4人揃いました
私は急いで席を立って、カジノホールへと向かいました。
白銀の髪なのですぐにわかりました。
「お兄さん!ちょっと待ってください!!」
「ん?誰?アンタ」
振り返った男性は、白銀の短髪のイケメン・・・間違いなく私の本体でした。
「あ、あのっ!身体のことでお話があります!ちょっとVIPルームまで来てもらってもいいですか?」
「ちょっとぉ、ダーリン?誰この女ぁ?」
「いや、知らない人」
お兄さんの隣からひょこっと出てきたのは先程見掛けたツインテールの女の子です。ちょっと!だ、ダーリンって何ですかね!?
「もう!リリーったら。いきなり走り出してどうしたのよ?」
ジェシーが私を追いかけて来てくれました。
「あっ!!」
ジェシーを見るなり軽く驚きの声を上げたお兄さん。お兄さんも本体との再会です。
「ジェシー!確保お願いします」
「え?よくわからないけどわかったわ」
ジェシーがお兄さんを羽交い締めにしました。
今にも逃げ出しそうだったので先手を打たせてもらいましたよ。私はかけっこには負けませんが力負けして引きずられてしまう事間違いないですからね!
「な、離せ!」
「いいえ。ちょっと話を聞かせてもらうわよ」
「ちょっと!ダーリンをどこに連れてくのよっ!」
「アナタも来てもらって構いませんが、お兄さんはそれでいいですか?」
「ハァーっ。コイツには何も話してないから俺だけ行く。アミナ、適当にそこら辺で遊んでな」
「えぇ〜〜!!アミナだけ仲間はずれなのぉ?」
「悪い!後で埋め合わせするから」
「わかったわよ。お家に帰ったら離さないからねっ」
おい。なんだ?この親密な会話は。とても嫌な予感しかしないです。
お兄さんを連れて再びVIPルームへ来ました。
お兄さんは、ブスっとした顔で席に座りました。
「・・・まさか今更この身体返せってんじゃないよな?」
いきなり確信です。『今更』と言う事は元に戻りたくないって事ですよね。
「とりあえず、お兄さん。ここの4人はあの時の4人です。天界の不手際で全員バラバラの間違った身体に、魂が入ってしまいました。私は伊勢谷キリエです。こちらのお姐さんがおじいさんで、こちらは・・・お兄さんの本体にはノブ代さんが入っています」
「えっ?間違っていたのは俺だけじゃなかったんだ!」
「そうです。で、全員が全員、本体に戻りたいと天界に申請しなければ元に戻れないんです。だから、こうしてお集まり頂いた訳で・・・」
「ちょーっと待った!俺はこの世界に1年も前に来たんだ。最初は戸惑いもしたが、ようやくこの姿で生きていこうと決めた所だし、何より俺、さっきのヤツと 結 婚 し て る んだ」
え?ちょーっと待ったはこちらのセリフですけどー!!?
全員( ゜д゜ )こんな顔になっています。
「ち、ちょっと!困ります!それは私の身体です!!」
「こっちだって今更困るぜ!前世では女に振られ、ヤケになって荒れた生活で会社もクビになって、酒の飲み過ぎで体壊して死んで。こっちの世界に来たら来たで、身体違うし。もうどうでも良くなってまたこっちでも荒れて。そんな時にアイツと出会って・・・俺、今すげぇ幸せなんだよ・・・」
そう言って、お兄さんは頭を抱えたまま黙ってしまいました。
いやいや、私の理想の男性の姿で荒れた生活とか結婚とか結婚とか結婚とか・・・。私の本体の返還をごねる様でしたら責任とって結婚してもらおうって計画も何もかもパーじゃないですか。・・・やめてくださいよ。私、自我が保てるかどうか正直ヤヴァイですよ・・・。
「り、リリー・・・って呼んでもいいのかアレだけど、あのさ、アタシは別にこのままでも良いわよ。力持ちなアタシ、嫌いじゃないもの。それに・・・どう見ても皆、今の姿に馴染んじゃってるじゃない」
「そ、そうじゃ。ワシはちょっと思ってたよりも年齢は上になったが、美人のおなごになって賭けでは負けなしのモッテモテな生活楽しんでるしの」
「・・・皆・・・皆勝手です!!私の気持ちはどうなるんですか!?私一人だけ悪者みたいじゃないですか!本体に戻りたいって思うのは間違ってますか!?」
「あっ!リリー!?」
私はいたたまれなくなってしまい、外へと飛び出してしまいました。
どこか・・・どこか、遠くへ。今は一人きりになりたい。
はっ!?ひとしきり走ったら街を出て全く知らないとこに来てしまいました。
ジェシーからの、通信がひっきりなしに来ています。ごめんなさい。通信オフにします。
私は適当な岩場に膝を抱えて座りました。
はぁ〜。これからどうしましょうか。
転生したら何もかもうまく行くもんだと思ってました。
初っ端から躓いていて、本体に戻る事を目標にここまで来ましたが、その目標ももはや達成不可能で。
剣士にもなれない、力が無いから剣士以外でも戦闘系はまず無理。やりたい事も出来ない私は何の為に生きていればいいんでしょうね・・・。
そもそも、なんですか!皆大人ぶっちゃって!物分りがいいのが大人ですか!?
・・・・・・私だって大人になりたかったですよ。
今回もお読み下さり、ありがとうございました\( *´ω`* )/