結婚式当日
結婚式当日ー
昨日は夜間にあんな騒ぎがあったのですが、まぁ、寝れた方です。
小鳥ちゃんも朝から絶好調ですし、ソフィアス様は・・・まるで昨日の大惨事なんて無かったみたいにはしゃいでいます。
「それじゃぁ、ソフィアス様。また式の時に」
「あ、あぁ。リリーシュカの花嫁衣装楽しみにしてるのだ」
「ソフィアス様!今日一日は出来るソフィアス様モードでお願いします」
「わかったのだ!頑張るのだ!!」
なんでしょうね。二重人格なのでしょうか?ずっとモード入れっぱなしには出来ないのでしょうか。なんかスイッチで切り替えてるみたいですけど。
さて、ばぁやさんの所に行きましょうか。モリーがそこに軽くつまめる朝食を持ってきてくれる事になっているのでソフィアス様とは式本番までは会いません。この国では、新郎が花嫁衣装を式の前に見るのは言語道断なんだそうです。
よく、ドラマで見る様な新郎が新婦の控室に来て「綺麗だよ・・・」とかいうほぼお約束なシチュエーションはこの国ではありえないんですね。
ばぁやさんの部屋に行くと、数名のメイド達がスタンバイしており、マッサージやらメイクやらエステみたいに(行ったことないですけど)色々してもらいました。
おぉっ!肌がうるうるつやつやピカピカになりましたよ!
ソフィアス様というより、アネッサ様から頂いたこの古くからある指輪と、お兄さんの奥様からお借りした白い薔薇のコサージュ、右の太ももには青いリボンが付いたガーター、ソフィアス様がこの日の為にと私に用意してくださいました白い小さな花がついたひと粒パールのイヤリングを全て身につけ、そして靴の中に銀貨を一枚忍ばせます。
セルドジルワールには、サムシングフォーという、欧米の文化と酷似した文化があるみたいです。
「まぁまぁまぁ!王女様!大変お似合いでございます。今日という良き日、本当におめでとうございます」
「ありがとうございます。ばぁや。馬子にも衣装ってこの事ですよね」
「そんな事は無いです!リリーシュカ様は元が良ろしいので、何を着てもお似合いになりますし、今日のこのお姿はきっと国民の方々も溜め息を漏らされるでしょう!それに、昨夜はソフィアス殿下のご寵愛を受けておられましたし・・・」
「ちょー!!ストーップストーップ。オーケーオーケー。モリー?ちょっと黙ってくれませんか?」
「は、すみません!つい嬉しくて感極まって色々な感情が・・・」
「わかってますよ、ありがとうございます」
あっぶね。やっぱり何か誤解してますね。無いこと無いこと言いふらされそうです。今度プライバシーとかコンプライアンスとかじっくりお話しないと駄目ですかね・・・。褒めてくれるのは嬉しいのですが、この外見はおじぃさん作ですからねぇ。
「リリーシュカ王女、そろそろお時間でございます」
ラドルフさんが呼びに来ました。王女って呼ばれ方はなんかムズムズしますね。自分じゃないみたいです。
「では、みなさん行って参ります!式の後の披露パーティーも宜しくお願いしますね」
「「「はい。行ってらっしゃいませ」」」
ラドルフさんは私のお父さん役です。ラドルフさんと一緒にソフィアス様の所まで歩いて入場します。
うわぁ~!!なんか緊張してきましたよ。これまでなんか人事みたいに思ってたんですが、いざ教会内の礼拝堂のドアを前にしたら足が竦んでしまいました。わわわ・・・。どうしようどうしよう・・・。
「リリーシュカ様、大丈夫ですよ。ゆっくり行きましょう。このラドルフがしっかりとソフィアス殿下の元へとお連れしますのでご安心を」
「ラドルフさん・・・。はい!宜しくお願いします」
ラドルフさんの優しい笑顔でスッと肩の力が抜け、足の震えも収まりました。
中からパイプオルガンの音色が聞こえてきました。
「それでは行きましょう」
ガチャッ
礼拝堂はさすがにお城の教会ともあって、本当に広いです。両脇には親族と各国の重鎮などが参列しています。私の親族としてジェシーやおじぃさん、お兄さん夫婦が参列してくれています。
そして、中央には私の愛しい人がこちらを向いて私を待っています。・・・そこまで大分距離がありますけどね。
私はラドルフさんの腕につかまり、一歩一歩ゆっくりと進みます。わぁぁぁぁぁ!って言って走って行って早く終わりにしたい所ですけど。
ソフィアス様まで後3m、・・・2m、・・・1m。なんだか胸に込み上げるものがあります。やばいです。泣きそうです。だって・・・。
ソフィアス様の笑顔がとても優しくて素敵で、格好良くて、いつものヘタレ感が全然無くて。ソフィアス様の出来る王子様モードは本当にズルいです。
ラドルフさんが私をソフィアス様へとそっとエスコートしてくださり、私の腕はラドルフさんからソフィアス様の腕につかまりました。
一瞬、ソフィアス様と目を合わせましたが泣きそうになるので私はずっと俯いていました。
神父様の進行で誓いの言葉を交わし、指輪の交換も経て、誓いのキスです。・・・頼むから鼻血は出さないでよぉぉ?
ソフィアス様は私のヴェールを上げ、私のおでこ、右のほっぺ、左のほっぺにキスをして、最後に唇にキスをしました。えっ?人前でこんなにキスするの!?唇に1回だけじゃないの?恥ずかしくて死にそう・・・!!
「宇宙万物の創造主である神よ、あなたが造りたもうた人の子が本日ここに誓いを交わして夫婦となりました。この二人に愛と祝福をお注ぎください。皆様ソフィアス・グリューンヴェルデ、リリーシュカ・グリューンヴェルデの結婚の誓約によって結ばれた二人に神からの祝福が注がれる様お祈りください。」
数十秒の祈りの後に、わぁぁぁぁぁ!おめでとうございます、おめでとう、おめでとうと皆さんからの温かいお祝いの言葉のシャワーが私達に降り注ぎました。
あぁ、駄目だ。もう無理、無理です。
私の両目から熱い涙がボロボロと零れてきてしまいました。
誰が想像できたでしょうか。
異世界に転生して、こんなにも沢山の人達に囲まれて幸せな結婚式が挙げられると。
誰が想像できたでしょうか。
ソフィアス様が優しく背中に手を添えてくださり、その手の温もりにまた、心がきゅぅっとなって涙が出てきて止まらなくなってしまって大変困ってしまいました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました!(^^)