけど・・・』
「あ、待ってください。何か名前だけでどんなのかわかりました」
『そう?』
「大変わかりやすい名前でいいと思います。では、早速・・・ホーリーライトサーチ!」
私は小鳥ちゃんの羽根にホーリーライトサーチをかけました。小鳥ちゃんの羽根は青白く光り、はるか向こうの山まで一筋の光を放ちました。
「あそこは・・・」
『ロックロック山脈だね』
「あそこに、小鳥ちゃんの家族が居るかもしれないんですね!行きますよ」
『えぇ、寝なくて大丈夫?』
「寝てなど居られないです!小鳥ちゃんが待ってるんですから!」
私はひたすら走りました。走って走ってブーツがボロボロになりました。やがて夜明けと共に大きな山脈に着きました。その山は、山道など見当たらず、険しい山を登っていかなくてはならないようでした。
ロッククライミング・・・。自分の体重すら支える事の出来ない自分には山登りなんて到底無理そうです。
でも、この山に小鳥ちゃんのご両親が居るかもしれない。
「すぅーーーーっ。この子のおかあさーーーーん!!おとうさーーーーん!!!私の存在に気付いているなら出てきてくださーーーーい!!」
私は小鳥ちゃんの羽根を掲げ、小鳥ちゃんのご両親を呼びました。
シィィィィィィィィィィィン
「居ないのですかね」
『いや、確かにこの山に気配を感じるよ』
「居るなら、お願い・・・っ。出てきてください!小鳥ちゃんが・・・小鳥ちゃんが・・・っ」
すると、すぐ近くでガサガサと何かが動く音がしました。ま、まさか!出てきてくれ・・・
「っるせーな!なんだよ人間風情がこんなヘンピなとこまで来て騒いで・・・」
「ぎゃぁ!!こんなとこにもタマタン!!」
タマタンがあらわれた!!国が違っても、山にはタマタンありきなんですかね。ていうか、私の、このタマタンの遭遇率。
私なんか変な匂いとかしてるんですかね・・・?
「ったくおちおちねてられやしねぇ・・・」
「あの!お聞きしたい事があるのですが!!!メルルーニィの夫婦をご存知ないですか?」
「あ?あー・・・あれか?食った」
「!!!!!!!!」
「あははっ。嘘うそ。ビックリした!?」
誰か・・・誰かこいつを私の代わりにぶん殴ってください。
「くっ・・・。ロバートを連れてくればよかったです。あいつなら多分アイテムボックスに入りそうな気がします」
「何っ!?ロバートさんを知ってるのか!?」
「知っているも何も私の子分ですよ」
そう聞くや否や、タマタンはズザァァァァッっと私に土下座をしました。
「えっ?ちょっ?なに?」
「ロバートさんのお師匠様とは知らずに無礼な口を利きましたぁぁ!!すんませんでしたぁぁぁ!!!」
「は?い、いや。何もしないから震えないでください・・・。モザイクかけますよ・・・?」
「ガタガタガタガタ・・・」
「あの、多分ですが、あなたも動物の声スキルを持ってますよね?すみませんが協力してもらえませんか?」
「は、はいっ!自分で良ければ!!メルルーニィですね!昨夜見た時、メスの方が病気みたいで死にそうでした!」
「それは大変です!!すぐに行きたいですけど、この山じゃ・・・」
「自分にお任せください!ぴ・・ぴゅ・・・プピィーーーッ!」
タマタンはロクに吹けもしない口笛を、何故にそんなにも吹きたがるのでしょう。後なんでこいつら本当に最初は腹立つほどにガラが悪いんですかね。
このタマタンは、名をギルバートといい、以前ロバートのパシリだったみたいです。メイドインパルパル山。あの山呪われてんじゃないでしょうか。いや、しかし、うん。タマタンにも縦社会があるんだなって。これ新発見ですよね?図鑑に載るかなぁ。ふふ。でもあんま嬉しくないなぁ。
暫くすると、大きな鷹が2羽飛んで来ました。
「お師匠様、こいつらがメルルーニィの所に連れて行ってくれるそうです」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「でも定員は1名なんですよね・・・。自分が行かないと通訳が出来るやつが・・・」
「大丈夫です!多分!えいっ!!」
「おししょ・・・」
ギルバートは私のアイテムボックスの食べ物カテゴリーに入りました。えっ!やっぱり食べ物なの!?
私は2匹の鷹の足に紐をくくり、ブランコの様にしました。鷹は空へと大きく羽ばたき、見る見るうちに頂上近くまで上がっていきました。はるかかなたの海の向こうから朝日が顔を出していてとても美しい景色でした。
頂上付近に着きました所、確かにメルルーニィのメスが苦しそうに横たわっていました。その傍らにオスが寄り添っていました。こんな状態じゃいくら私が呼んだ所でこの場を離れるわけにはいきませんよね。
寿命ではなく、病気だというのなら、なんとかして救いたいです。
私はアイテムボックスからギルバートを出しました。
「お師匠様酷いですよ!話の途中でしたのに!」
怒っているポイントがアイテムボックスに押し込んだ事ではなく、話の途中だった事というのがなんとも。
「ダメもとで、やるだけやってみます!ハイ・ヒール!!どうか、どうか小鳥ちゃんのお母さんの病気が治ります様に!」
小鳥ちゃんのお母さん、死んじゃダメです!お願いっ!治って!!私はありったけの想いを込めて祈った。
今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)