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リリーシュカの気持ち

あー・・・、どんなにへこんでいてもお腹は空くもんなんですね。

私はアイテムボックスからクッキーを取り出して食べました。


ポリッポリッ・・・


こんな時でも美味しいものは美味しいです。こうなったらヤケ食いでもしましょうか!


私は再びアイテムボックスを開き物色を始めました。

ふと、大事なもの一覧が目に付いたので開いて見た所、転生したばかりの時に握り締めていた指輪が目に入りました。


これ・・・、お兄さんのだと思ってたけど。最初は透き通った緑でしたが、今は濃い緑になっています。

戻ったら聞いてみましょうか・・・。って戻る気あるんかーい!!ってセルフツッコミです。


他には・・・パスポートに、ラブリーちゃんのクマさん、リンダさんとお揃いのバレッタ、宿の皆さんから貰ったもの。

ふふ、誰です、ビールの王冠くれた人は。ガラクタなのに、大事なものカテゴリーに入っちゃったじゃないですか・・・----------っ。


そして、呪われたソフィアス様人形。ん?ソフィアス様の左手に小さな小さな青色した指輪が嵌められています。・・・気付かなかった。あれ?私が握りしめていた指輪と色違いかな?


『リリーシュカ』


わっ!ビックリした!えっ!?この人形喋るんですか!!?


『リリーシュカ』『リリーシュカ』


あ、手の平がセンサーになっているのですね。手をプニプニ触ると喋ります。そういや、リリーちゃんと手を繋げる無駄な技術が使われてたっけ、この人形。

・・・という事は、リリーちゃんと手を繋ぐとお互いの名前を呼び合う仕様!!?

ひっぃぃぃ!病んでるっ!病んでますよっ!


「リリーシュカ!!!」


もう、いいですって。

って・・・うわっ!今、手を触ってないのに喋りましたよ!!

まさか・・・この世の者ならざる何かっ!?


「リリーシュカッ!!」


あれ、ヤケにハッキリと聞こえますね。

顔を上げると、目の前に夕日を背にしたズタボロのソフィアス様が居ました。

ほっ、本物だっ!


「よかっ・・・たのだっ。無事で・・・っ」


ふにゃっと微笑みながらも、ゼェ、ハァと息が乱れています。


「ソフィアス様、何故ここが・・・!?」

「リリーちゃんが教えてくれたのだ!」

「・・・・・・は?」

「リリーちゃんはソフィアス人形とリンクしていて、探索機能がついているのだ。ほら、ここ」

「ん?」

「リリーちゃんの目が探知機になっていて、リリーちゃんを壁・・・ここには建物が無いから、この岩の側面に向けて・・・と」

「うわっ!!地図が!!」


地面からせり出している大きな岩の側面に地図が表示されました。

サラマッティから少し離れたとこに赤い点と青い点が記されています。ここが現在地なのでしょう。

いや、これまた無駄な機能が・・・。


チラッとソフィアス様を見ると、木に引っ掛けたのか服はアチコチやぶれ、顔も擦り傷だらけです。


「皆心配してるのだ。帰ろう?」

「私、帰りませんからっ!」

「リリーシュカ・・・(どうしよう。むくれてるリリーシュカも可愛いのだ)」

「どうせ、ソフィアス様だって私が元に戻らない方がいいんでしょ!良かったですね!思い通りになって!!」


嫌だ・・・。こんな事言いたいわけじゃないのに。完全な八つ当たりです。


「リリーシュカ。・・・確かに私はリリーシュカが今の姿のままで居てくれる方が嬉しいのだ」

「ほらっ・・・」

「でもっ!!それはリリーシュカを泣かせてまで叶える事じゃないのだ!!」

「え?何言ってるんですか?私泣いてなんか・・・あっ」


私、泣いてました。

泣いてる事に気付いたら後から後から涙が出てきて止まりません・・・。


「ふぇっ・・・」

「リリーシュカ・・・。大丈夫、大丈夫なのだ」


ソフィアス様がおずおずと戸惑いながら私を抱き締めました。

背中をさすり、頭を撫でてくれます。

ソフィアス様が暖かくて、不覚にも抵抗出来ないじゃないですかぁっ!


「うわぁぁぁぁぁぁん!!」

「ヨシヨシ、なのだ」

「私、異世界に来たら絶対絶対剣士になりたかったぁ!」

「うん」

「でもこの世界じゃ無理なんですぅぅぅ!」

「うん」

「私の本体がみつかっても、本体に戻れない時はお嫁に貰ってもらおうとおもってたのにぃぃぃ!」

「う・・・、それはちょっと嫌なのだ」

「この世界は何から何まで私を否定するんですよ!」

「それは、違うのだ」

「え?」

「私はリリーシュカを否定しない」


ソフィアス様の口調が強くなりました。


「例えこの世界がリリーシュカを否定しても、私は決してリリーシュカを否定しない」

「何言ってるんですか?それじゃぁ甘やかしてばかりじゃないですかっ」

「おかしいのだ。否定する事が甘やかさない事だと言うのなら、肯定してほしいリリーシュカは甘やかしてほしいって思ってるって事じゃないか」


自分でも矛盾してるって分かっています。


「リリーシュカは私が甘やかしても、決して道を間違えたりしないのだ」

「そ、そんなのわからないじゃないですか!!ソフィアス様もロバートもこちらにとってはいつでも人質に出来るんですからね!私いつ裏切るかわかんないですよ?」

「リリーシュカは、そんな事しない」

「なんで、そんな事言えるんですか??」

「そんな事出来るなら、今こうして皆の事を思って泣いたりしないのだ。自分のやりたい事が、出来なくて泣いてるんじゃなくて、自分が元に戻りたいって思う事が皆の迷惑になると思って泣いているのだ」


自分自身、どうしたらいいかぐちゃぐちゃで思考が低下してて、自分のしたい事も、自分の気持ちも分からなかったのに、どうしてこの人はこうも的確に私の事を語れるんだろう・・・。

・・・悔しいですが、この人には敵わないかもって思ってしまいました。

本当は分かってたんです。この姿だったからこそ、出会えた人達が居るんだって事も。


「私、帰ります。その前に・・・。もう、ソフィアス様は顔だけが取り柄なのにこんなに擦り傷だらけにしちゃって」


私はソフィアス様の顔を両手で押さえて覗き込みました。


「リっ!?リリーシュカ!」


ふふ、至近距離で焦っています。なんかソフィアス様に慰められたのが悔しかったのでちょっとした意地悪です。


「ヒー・・・ルっ!?」


嘘・・・でしょう?

ソフィアス様の唇が思い切り私の唇を塞いでいます。

まさか、ちょっとした意地悪が、ソフィアス様にキスをされるという事件に発展するとは思っても見ませんでした。

結婚まではキスもしないとか言ってませんでしたか・・・?なので、完璧に油断しきっていました。



「・・・何してんですかっ?」


バッチーーーーーン



夕暮れに染まる、道を少しそれた岩場に衝撃音が響き渡りました。

今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)

第1章は次話で完結となります。第2章も引き続き宜しくお願いします!

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