リリーシュカ親になる
只今私達は、城の近くの森で門扉や扉に必要な素材集めをしています。
ジェシーは手斧で木を伐採し、板を作っています。ソフィアス様はそれを城まで運んでいます。ぶっちゃけ、私とロバートは役立たずなんで、パトロールという名目でサボっています。
鳥の化物は倒したし、後は四天王がいつ来るかですね・・・。街を壊滅状態にしたので暫くは来ないと思いますけど・・・。
「あっ。アニキ、あそこにどデカいタマゴがあるっスよ?」
ロバートが指差した先の木の下に高さ50センチ程あるタマゴが落ちていました。ほ、本当に大きいです。タマゴがこれくらいだと言う事は、親は相当大きな生き物だと思われます。
白い色をしたタマゴは、黄色い波線の様な模様がタマゴの先端と下の方に2本、周りをぐるっと一周する感じで入っています。
異世界ものだと、大抵こういったタマゴはドラゴンか聖獣のタマゴですよね?
「アニキ、この大きさだとどんだけのオムレツが作れるんスかね!」
「だ、ダメェ!このタマゴは食べちゃダメなやつです!」
「えー?美味そうなのに」
私はタマゴを持とうとしましたが、重くて持てません。うーん、どうしたものでしょう?
運べないんじゃこのままここで温めてみますか?でもどうやって?考えろ・・・考えるのよ、リリーシュカ!
あ、ダメ元でホーリーライトで包んでみましょうか?
「ホーリーライト」
淡い光がタマゴを包み込みました。
「アニキ、こんなんで孵るわけがないじゃないっス・・・」
ピシッ ピシピシピシ・・・ッ
「ふふん・・・。ほらごらんなさい」
「ほ、本当に・・・ヒビが・・・っ!」
どんなドラゴンや聖獣が出てくるですかね?ワクワク。
ピシピシッ パキッ
おぉ!?タマゴの一部が欠けましたね。まだ中身は見えません。
パリパリ・・・ バキッ
割れた隙間から、鳥の足の様なものが出てきましたよ!頑張れ!頑張れ!私の未来のパートナー!!
バキパキパキパキッ ピシピシピシッ
パリパリパリパリパリ・・・
全体的にヒビが入りました!そろそろですね!
「ピャアアアアァァァァァッ!!」
う、生まれました!!金色の・・・どデカいヒヨコ?が。
・・・え?なんなん?コレ。ドラゴンは?聖獣は?
ヒヨコ(仮)は私を見るなり、ピャァピャアと鳴き声を上げて寄ってきました。あー、刷り込み完了しちゃいましたね。もう捨てる事は不可能です。私にも一応罪悪感があるもので。
私が歩くと後を付いてきます。・・・意外と可愛いかもしれません。
「アニキ、この大きさだとどんだけの焼き鳥が作れるんスかね!」
「ロバートォォ!!食べちゃダメなやつ!!ってゆーとろうが!!」
「ちぇー、美味そうなのに」
危ない危ない。コイツ、キノコの癖に雑食とかビックリするわ。
そうだ、名前をつけなくちゃですね。えぇと、ピィちゃん?いや、ピィとは鳴いてないですね。ピャアちゃん?いや、いくらなんでも安直過ぎますね。んじゃここは捻って・・・
「小鳥ちゃん!なんてどうです?」
「アニキ・・・なんの捻りも無い上に、小鳥っつーサイズでも無いっス・・・」
「ピャア♪ピャア♪」
ヒヨコ(仮)は羽根をバタつかせて、何だか嬉しそうです。
「なんか喜んでないです?」
「まさか!」
「・・・小鳥ちゃん」
「ピャア♪」
「・・・チ、チョ○ボ?」
「・・・・・・(無反応)」
「・・・小鳥ちゃん?」
「ピャア♪」
はい、名付け終わりましたぁ。命名!小鳥ちゃんです!
「今日から私がお母さんですね!宜しくね、小鳥ちゃん」
「ピャアピャア♪」
小鳥ちゃんは嬉しそうに私にスリスリしてきます。ふむぅ、可愛い!
「ねぇ、ロバート」
「何スか?アニキ」
「小鳥ちゃんて、何食べるのかな?」
「アッシに聞きます?・・・草とか虫とかじゃないスかね」
「小鳥ちゃんに必要な程の、虫・・・。ゴクリ」
想像したらゾワッとしてしまいました。
「ねぇ、ロバ・・・」
ロバートの方に目をやると、小鳥ちゃんがロバートを飲み込もうとしてました。
「うわぁぁぁぁぁ!?こっ!小鳥ちゃん!ストップストーップ!!それダメ!毒があるからダメ!!」
「ベプォッ!!・・・ピャア・・・」
小鳥ちゃんがロバートを吐き出しました。とても残念そうです。
「あ、アニキ・・・アッシ、毒はないっス・・・」
ギュルギュルギュルギュル・・・
小鳥ちゃんから物凄い音が聞こえてきます。これ、お腹の音ですかね?エサ代とか大変そうですけど、私小鳥ちゃんを養いきれますかね。
とりあえず、ジェシーとソフィアス様の知恵でも拝借しましょう。
「ジェシー!ソフィアス様ー!」
「あら、リリー。パトロールは終わったのっ・・・って何それ!?アンタ何拾ってきちゃってんのー!?」
「大きな鳥なのだ!」
私は得意げに言いました。それはそれは得意げに言いました。
「先程産まれたばかりの、小鳥ちゃんです!!」
すると、ソフィアス様がガクガクと震えながら近寄ってきました。
「リリーシュカ・・・!それはまさか半年前の、あの、キスの時の子・・・?私とリリーシュカの子・・・私はパパになったのか?」
「えっ?えっ?なになに?アンタ達いつの間にそんな・・・っ?」
「ぎゃぁ!忘れてたのに思い出させないでくださいよ!!」
ジェシーがワクワクしながら私とソフィアス様を交互に見てきます。
「詳しくは第35話を読むのだ」
「ワタシ、イマカラ、35話、ケシテクル」
「こらこら、やめなさい。いくら駄作でも書いた人は愛情持ってるんだから」
ジェシーに止められ、残念ながら削除は出来ませんでした。
とりあえず、私に扶養家族が増えました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました┏○ ペコリ