顛末報告
私が放った光は強大な光となり、ヴェルツィア全土に降り注がれました。
瘴気で満ちていた森はいつしか小鳥がさえずり、動物や虫達も集まってきて、来た時よりも賑やかな穏やかな場所になりました。
「あ、ちょっと待っててくださいね」
私は廃神殿に向かって走り出しました。
「リリーシュカ?どうしたのだ?」
アニーが出てきた部屋のドアを開けると、神殿は意外にも綺麗でした。
祀ってあるゼウス様の御神体も、劣化により一部欠けてはいますけど綺麗に磨かれていました。
アニー・・・。今でもゼウス様を大切に思っているのですね。
だとしたら、何故こんな事に・・・。
何はともあれ、もう脅威は去りました。取り急ぎ、リディロン王に報告して帰りましょう。そして、この廃神殿をもう一度、綺麗に復旧してもらいましょう。もう、2度と忘れられない様に。
「さ、行きましょう」
「ピャア♪」
「ご馳走様でしたって言ってるッス」
「あ、あぁー・・・。小鳥ちゃん暫く餌要らないですね」
あんなの食べて大丈夫なんでしょうか?お腹壊さなければ良いですけど。
リディロン王の元へ帰ってきた私達は事の顛末を報告して、姫様にも挨拶をしました。
「今回のそなた達の働き本当に、見事であった。これで我が国もまた民と力を合わせて再建する事が出来るだろう。改めて礼を言うぞ。本当にありがとう」
「お姉様ぁぁぁ。もう帰ってしまわれるのですねぇ!うわぁぁぁぁぁぁ!」
「グフッ!」
だから、姫様にはオートバリア効かないんですってば。
姫様に追突されてグラつく私をソフィアス様が支えてくれました。パネェッス。姫様のタックルはラグビーの選手並みのタックルです。
「姫様、ラディプールにも是非遊びに来てくださいね」
「明日にでも向かいますわ!!」
「や、早くないですか・・・?暫く通信でやり取りしましょう?」
「うぅぅ・・・わかりましたわ」
ふぅ。私が穢れを浄化してから、王都の通信システムも復旧した様です。
国の精鋭達も今回の通信エラーで王都の危機に駆け付けられなかった事を反省を踏まえた対策を練るそうです。この国はきっとこれからもっとより良い国になるでしょう。
ジェシーはご褒美に新しい武器を頂けるとの事ですが、王様が言うには城の地下室入り口近くの宝箱に置いたという事です。
しかし、その宝箱にはガーターベルトしか入ってなかった事を伝えると、もっといい大斧をくださいました。
ロバートのご褒美はその時のガーターベルトです。本人がそれが良いって言ってるので良いんでしょう。そんなにガーターベルトが気に入ったんですかね?誰のかわからないのに。結局誰が武器を取っていき、代わりにガーターベルトを入れたのかは最後までわからず仕舞いでした。
ちなみに私とソフィアス様とファレル様はご褒美の件は丁重にご辞退しました。
それぞれ帰り支度を自室で済ませ、少し休憩を取ってから出発する予定です。乗ってきた馬車は私とソフィアス様と小鳥ちゃんで満載なので、もう一台はリディロン王にお借りする事にしました。
『リリーシュカ、リリーシュカ』
指輪が光り、シャイニーが出て来ました。
「シャイニー、どうしました?」
『各国の神殿に僕らの仲間がちらばっているから、仲間を集める旅をしようよ!』
「それって・・・シャイニーの仲間全部集めたら虹の子になれるってアレですかね!?」
『うーん。それはリリーシュカ次第だけど、まぁ、なれなくはないかもねっ。なれるかなれないかは、アナタ次第です!』
「いや、信憑性低っ!!ってかなんで後半都市伝説の番組のセリフみたいな事言ってんの?」
光の神殿で見つけたというか、ずっと一緒に居たけど初めて出て来た光の精霊シャイニー。幻の鳥メルルーニィの小鳥ちゃん。音速の姫様にジェシーの意外な特技の開花。
これだけでも、この国に来て良かったと思います。
そして・・・。
「リリーシュカ、準備終わったのだー」
「はーい、私も今終わりました」
私はアイテムボックスを閉じて、部屋のドアを開けました。
ソフィアス様と小鳥ちゃんが入ってきました。
愛しい旦那様も居て、可愛い小鳥ちゃんも居る。そして頼もしい仲間が居る。なんて幸せな事か。
うまくいかない、思い通りにならないってやさぐれていましたが、結果オーライです。
帰りの馬車も私はソフィアス様の膝に座り、そして小鳥ちゃんがめいっぱい幅を利かせています。来た時よりも狭い気がします。小鳥ちゃんが空を飛べるようになるまで、遠出はしたくないなぁ。
小鳥ちゃん、短期間で一回り位大きくなってませんか?っていうか臭い・・・。生臭い・・・。帰ったらまずお風呂ですよ!
私はソフィアス様に先程シャイニーと話した事を話しました。
「私はリリーシュカが行く所に行くのだ。ずっと離れないのだ」
以前の私なら怖っ!とか思うところですが、今は自分の心境の変化の方が怖いです。
まさかソフィアス様の言葉にドキドキしたり、キュンとする日が来ようとは。
「・・・私が守らなくても、リリーシュカは一人で大丈夫かもしれないけど、傍に居させてほしいのだ」
ソフィアス様が珍しく弱気な発言をしました。ソフィアス様も何か思う所があるのでしょう。
「何を言ってるんです?旦 那 様。私の旦那様なんですから、傍に居なくてどうするんですか?」
「リリーシュカ!だ、旦那様って・・・!!」
「言っときますけど私気が多いですからね!イケメンにも弱いし、イケオジとかも好物ですから。あ、歳下でもニーヴェン様みたいな方ならいけますね!」
「リリーシュカっ!?」
喜んだり焦ったり忙しい人ですね。もうちょっとこう、歳上らしく落ち着いた頼りがいのある人になってほしいと思うのは私のわがままなんでしょうかね・・・。
「リリーシュカは私の奥さんなのだ!誰にも渡さないのだ!!」
そう言ってソフィアス様は後ろから私をギュッと抱きしめました。
「ヘタレモードじゃなくて、出来る王子様モードで言って」
「わ、わかったのだ・・・カチッ」
カチッて・・・。
「リリーシュカ。君は私の物だ!誰にも渡しはしない。リリーシュカ、君のこの澄んだ瞳に映すのはどうか、私だけにしてほしい」
「わ・・・わぁぁぁぁぁ!!ストップストップ!これやっばい!」
後ろから覗いてくるソフィアス様の出来る王子様モードによる、愛の言葉は私にはまだ刺激が強いようです。
でも、たまにならいいかなって思ってしまう私なのでした。
今回もお読みくださり、ありがとうございました┏○))ペコッ