リリーシュカの結婚式前夜
ラディプールに戻ってからが大変でした。私達の結婚式の準備です。
ばぁやさんとの衣装合わせや、各国の重鎮達へのご挨拶&招待状書き等・・・まぁ、面倒臭そうな事は全てソフィアス様にやってもらったんですけどね。
そして、それらを経て結婚式はいよいよ明日になります。結婚前夜です。
私はというと、王族の一員になったのでお城に住まう事になり、ソフィアス様のお部屋で一緒に暮らしています。因みに小鳥ちゃんの寝藁も完備です。小鳥ちゃんはちょっと気を抜くと何処かで虫等を食べてすぐに生臭くなるので、細心の注意を払って育てています。お風呂を嫌がらない子なのでその点は助かってはいますけど。因みにロバートは城の馬小屋に好んで住んでいます。綺麗な部屋より居心地が良いそうです。まぁ、お城(の馬小屋)住みのキノコってだけでも他のキノコとは違うんでしょうけど。
ジェシーにも城の一室へ住みませんか?と提案したのですが、過ぎたるは及ばざるが如しよ、と言って今までと同じきままな宿暮らしをしています。端々に年の功を感じます。実年齢は17歳なのに。
私もソフィアス様と同じ部屋で一緒に暮らしているとは言っても私達は清らかな関係のままですけどね。まだまだ私達は冒険をしなければなりませんので、そういった行為は不要です。・・・というか、相手はキスでこどもが出来ると本気で思っているんで、まずその誤解を解くことから始めないといけない訳ですがこれ、私が教えなくてはいけないのですかね?いや、もういっその事別に教えなくてもいっかなーぐらいの心境です。
まぁ、夫婦の夜の事情はさておき。前世のパパとママ。キリエは明日結婚します。入籍済みだけど。もし、前世のパパとママに会えるとして、こちらが結婚相手ですってソフィアス様を紹介した時、二人とも何て言うかな?パパはトイレとかに立てこもって暫く出てこなそう(笑)出てきたら出てきたで、馬の骨発言もしそう。でもソフィアス様の出自を知るとやり過ぎな位へりくだってヘコヘコしちゃうんだろうなぁ。ヘタレ加減はソフィアス様とどっこいかもしれないなぁ。・・・あれ?父親に似た人と結婚する人が多い・・・ってジンクスあったよね・・・ゴクリ。
「ソフィアス様ー、明日も早いしもう寝ましょう」
私はさっさとベッドに潜り、寝の体勢に入ります。
「わかったのだー!・・・リリーシュカ。あの、その・・・」
「何でしょう?」
ソフィアス様がベットに入ってきてモジモジしています。あぁ、子作りオーケーかどうかを聞きたいのですね。
「あの。き、キスしてもいい?」
「いいですよ」
「えと、手を繋いで抱き合って、キ、キス・・・チュッ」
ソフィアス様が上から私を優しく抱きしめ、手を握ってキスをしてくださいました。ソフィアス様とのキスは何回目でしょうか?まだ、キスだけでも緊張します。ソフィアス様も緊張しているのか、ソフィアス様の私の手を握る手が震えています。ていうか、尋常じゃないくらい震えています。身体もガクガク震えています。ちょ、大丈・・・夫?
ポタッポタッ・・・ポタタタタッ
え?何?何!?何かが顔に垂れて来ましたよ。
「ソフィアス様?えっ!?うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!鼻血鼻血!後なんで泣いてるんですかっ?えぇぇえー?」
ひぃぃ!鼻血やら涙やら顔に降ってきます!!旦那の鼻血が顔にかかるとかどんなプレイだよ!結婚式前夜までホラーかよ!!ってツッコミを入れたいくらいです。もっとさぁ、ムードとかムードとかムードとか!!少しくらいそういうのは無いんでしょうか。いや、今はそんな事言ってる場合じゃないですね。
「ゴメンなのだ!嬉しいのと興奮したのとリリーシュカの事が好きすぎて好きすぎて色々な感情が相まって感極まって・・・ぐふぉっ」
「あぁ、はいはい!喋ると鼻血が変なとこに入りますから!!それより早くどいてください!私の顔とシーツがえらい事になったじゃないですか!私モリーを呼んできますから、鼻血はもうシーツで拭いちゃってください。その後ちゃんとバスルームで顔を洗ってくださいね!」
「うぅ・・・グスッ」
泣きたいのはこっちですよ。間違ってもこんなヘタレを父親にしてはいけない気がします。あぁ、でもキリエの父親だってあんなんでも、父親だったし、意外となんとかなるのかも・・・いやいや、でも・・・。心の葛藤は続きます。私はバスルームで顔を洗い、モリーの部屋に向かいました。
その後、シーツの鼻血跡と真っ白に燃え尽きた感じで椅子に座っているソフィアス様を見て何かを誤解したモリーに生温かい目で見られる等の二次災害がありましたが、速やかにシーツの交換をしてもらい、ようやく睡眠にありつけます。
明日からは別々のベッドで寝よう。そんな事を思いながら私は眠りにつきました。
その頃、王モルゾヴァの部屋ではモルゾヴァと妻のアネッサがバルコニーで王都を見下ろしながら、ワインを片手に二人きりのささやかな祝宴を開いていた。
「モルゾー。あなたの思い描いたシナリオは順調か?」
「・・・アネッサよ。儂のこの世界はいい世界だと思うか?」
「質問を質問で返す。本当にあなたは掴みどころの無い人だ。そうだな・・・。良いかどうかは私らが決めるんじゃなくて、実際に住んでる民が決めるべきだろう。だが、少なくとも私はこの世界を「面白い世界」だと思うよ」
「そうか・・・。儂もこの世界の民達がそれぞれ必死に生き、人生を謳歌しているのを見るのは楽しい。・・・後はアニーがどう動くかだが。アニーの行動によってはこの世界は・・・」
「モルゾー、息子の晴れ舞台が明日に控えているのに、そんな湿った話は野暮だよ」
「ふっ。そうじゃな。つい色々と考えすぎてしまったわい」
アネッサは、そうモルゾヴァに言ったはいいが、自身もまた、息子とその妻がこれから立ち向かわなくてはならない試練の事に思いを馳せていた。
今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)