怪鳥再び
森の奥深く、一歩踏み出す度にピリピリと感じる魔物の気配。
確実にこの奥に魔物が居ます。
「こ、小鳥ちゃん置いてきた方が良かったですかねぇ?危ないかもですし・・・」
「ピャア!!」
「やだって言ってるッス」
「ロバート!?小鳥ちゃんの言葉分かるの!?」
「はい・・・。アッシ、何故か動物の声ってスキル持ってるッス」
「何故かって森のキノコ・・・生き物だからじゃないですか?私もそのスキル欲しいです」
「あぁ!そうっスね!同じ森の生き物同士分かり合えるものがあるって事っスね!やっぱりアニキは物知りだなぁ」
お前、小鳥ちゃんを食べようとしてましたよね?つか、生き物ってカテゴリーで合ってんの?
今更ですが色々な疑問が浮かんできます。後で生き物図鑑でも見てみましょう・・・。
マズイですね。だんだん瘴気みたいのが強くなってきました。
皆さんも少し疲労の色が見えます。
「リリーシュカ、私の後ろに居るのだ」
「はい」
神殿までの道のりは、既に道という道は無く、行く手が木で阻まれている為、ソフィアス様が先頭を歩いて枝を折ったりして道を作ってくれています。
「坊や、アタシがやるわよ?」
「いや、この先何が起こるかわからないから、ジェシーには出来るだけ力を温存していて欲しいのだ」
「まっ♪男前ね!」
ソフィアス様の言う通り、この強い瘴気の主と戦う事になったら、ジェシーは不可欠です。魔法が使えないのが凄くもどかしいです。転生したらチートで無双するのとかって小説や漫画やアニメの中だけの話なんでしょうかね?
いや!きっと私のターンが来るはずですよ!!それを信じて今は動くのみです!
「ピャア!ピャア!ピャア!!」
「小鳥ちゃん?」
急に小鳥ちゃんが騒ぎ出しました。
「何か来る!って言ってるッス」
「何か?って何が・・・?」
バサバサバサバサバサッ!!
キェェェェェェェェェェッ!!!
「うわぁぁ!またあの鳥です!!」
ヴェルツィアを襲った怪鳥です。今度は二体居ます。
私は急いで防御薬を皆に振りかけました。
「ソフィアス様の炎の魔法が有効でしたよね!」
「でも警戒して下に降りてこないのだ。火球も届くかどうか・・・」
「兄上!、私に炎の属性を付与してください!」
「わかったのだ」
怪鳥が羽根を羽ばたかせて旋風を巻き起こして来ました。
「うわぁぁぁ!と、飛ばされそうですっ!」
「リリーシュカ!」
「私は気にせず、早く詠唱をっっ」
私は小鳥ちゃんに必死にしがみついてなんとか堪えていますが、いつまで持つかどうか・・・。
「うぅ・・・。炎の精霊イフリートよ。我に汝の力を与えよ」
ソフィアス様が赤く光り始めました。
「我が炎の力を彼の者に分け与えよ。炎属性贈与!!」
ソフィアス様の指先からファレル様へ赤い光が注がれていきます。
あ、ファレル様の身体も赤く光り始めました。
「効果は3ターンなのだ!」
「承知!!それぞれ一発で仕留めます!」
ファレル様が弓矢を取り出し、弦を引きました。
空を飛び回り、旋風で攻撃をしてくるので、こちらに近づいて来ない鳥には飛び道具しか無いですもんね。
「喰らえ、兄上との協力攻撃!フレイムアロー!!」
あ、ファレル様は技名英語なんですね。
ファレル様が放った炎の矢は見事に怪鳥の眉間を貫き、たちまち怪鳥は炎に包まれました。
「っし!あと一匹!!」
ファレル様が次の弓を構えます。今のを痩せてるファレル様で見たかったです。
片方がやられてもう一匹の怪鳥がこちらにクチバシを向けて襲って来ました。バーサク化したんでしょうか?先程よりも動きが読めず、直接攻撃を仕掛けてくる回数が増えて来ているようです。
「くっ・・・。動きが早いな」
「紅蓮刃!!」
キェェェェェェェェェェ!!
「あぁ、惜しいです!掠ったんですけどね」
「きゃー、こっち来たわ!エイッ!エイッ!」
ジェシー、掛け声は可愛いですけど、斧がブンブン音がしています。
怪鳥は小鳥ちゃん目掛けて攻撃を、してきました。
「だっ、だめぇっ!!小鳥ちゃん!」
「リリーシュカ!?」
私は急いで小鳥ちゃんを守りました。怪鳥のクチバシは私の背中をつつきました。
「うっ・・・!痛いけど耐えられますよ!そんなクチバシは屁でも無いわァァァ!!」
「ピャアッ!ピャアッ!」
「ママ、離れてって言ってるッス!」
「離れるもんですか!小鳥ちゃんは私のこどもですからっ!ソフィアス様っ!」
「わかってるのだ!猛る炎よ我が剣に宿り、悪しき者を焼き尽くせ!!炎剣演舞っ!!」
キェェェェェェェェェェ!!
やりました!!倒しましたよ!!
「リリーシュカっ!大丈夫か!?」
「そんなにダメージは受けていないのですが、服がポロボロになっちゃいました・・・」
「うわぁっ!ファレルは見ちゃ駄目なのだ!」
「見ませんよ」
「とりあえず、そこの茂みで着替えてきますね」
私は茂みに隠れて着替えを探しましたが、ぶっちゃけ着替えの事を忘れていました。私のアイテムボックスに入っているのは夜会用のドレスと、ひらひらワンピースと・・・あの、例のローブだけ。
・・・くっ。こんな劣化したローブしかないなんて!屈辱ですが着ないよりはマシでしょう。
私はどこからどう見ても白魔道士なローブに着替えました。
ふぅ。冒険者なのに、屈辱で・・・す?あれ?冒険者?
「あぁっ!!!!!」
「ど、どうしたのだ!モンスターか?」
「いえ、私ソフィアス様と結婚しちゃったので・・・冒険者じゃなくなっちゃいましたぁ〜!わぁぁぁん!!」
「だ、大丈夫なのだ!職業にはつけないけど、逆に言えばなんだってしていいのだ!どこでも働けるし、どこのギルドもフリーパスなのだ!・・・クエスト受注は出来ないけど、冒険者のお供は出来るのだ!報酬だって山分け出来るのだ!」
「ジェシーにクエスト選んでもらえばいいのです?」
「その通りなのだ!そうすれば冒険者となんら変わりは無いのだ!!」
「・・・ならいいです」
私とした事がとんだ盲点でした。危うく冒険に出られなくなるとこでしたよ。
私達は更に進む事10分ほどで、荒れ果てた廃神殿を見つけたのでした。
昨日投稿出来ませんでしたので、本日二話目の投稿です。
今回もお読みくださり、ありがとうございました┏○))ペコッ
10/7誤字を修正しました。