Will You Marry Me?
「うわぁぁぁぁぁ!!」
私はガバッと跳ね起きて辺りを確認しました。やべぇ、肉体に戻って見た光景が、使用人ほぼ全員集合っぽいのとばぁやさんも居るし、ただのコスプレにこんなに人集まるもん?ってな感じのものでした。
「「「「「ソフィアス様、リリーシュカ様お帰りなさいませ!!おめでとうございます!!」」」」」
お帰りなさい、はわかる。でも、おめでとうございます、はわかりません。
「ピャア♪ピャア♪」
「小鳥ちゃんっ!ただいまっ」
小鳥ちゃんが私の顔にスリスリしてきました。
私は小鳥ちゃんの頭を撫でながら、どうやってこの状況を理解し、打破できるかを考えました。
考えろ・・・考えろ・・・神経を研ぎ澄まして考えろ考えろ!!
ピコーン!
「ソフィアス様・・・」
「なんだい?リリーシュカ」
ソフィアス様はスマートに私の手を取って私が台から降りるのをサポートしてくださいました。クッソ、白いタキシードでイケメン度アップしてるのが腹立たしいです。周りからはほぅっと溜め息が漏れています。
「ソフィアス様は以前、私の気持ちが固まるまで待つ、と仰ってくださいましたよね?」
「あ、あぁ・・・」
「私・・・まだ自信が無いのです。自分が王家に相応しい人物なのか・・・」
「リリーシュカ、安心してほしいのだ。ここに居る者全員、後母上もみんなリリーシュカを気に入っているのだ」
なんで、私こんなにも王宮で人気なのかもわかんないんですけど。
「でも、私っ!ヴェルツィアの人達が苦しんでいるのにとても今はソフィアス様との未来なんて考えられないです!!それに、私自身の問題も解決していませんし。・・・わかってくださいませ」
と、ここで瞳ウルウル攻撃です。
「リリーシュカ!なんて優しいのだ!わかった!結婚式は共にヴェルツィアを救い、リリーシュカの力が戻った後にしよう!」
締めた!とりあえずは先延ばしに出来そうです。皆さん残念そうな顔をしています。
「私のわがままで振り回してしまってごめんなさいね、ソフィアス・・・様」
ソフィアス様の手を握り返し、とても残念ですけどって表情でフィニッシュです。私劇団員にもなれそうな位頑張りましたよ!
それを見ていたばぁやさんが、ずずいっと私達の前に来まして、
「・・・はいはいはい、ばぁやから一言いいかしら?挙式は後でも、婚姻は結べるのよねぇ?ちゃちゃーっっと書類にサインするだけだからお時間はかからないのよ?」
と、悪徳商法の販売員みたいな事を言い出しましたよ!!怖い怖い怖い怖い!
「ひっ!い、いえ、間に合ってます!私手が痛くてペンも持てそうにないですし」
「ならば、僭越ながら私が代筆を!リリーシュカ様は拇印を押すだけで結構ですので・・・はい。これでいいですね」
モリーーーーーーーーーーー!!!!?若干私の言葉に被せるように言ってきた気がしますけど、まさか読まれてた・・・?
うぅ・・・皆さんの視線が怖いです。
「さぁ、リリーシュカ様、どうぞ」
どうぞって言われて右手の親指に赤いインクをつけられましたけどさぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・。
プチンッ
「あったまきた!もう怒りましたよ!なんで本人の意思を無視して事を進めようとするんですか!!これが王家のやり方かーーーーーーーー!?」
「り、リリーシュカ。落ち着くのだ!!」
「これが落ち着いていられるかぁ!ずっとモヤモヤしてたんですけど、そっか、何でもかんでも私の意志が尊重されてるようで結果的に全く尊重されていない事が嫌だったんです!ソフィアス様もソフィアス様ですよ!なんです?この軟弱者っ!!待つと言っておきながらすぐ周りに流されて!いつも自分が自分がって・・・少しでも私の気持ちを聞いた事がありますか?」
「うぅ・・・ごめんなのだ」
「周りからじわじわと固められて、窮屈で身動き取れなくなって。私の選択肢はいつも一つしかないみたいで。それを諦めて、妥協して選ばなくちゃいけなくて。そんな状況でどうして私が幸せだと感じる事が出来るっていうんですか!?」
静まり返る教会。その中でスッと動いたのがソフィアス様でした。
「リリーシュカ・・・すまなかった。そんなにも思いつめさせてしまったなんて・・・。お詫びのしようが無いが、この話は全て・・・私がリリーシュカを好きだと言った事も無かった事にするからここに居る者達は許して欲しいのだ。私の事は嫌ってくれて構わないが、ここに居る者は全員私の事を思ってやってくれたのだ。やり過ぎな所はあったが」
ソフィアス様は私に頭を下げました。
ソフィアス様が謝ってくれたのに、まだモヤモヤします。ソフィアス様が頭を下げるのを見たかったんじゃなくて。
「顔を上げてください。ソフィアス様」
「リリーシュカ・・・」
私はソフィアス様の頬を思いっきり引っ叩きました。
音はするけどダメージが無いですが。
そして全体重をかけてソフィアス様のネクタイを引っ張り、ソフィアス様の顔がこちらに近づくと・・・
ちゅっ
私は自分からソフィアス様にキスをしました。
「えっ?えっ!?リッ!リリーシュカ?・・・赤ちゃんがっ」
「出来ませんよ!これくらいじゃ。ソフィアス様、私と結婚してください!」
私の手はまだソフィアス様のネクタイを掴んだままです。最悪です。最悪なシチュエーションでの逆プロポーズですが、これはちゃんと私の意思です。引っ叩いたのは、私を好きだとか言っておきながら、ちゃんと私を見ていなかった罰です。
私は私がそうしたいと思っているのに、先回りされて私が思った通りになる様にお膳立てしてもらうのがずっと嫌だったんです。だってそれは私が行動した訳じゃないのですから。結果は同じ事でも、誰かにやらされてやったのと、自分でやりたいからやったのは全然違いますから。私は結果と同じくらいプロセスも大事にしたいのです。
顔を赤くしたまま固まってしまったソフィアス様に私はさらに言いました。
「私を好きだと言った事、なかった事になんてしませんから!自分で言った事は守ってください!私がソフィアス様を好きになってしまった責任を取ってください。ずっと・・・側に居てください」
「リリーシュカ・・・本当なのか・・・?その、私を、好きって・・・」
「はい、好きです」
「は・・・夢、そうだ、これは夢なのだ!だってリリーシュカに叩かれても痛くもなんとも無かったのだ!こ、小鳥ちゃん私をつついてくれ!」
「ぴゃぁっ♪」
小鳥ちゃんはドリルの様にソフィアス様をつつきました。
「いたっいたたたっ!あれっ?痛い・・・」
「もう、夢なんかじゃないです。で、返事はまだでしょうか?」
「もっ、勿論、わっ私は、リリーシュカと結婚するのだ!私もリリーシュカが好き・・・あっ愛しているのだ!!」
「じゃぁ、私の右手握っててください」
「わっ、わかったのだ」
私はソフィアス様と一緒に婚姻届のモリーが代筆した私のサインの脇に拇印を押しました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました┏○))ペコッ
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