転生人生を振り返って
翌日、私は小鳥ちゃんとロバートを連れて謁見の間を訪れました。
あ、見張り番をしていたソフィアス様には客室で寝てもらいました。
ジェシーはヴェルツィアの大工さんに門扉や扉の作り方や補強の仕方とかを習っています。
前世では専業主婦でとても旦那様に大切にしてもらっていたらしく、電気関係や力仕事、大工仕事などは旦那様が全てやってくれたそうです。専業主婦も悪くはなかったけど、力もあるし時間に追われる事無く、やりたいことが何でも自由に出来る今が凄く充実していて楽しいそうでなによりだと思いました。
私の方はといえば、順調に行っているんだかなんなんだか、流されるままにいきあたりばったりの日々を送っている様な・・・。
①転生したら自分の設定したキャラとは別人だった(※妥協案として私の本体のキャラになった人に娶ってもらう⇒既に妻が居た為失敗)
②希望職につけなかった
③力が壊滅的に無い(※ステータス割り振りに悪意を感じるレベルで)
④レベル既にカンスト、伸び代が無い
⑤ストーカー気質の王族親子にロックオンされる(※しかも隣国に“第一王子の正妻”だと取り返しのつかない虚偽の報告済)
⑥無理やりダンスだのテーブルマナーだの覚えさせられたが、隣国がこの状態じゃ最早使いどころが無い(※39~41話は無駄って事!?教えてよ、モリー!)
あれ・・・?思い返してみても私やっぱり何ひとつ自分の思い通りになっていないですよね?
ちっとも順調になんていってないじゃないですか!しかもうまくいかなかった部分が全てうまくいっていたら人生設計が逆転するレベルですよ?そして①に関しては妥協案すら思い通りになっていないという・・・。
こわっ!!私の転生人生こわっ!!・・・まぁ“たら”“れば”を言ったらキリが無いので結局妥協せざるを得ないんですけどね。私の人生一生妥協していかなくてはならないのでしょうか・・・。トホホー。
「どうした?リリーシュカよ?余に話があったのではないのか?」
あ、そうでしたそうでした。ここは謁見の間でした。悪夢の様な物思いに耽っている場合ではありませんでしたね!
「あの、この城の近くの森でこの生き物のタマゴを保護し孵化させたのですが一体何の鳥なのかと思いまして・・・。そしてこの子のオデコには・・・ご覧の通り小さな角の様な物が生えているのです。万一モンスターの類であり、この国に仇を為す存在であれば、私は一刻も早くこの子とヴェルツィアを出ようと思っています」
「ピャァ♪ピャァ♪」
私は小鳥ちゃんのオデコの体毛を掻き分けて、王様に角の様なものを見せました。小鳥ちゃんは撫でられていると思っているのかご機嫌です。
王様は玉座から降り、こちらに来てふむぅ・・・と一言だけ言うと小鳥ちゃんを観察しています。
「見た事も無い動物だな。愛想が良くてめんこいなぁ。まぁ、まだ赤子の様だし、そんなに先を急がなくても良いとは思うがな。どうしてもというなら、上の城の図書室でも行ってみるといいぞ。おぉ、そうじゃプリンセスに案内させよう」
「ありがとうございます!!図書室、お借りします!」
王様も知らないという動物・・・ますますモンスター率が高くなっているのではないでしょうか。
でも、何があっても絶対に私は小鳥ちゃんを見捨てませんからね!
「ピャァ♪ピャァ♪」
私の気持ちを知ってか知らずか、小鳥ちゃんは歌うように囀っていました。
「おはようございます!リリーシュカお姉様。上の城の図書室に行かれるという事ですけど」
「おはようございます、姫様。その前に小鳥ちゃんを洗える水場をお借りしたいのですが」
「あぁ、それでしたら上の城の図書室近くに使用人たちのシャワールームがありますので順に参りましょう」
「ありがとうございます!」
姫様は昨日と同じく戦闘服をしっかりとお召しになっておられます。そして、恋敵(誤解)の私に対してとても良くしてくださいます。
「あ、あの姫様・・・。この指輪、外れたらすぐに姫様にお渡ししますね。それまでは、すみません」
「まぁ!何を仰いますの!お姉様。指輪が外れましたら、ソフィアス様にお返しになれば宜しいのですのわ!」
「へあ?」
「指輪をお返しになった際にはお姉様はグリューンヴェルデ王家とご縁が切れますので、そしたら是非ともこのヴェルツィアでワタクシと一緒に暮らしましょう!」
「えぇ?姫様、ソフィアス様の所に嫁がないの?」
「何故ですの?嫁ぐ訳が無いじゃないですか」
「えっ?」
姫様は、心底不思議そうな顔をしています。
いや、アンタ昨日の剣幕凄かったじゃないですか!私という存在が無ければ間違いなく嫁ぐ気満々でしたよね?私、危うく指を落とされそうになりましたけど・・・。
「(ボソッ)今のワタクシの心の支えはリリーシュカお姉様ですもの・・・(ポッ)」
「えっ?姫様何か言いました?」
「いいえ、何も言っていませんわ♪」
姫様の標的がソフィアス様から私になった事は露知らず、小鳥ちゃんの正体について思いを馳せる私でありました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)