王子三兄弟
偽ではありますが、ソフィアス様の婚約者という大役を仰せつかってしまって大変恐縮です。恐縮すぎて頭が痛いです。
謁見の間を後にし、ソフィアス様が是非にというのでお城の中庭で急遽小さなお茶会を開く事になりました。
お城の中庭は真ん中に大きな噴水があり、色とりどりの花が咲き乱れていてとても美しい庭です。
お城のすぐ裏が海というのもあり、潮の香りがします。ここの花は潮風に強い花なのでしょう。
真ん中に噴水のある広場に大きな丸いテーブルが用意されており、テーブルの上には紅茶とフルーツとパンケーキ、サンドウィッチが用意されていました。
あれ?サンドウィッチってお城では食べないんじゃないの?
私が疑問に思っていると、
「ニーヴェンがリリーシュカから貰ったサンドウィッチが美味しかったって城の料理人に伝えてから城でも軽食が出る様になったのだ」
と、ソフィアス様が教えてくれました。
「そうだったんですか!」
ニーヴェン様、サンドウィッチ気に入ってくださったんですね。
「リリーシュカお姉様!はぁはぁ!」
呼ばれた声の方を振り向くと、息を切らせて肩で息をしているニーヴェン様がいらっしゃいました。
あぁ、私の心の天使ニーヴェン様・・・。相変わらずお可愛らしいっ。
「あ、ニーヴェン様!今ちょうどニーヴェン様の話を・・・っ!」
ニーヴェン様が私に向かって走ってきてガシィッっと抱きついてきました。
「ど、どうなさいました?ニーヴェン様?」
「嘘みたいです!リリーシュカお姉様が、ソフィアス兄様の婚約者だなんてっ!僕の本当のお姉様になるんですねっ!!」
え?あれ?
「おめでとうございます、ソフィアス兄様!!」
「ニーヴェン、あの・・・」
「わぁぁ~!リリーシュカお姉様のウェディング姿、とっても綺麗で可愛いんだろうなぁ」
うぅ、ニーヴェン様の無邪気なキラキラした笑顔が破壊力バツグンで心がとても痛いです。
「ニーヴェン、違うのだ」
「え?」
「かくかくしかじかで・・・」
「あぁー・・・、そうだったのですかぁ・・・。僕ったら勘違いで喜んだりして恥ずかしいです・・・」
ニーヴェン様が目に見えるほど明らかに落ち込む様子が切な過ぎて見ていられませんっ!
「に、ニーヴェン様。サンドウィッチをお気に召して頂いた様で」
「あ、そうです!皆さんとお外で食べたサンドウィッチがとても美味しかったので、城の料理長に言って時々出してもらう事にしたんです。お行儀悪いですが、読書しながら食べれるし美味しいのでお気に入りです」
ニーヴェン様がはにかんでおります。
うわぁぁぁぁ!かわゆいぃぃぃぃ!
そうだ、私ニーヴェン様のお嫁さんになればいいんじゃね?このまま育ったら間違いなく鼻血もんのイケメンに育ちますよ!
「ニーヴェン様は年上の女性は範囲外ですか?」
「えっ!僕は・・・好きになった人がいくつでも年齢で遠慮はしません」
つまり、いくつでも構わないんですね!?
ふふ、顔を赤く染めて恥ずかしがるニーヴェン様もまた・・・。
「リリー・・・。アンタ犯罪者みたいな顔してるわよ?」
「え?えへへ・・・」
「えへへじゃないわよ。気持ち悪いわね」
「全く兄上ともあろうお方が何故こんなちんちくりんなおなごを好いておられるのか・・・」
「誰っ!!?」
急に会話に入ってきた人はとても貫禄のある金髪碧眼の眼鏡をかけた殿方でした。どこかのタイヤメーカーのキャラの様なふくよかな体型です。
「ファレル!久しぶりなのだ!」
「兄上!聞きましたよ!この下品な女と婚約なされたと」
「げっ・・・下品?」
「この女と出会ってから兄上がどんどんアホになっております」
「ファレル兄様っ!」
「ファレル、リリーシュカはとても素晴らしい人なのだ。父上もお気に入りなのだぞ」
「父上も兄上も好みがちょっと特殊過ぎますよ。ニーヴェンもこの女と一緒に居るとアホがうつるぞ」
「ちょっと!失礼じゃないですか!?」
「そ、そうですよ。ファレル兄様・・・。僕はリリーシュカお姉様大好きです」
「はんっ。ニーヴェンまで毒牙にかけるとは・・・とんだアバズレだな」
「こ・・・これがファレル様っ!や、痩せてたら美形だっただろうに・・・。そしたらどんなに鬼畜な事言われてもご褒美と捉えられますけど、こんなぶよぶよな体型の殿方に侮辱的な言葉言われてもなぁぁ。心に響かないっつーか。っていうか、アバズレって、王族が使う様な言葉じゃないと思いますけど・・・脳みそが全部そのタプタプのお腹の養分になっちゃったんですかねぇぇ・・・」
「きっ・・・貴様っ!何を!!」
「わっ、思ってた事全部口に出しちゃってました!」
いやはや、これまた強烈なの出てきちゃいましたね。
「い、いえ、三兄弟で3分の2がハズレって凄いですよね!ようやくニーヴェン様でまともな子が産まれたって事ですよね・・・」
「くっ、くそっ!言わせておけばっなんて女だ!兄上!やはりこんな女やめた方がいいですよ!」
「ファレル!!リリーシュカに謝れ!いくらファレルでも、リリーシュカを貶める発言は許さないのだ」
「兄上・・・」
当事者の私よりも本気でキレてるソフィアス様に怒られたファレル様は、飼い主に叱られた子犬の様にショボーンとして黙ってしまいました。
ファレル様の出だしが強烈過ぎて、ファレル様に偽婚約者だということを説明し忘れましたが、もう面倒くさいからほっときましょう。
今回もお読みくださり、ありがとうございました(^ω^)