交際期間ゼロな件
や・・・ちまったです。勢いって怖いですね。でも、勢い任せとはいえ私は後悔はしていません。
ソフィアス様はアホだし、歳上なのにちっとも頼りなくて、全然王子様らしくなくて、なんでもかんでも私の言いなりだし・・・あれ?マイナス面しか出てこないな!
えーと、見た目がいいし、炎の剣術も格好良かったですし、“出来る王子様モード”の時のソフィアス様は、ぶっちゃけドキッとしましたし・・・あれ?なんか見た目しか褒めてない気が・・・。
でも、しょうがないです。半年間ほぼずっと一緒に居て、頼りないけど私を一番に想ってくれて、私の行動でいちいち一喜一憂するこの人の事がいつからか気になってしまって、気づいた時には好きになってしまっていたんですから。
欠点も許せてしまう位愛おしくなってしまった以上、居なくなられたら困るんですよ・・・。
教会の中は祝福の言葉で溢れかえっていますが、早急にヴェルツィアへ戻らなくてはなりません。
「リリーシュカ様、新しいパスポートでございます。古いパスポートはどうされますか?良ければこちらで破棄しますが」
モリーが、私にパスポートをくださいました。
リリーシュカ・ラティシエから、リリーシュカ・グリューンヴェルデに変更されました。うぉっ!名前の脇に金色の王族のマークが付いています。前のは王国の刻印をつけられていましたが、それとは別のデザインです。言わば、国旗と家紋みたいなもんですかね。
「あ、あの。古いのも取っておきたいです。私がリリーシュカ・ラティシエだった証に」
「承知いたしました。ではメモリアルケースにお入れしてお渡ししますね」
メモリアルケース!?いや、そんな大層な物では無いので!
モリーが黒いパスケースみたいなのに古いパスポートを入れて持ってきました。ご丁寧にこれも王家のロゴ入りです。ウラ面にはモルゾーのイラストが描かれています。うわぁ!要らねっ!
・・・どんだけこの国はモルゾーを推してんですか?
「ソフィアスよ。ワシはまだまだ王位を誰にも譲る気は無い故、ソフィアスにもまだ王位継承権があるからこのままリリーシュカと一緒に城に住むがよい」
「はっ。承知しました、父上」
くっそ、満足そうだな、このおっさん。死んでもお義父様なんて呼びませんからね!!
「王様、そういった細かいお話は後で!私達は今すぐヴェルツィアに急がなくてはなりませんので!・・・ソフィアス様、ありったけのポーションと補助アイテムを用意しなくてはですよ!」
「了解なのだ。・・・奥さん///」
「ちょっ!照れてる場合じゃ無いですってば!小鳥ちゃんも行きますよっ」
「ピャア♪♪♪」
私達はタキシードとウェディングドレスのまま駆け足で教会を後にしました。走りにくい事この上無いです!改めてドレス姿でF1カーの様に高速疾走出来るプリンセス姫様の凄さを実感しました。
途中私達を心配して見に来てくださったニーヴェン様に再び会いましたが、挨拶もそこそこに走り抜けました。
私達の取り急ぎの入籍報告を受けてニーヴェン様は、とても嬉しそうに笑って「兄様、お姉様、おめでとうございます」とお祝いの言葉をくださいました。そして事情を聞きにでしょうか、急いで教会に走って行かれました。
今思えばあの茶番にニーヴェン様を呼ばなかったのは、常識派のニーヴェン様なら大人達による悪ふざけは絶対阻止しますもんね。確信犯ですよ。
こうして私達の交際期間ゼロ入籍はロマンティックな場所でもシチュエーションでもなく、色気もそっけも無くバタバタとやっつけ仕事の様に終わりました。
「やれやれ、じゃの。落ち着きの無い夫婦だがお似合いじゃの、ばぁや」
「そうですねぇ。王様にお孫様がお産まれになるまで私もまだまだ頑張らないとですねぇ。本番用の衣装も張り切って仕立てなくてはなりませんもの。ほほほ」
「ばぁや、活き活きしておるなぁ。ハハッ☆まぁ、あやつらがあんなに急がなくても既にヴェルツィアに援軍を派遣してるんじゃがな」
私達は急いで着替えを済ませまして、街の道具屋さんでポーションと毒消しと、万能薬とプロテイン錠と防御薬や食料を買い漁りました。勿論パスポート払いです。もう怖いものなんて何もないとです。
アイテムボックスに手当り次第放り込んで、直ぐ様馬車移動です。
うぎぎ・・・またも、小鳥ちゃんに圧迫されつつ。でも、今回は新婚でありますんで、ちゃっかりとソフィアス様の膝に座っちゃいましたのでいくらかはスペースがあります。
「はわわ・・・私幸せ過ぎて死にそうなのだ・・・!」
「いきなり未亡人は流石に嫌ですよ?」
「はっ!リリーシュカを残しては死ねないのだ!」
ソフィアス様が後ろから私を優しく抱き締めてくれました。
「わーっ!!!無理無理無理無理!!!」
今までそんなに意識していなかったのですが、ソフィアス様が好きだと気付いて、結婚までしてしまった事を急に意識してしまいました。
「リリーシュカ?ど、どうしたのだ?」
「み、見ないでくださいっ!私今きっと凄い顔してますから!」
「耳まで真っ赤なのだ!もしかして私を意識してくれてるのか?(かっ、可愛いのだ可愛いのだー!!わー!!)」
ソフィアス様が更に力を込めてぎゅぅぅぅっと抱きしめて左右に振ってきます。げぇえぇ、酔う・・・。
でも・・・バカップルでもなんでもいいです。今だけ、少しだけこうさせてください。
今回もお読みくださり、ありがとうございました┏○))ペコッ