ヴェルツィア城地下出張所
プリンセス姫様が正気を取り戻すまで少し時間がかかりましたが、とりあえずの所は落ち着かれた様です。
「しかし、こんなにもお似合いの婚約者が居ながら、私のストーカーをするなんて外道もいいとこですよね。顔がいいからってなんでも許されると思ってたら大間違いですよ!ったく。これだから温室育ちは!どうせ何かあったら権力を振りかざしたり、金でも積んどきゃいいって思ってんですよ・・・ブツブツ」
「り、リリーシュカぁ・・・!プリンセス姫は婚約者じゃないのだぁぁ!!」
「リリー、アンタ心の声全部口に出ちゃってるわよ。そしてなんでアンタそんなにやさぐれてんのよ」
ジェシーに言われて気付きました。やっべ!本音駄々漏れ☆
「つかさ、姫様は何で婚約者だと思っているの?正式な申し込みがあったの?」
「そんなのありませんわ!だってワタクシとソフィアス様は魂で結ばれているんですもの。そんなものが無くても婚約者になるのは自然な流れでしょう?」
でしょう?って!考えが怖っ!!
「私が心から愛しているのはリリーシュカだけなのだぁ!!」
ソフィアス様の訴えを、姫様は鼻で笑って一蹴します。
「あら、そんなの一時的な気の迷いですわ。きっとワタクシの元へ帰って来ると信じておりますわ」
「は、話が全然通じないのだ!!」
私はソフィアス様の肩を指でトントンとつつきました。
「ソフィアス様、それ私もソフィアス様に対して常日頃から感じている思いですよ」
「リリーシュカぁ!?あんまりなのだぁ!」
私に縋り付いてくるソフィアス様は放っておいて、いい加減に先に急ぎましょう。
引き続き姫様の案内で、王様が居るという部屋まで来ました。
宝箱にガーターベルト入れたの、王様じゃないといいんですけど。
【謁見の間】
「これはこれは、よくぞ参られました。婿殿!」
もう結婚した体になっていますね。
カチッ
ん?なんの音です?
「リディロン王におかれましては、ご機嫌麗しゅう存じます。此度は我が父モルゾヴァの命により貴国の安否を案じ、グリューンヴェルデ城第1王子・ソフィアスが馳せ参じた次第でございます」
スッとソフィアス様が王様の前に跪いて王族らしいスマートなご挨拶をしています!!
えっ?さっきのはこれのスイッチの音?ソフィアス様はなんかのプログラムで動かされてるんですかね!?
・・・・・・もの凄くどうでもいいけど、王様はモルゾヴァって名前だったんですね。だからモルゾーなのか・・・。
「あぁ、よいよい、婿殿。楽にしなさい」
「はっ、恐縮です。リリーシュカ、こちらへ」
へっ?何でしょうか?ソフィアス様に呼ばれましたけど。
王様の前で行かないわけにはいかないので、しぶしぶソフィアス様の所へ行きました。
「恐れながら申し上げます。こちらは我が妻リリーシュカです。どうぞお見知りおきを」
はっ!?何言っちゃってんのこの人!?何妻とかほざいちゃってんですかねぇ?驚きすぎて目玉ポーン!なんですけど。
しかし、この人たち婿殿、とか妻、とか何で恋人だの婚約者だのすっ飛ばして話してんですかね?
はっ!!アレですか?嘘も百回言えば本当になるってやつを実践してるんですかね?
「何!?貴殿は我が娘プリンセスを弄んだのか!?」
「その件ですが、こちらはプリンセス姫との婚約の儀も交しておりません。そもそも婚約の申し込みすらしていないのですが、何故私とプリンセス姫が婚約したと仰られるのでしょうか?」
「プリンセスの戯言と申すか!!」
「左様でございます。こちらの意に反して話を無理矢理推し進めようとされれば、それはこちらに対する侮辱と捉えますが如何でしょうか?何より私には既に正妻がおります故、プリンセス姫様を娶るならば、側室としての扱いになってしまいますが、それは私としても忍びないです」
「ぐぬぬ・・・!もうよい!!貴様なぞに可愛いプリンセスをやるものか」
「わかっていただけて何よりでございます」
こ、こいつ、出来る王子様モードで押せ押せスイッチが入って、ドサクサに紛れてプリンセス姫様とのゴタゴタを解決しやがりましたよ!ヘタレモードじゃラチが飽きませんから、今がチャンスと思ったのでしょうね!
「話が大分逸れてしまいましたが、今この国では何が起こっているのでしょうか?ここに来るまでの荒れた街の様子を拝見しましたが・・・」
王様はふぅっとため息をついた後に、本筋について話し始めました。
「あれは、先月の事だったかの。街に大きな鳥のモンスターが現れ、街を荒らしまくったのだ。勿論国の精鋭が相手をしていたのだが、鳥のモンスターとは別に魔王軍の四天王の1人がやってきて城を開け渡せと言ってきたのだ」
魔王軍?四天王?何だか物騒な話になってきましたね!妻だの婿だの言ってる場合では無い程切羽詰まってるじゃないですか!!
今回もお読みくださり、ありがとうございました(๑>∪<๑)