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幻鳥メルルーニィ

小鳥ちゃんは静かに眠っているようですが、ピクリとも動きません。小鳥ちゃんの温もりと、呼吸の為にかすかに上下する身体だけがかろうじて小鳥ちゃんが生きているという事を証明しているだけです。

揺すっても、声をかけても起きません。


「小鳥ちゃー・・・ん。どうしちゃったんです?せめて、返事をしてください・・・」

「リリーシュカ・・・。今母上に調べてもらっているが、小鳥ちゃんは珍しい鳥の為に参考文献が少ないらしいのだ」

「そう、ですか・・・」


私はそっと小鳥ちゃんの頭を撫でながらソフィアス様の言葉をぼーっっとした頭で聞いていた。

どうして、どうしてこんな事になってしまったのでしょうか。今日、少しだけならと小鳥ちゃんを置いて出かけてしまったからでしょうか・・・。あの時の蛇のモンスターを食べちゃったから?色んな疑問が浮かんでは消え、何が正解なのか検討もつきません。


「小鳥ちゃん、目を、開けてください・・・。そしてまた元気良く鳴いてください・・・」

「リリーシュカ、少し落ち着くのだ。母上も小鳥ちゃんが苦しそうじゃないから、すぐにどうにかなる訳では無いと言っていたのだ」

「ソフィアス様・・・。小鳥ちゃんがこのまま目を覚まさなかったらどうしましょうっ・・・!!」


私はソフィアス様にしがみついて抱え込んでいた不安を口にしました。ソフィアス様は私を優しく抱き、背中をポンポンした後、私の頭を撫でながら


「リリーシュカ、小鳥ちゃんは私とリリーシュカのこどもなのだ!強い子なのだ!だから大丈夫なのだ!私達が信じてあげなかったらどうするのだ?」

「・・・ソフィアス様っ」

「きっと大丈夫なのだ。小鳥ちゃんが目覚めたときにママが泣いていたら不安になるのだ」

「はい・・・。そうですね!」


あぁ、私の心はいつの間にこんなにも弱くなってしまったのだろうか。今までだって、色んな事があったけど、全部なんとかなってきたではないか。人の温かさを知ったから?ソフィアス様を好きになったから?

違う。全部私の甘えだ。弱くなった事は自分のせいだという事以外に理由なんてある訳が無い。他のせいにして良い訳が無い。

ひたすらポジティブなのが私の強さではなかったか?メソメソしていたってどうにもならないのだ。誰かが手を差し伸べてくれるのをただ、待つの?・・・そんなのは私の柄じゃない!


「小鳥ちゃん、待っていてください!私ちょっとひとっ走り行ってきます!」

「り、リリーシュカ!?どこに行くのだ!?」

「ちょっと小鳥ちゃんのご両親を探しに行ってきます」

「一人では危ないのだっ!どこに居るかもわからないのに」

「一人じゃないです。シャイニーが居ます。それに誰かと一緒だと私全速力出来ないじゃないですか」

「それは・・・。・・・わかったのだ。私はリリーシュカを信じる。でも決して無理はしないでほしいのだ。必ず無事に帰ってきてほしいのだ」

「はい・・・。私は絶対にソフィアス様の所に帰ってきますから!小鳥ちゃん、ちょっとごめんね!」


私は小鳥ちゃんの羽根を1本引っこ抜いてアイテムボックスに入れました。


「気をつけるのだ」

「はい、行ってきます。ちゅっ」


私はソフィアス様にキスをすると、急いで城を後にしました。


・・・まず目指すはヴェルツィアの森です。


「シャイニー、対話出来ますか?」


私は指輪に向かって問いかけます。


『ふわぁぁぁ。何々?どうしたの?リリーシュカ』


良かった。会話が出来る。つか、のんきに眠ってたっぽい。


「小鳥ちゃんが眠ったまま起きないのです。そこで私は手がかりを調べる為に小鳥ちゃんの両親を探しに出ているのですが・・・」

『あぁ、あの大きな雛だねぇ』

「本に載っていた“滅多に人の目につくところではタマゴを産まないが、聖なる光を持つ者が近くに居る場合は、その近くに産む場合もある。その場合は親鳥はタマゴを温めることなくタマゴを産んだらすぐに他の地へと去ってしまう”ってのがずっと引っかかっているんです」

『メルルーニィは光の子の使役獣だからねぇ。ここ何十年も光の子はこの世界に産まれてこなかった。その間、メルルーニィはただ種を絶やさぬ様繁殖を続けてきたんだ』

「使役獣・・・?」

『そうだよ。だからリリーシュカの存在に気付いた両親がタマゴをリリーシュカの目の着く所に産み、置いていったんだよ。因みにメルルーニィが生涯産めるタマゴは1つだけ』

「そんな!じゃぁ、小鳥ちゃんのご両親は?」

『終の棲家を探しに行ったんじゃないかな。もう使命は果たしたからね』


メルルーニィはなんて儚い鳥なの!?光の子にタマゴを託して去っていき、ただ死を待つなんて・・・。

じゃぁ、尚更私は小鳥ちゃんのご両親に会わなくてはなりません。光の子の為に生命(いのち)を産み、託し、人知れず消えていく鳥・・・。これは私のエゴかもしれませんが、小鳥ちゃんからむしってきた羽根をご両親に渡したい。わが子を感じて欲しい。そんな感情が私の心を奮い立たせていたのです。

今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)

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