それぞれの未来へ
ソフィアス様の横っ面を思い切り引っ叩きましたが、なんせ力が無いもんで、音だけ立派でも、相手にダメージ与えられておらず。
「リリー・・・シュカ?はっ!わぁぁぁぁぁぁぁ!!ごめん、ゴメンなのだ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!鼻血っ!いや、耳からも噴いてます!」
私は、ひとつもダメージ与えられてないですよね!?
夕暮れ時のスプラッタシーンです!
「目の前に、リリーシュカが居て、気付いたらキスしてたのだぁぁぁ!」
「よっ、寄らないでください!ひぃぃぃ!口からも血がぁっ!」
「わぁぁ、結婚もしてないのに・・・!あ、赤ちゃん出来てたらどうしようなのだっ!あわわわ・・・」
・・・ソフィアス様のテンパリ具合を見る限りは、わざとでは無さそうですけど、私の前世を含めてのファーストキス・・・だったのに
こ ん な と こ で ! ?
いや、場所を変えれば良いって問題でもないですが!
「大丈夫です。もし赤ちゃんが出来てても責任は取ってもらわなくて結構ですからっ!」
「リリーシュカぁぁぁぁぁ!!私に責任取らせてくれなのだぁぁ」
「やですよ。そんなの私の何の得にもなりませんもの」
「そんなぁぁ。リリーシュカっ」
「ついてこないでください(ニコッ)」
「うわぁぁ!目が笑ってないのだっ!・・・どうしたらいいのだぁ?」
悩め!悩むがいいです。
「じゃぁ、ソフィアス様。私先に帰ってますから、ごきげんよう☆」
「あ、リリーシュカ!待っ・・・」
「とりあえずヒールはしといてあげます。頭冷やしてくださいね?(ニコッ)」
そう言って私はソフィアス様にヒールをかけた後、猛ダッシュでサラマッティに戻りました。
「あっ!アニキィィィ!!おーいおいおいおい(号泣)」
「リリー!良かったぁ!無事で!まぁ、攻撃は出来やしないけど、死にもしないからアレだけどね」
「お嬢ちゃんすまんのぉ!ワシら勝手な事ばかり言っとったのぉ」
「その、悪かったよ。俺、アイツに全部話そうと思う」
皆さん、私が勝手に出て行ったのに私をちゃんと待っていてくれました。
「あら?坊やは?」
「あ、後から来ますよ」
「そう?会えたなら良かった。あの後坊やが、「いい大人達が揃いも揃って間違った事を肯定にするな!!」って怒ってね。そのままえらい剣幕でアンタを追いかけていったのよ。アンタの足に追いつける訳無いのにねぇ」
ソフィアス様・・・。ふ、ふん!知りません!
「そうじゃ。ワシらがまちがっちょったわい。そもそも、みぃんな間違った身体なんじゃもんなぁ」
「俺がキリエちゃんに身体を返せば丸く収まるんだよな。ごめんな、俺が我儘言っちまって」
「皆さん・・・。私こそ、ごめんなさい!私、今まで私と・・・皆さんに関わった人達の事蔑ろにするとこでした」
私は心から頭を下げて謝りました。
「リリー・・・?」
「一人になって、アイテムボックスの大切な物カテゴリーに入っている出会った人達から貰った物を見て、あぁ、入れ替わるって事はこの人達との関係も無かった事になっちゃうんだなって思ったら、お兄さんの気持ちが分かりました。皆さんにもそんな人達が居るんですよね」
「キリエちゃん・・・」
「それに、皆さんが悪い訳じゃなくて、悪いのは全て天界・・・いや、アニーですからね」
「・・・キリエちゃん、アイツをここに呼んでもいいかな?俺やっぱり全て話すよ」
「お兄さん・・・。お兄さんが決めたなら反対はしません」
「じゃぁ、通信するよ」
皆さん色々と思うところはあると思います。
でも、間違った身体で過ごした日々は決して無駄では無かったのだと今では思うのです。
今世が駄目なら来世こそは好きな事やりましょう。
次、死んだら天界にはそれこそVIP待遇してもらわなくちゃですね・・・。私今生の事は死んでも忘れませんから・・・。
私に静かな、そして熱い闘志がみなぎってきました。
お兄さんが奥さんに連絡してから数分で、奥さんがVIPルームに到着しました。
「ダーリン、何この部屋!凄いねぇ!」
「アミナ、お前に話があるんだ」
「え?なになに?ダーリンてば、そんな真面目な顔しちゃって」
「あのな、かくかくしかじか・・・」
お兄さんが事の成り行きの説明をしました。
「つまり、ダーリンは本当はあっちのオネェの姿なのね?」
「あぁ。だから、俺達はこの人達にお礼と謝罪をしなければならないんだよ」
「そっかぁ!キリエさん?ダーリンをこの姿のままで居させてくれてありがとうございます。そして、キリエさんの人生を奪ってしまってごめんなさい!皆さんも、迷惑かけてごめんなさい!ありがとうございました!」
アミナという女の子は私と年はあまり変わらない様に見えますが、私ですら人に説明されてもすんなりとは信じがたい事を、あっさりと信じて素直に私と皆さんにお礼と謝罪の言葉を述べました。
うぅ、この人がもっと頭がアッパラパーでビッチ(失言)な感じでしたらもっとこう、スッキリ出来たのに、普通に良い子です。
くっ、なんでしょう。この戦う前から負けていたという事実は。
「いえ、コレカラモオシアワセニ」
あ、ちょっとモヤモヤした黒い感情が出ちゃいました。
おじいさんはこれからも姐さんとして、カジノを荒らしながら楽しく暮らして行く事でしょう。
お兄さんは、器用さの加護を受けていて、技と知識のステも良かったとの事でここサラマッティで武器職人として小さな店を開いてるとの事です。
天よ・・・何故人を持つものと持たざる者に分け給うた・・・?
アカン・・・ちょっと涙出そうになったわ。
私のステ、なんか悪意あるもんなぁ・・・。
「ジェシーはどうします?もう本体探しはしなくて良くなりましたが」
「あら、アタシは冒険者だしアンタと一緒に行くわよ。アンタの非力さを補ってあげるのはアタシしか居ないじゃない」
「ジェシーぃぃ!!」
「こうなったらアタシらはこの世界の最強パーティーでも目指しましょうよ」
「いいですね!魔王とか倒しに行きます?」
「それはさすがに無理じゃない?」
「って、おい!諦め早いですよ!」
「「「「「プッ!アハハハハハ!」」」」」
皆の連絡先を通信ツールに登録し合ってお開きにする事にしました。
「あ、これ。俺がこっちに来た時に握ってたやつなんだけど、多分俺には必要ない物だと思うから、キリエちゃんが持ってて」
そう言って、お兄さんが私にくれたのは私がこの世界に来た時に握っていた指輪と色違いの指輪でした。お兄さんのは太陽部分が黄色い宝石です。
「おぉ!それならワシも持っておるよ、ホレ。ジィジのもお嬢ちゃんにやろうかの」
おじいさんの宝石は紫でした。
「あっ、アタシもそれ持ってるわよ!はい、これもリリーが持ってて」
ジェシーまで。ジェシーのはピンクの宝石でした。
この指輪は、この世界に来た時にそれぞれ皆握りしめていた物だったんですね。
「これ、皆さんの大切なものではないのですか?」
「そうねぇ」「そうだったみたいだ」「そうじゃのぉ」
何か意味がある物かもしれないのに。
「「「だからこそ(リリー)(キリエちゃん)(お嬢ちゃん)に大切な物を持っていてもらいたい(のよ)(んだ)(のじゃ)」」」
「皆さん・・・」
「さ、アタシらはこの街の冒険者ギルドに行って明日からの計画でも立てましょうか」
「ワシもぼちぼち帰らんとな。今はこの隣のタワーマンションの最上階にすんでるんじゃ」
「えっ?あのおじ様とお知り合いなんですか?」
「なんじゃ。知っとるのかの?あやつはワシに一目惚れしよって、ワシとの勝負に負けてからワシの言いなりじゃぞ」
「へ、へぇぇ。おじいさん流石ですね」
人生を謳歌する事に関してのエキスパートです。資金に困る事があったらおじいさんとこに来ようっと。パスポートを使わなくても大丈夫そうです!
・・・何かを忘れてる様な気がしますが、大したものではなさそうなので、このまま忘れときます。
この回で第1章は完結となります。
ここまでお読み頂きまして心からお礼申し上げます。
引き続き第2章もお楽しみ頂けましたら幸いです。