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ソフィアスの大切な物

 ロバートの話を聞いてる間ずっとソフィアス様は二段ベッドの上段から降りてきませんでした。


「おーい、ソフィアス様〜?大丈夫ですか?」

「・・・・・・」


無反応。

あれ、ソフィアス様がこんなになるのは珍しいですね。


 私は二段ベッドの下段からハシゴを登って様子を見に行ってみました。確かに、毛布に包まったまま嗚咽が聞こえてきます。


「ソフィアス様?毛布めくってもいいですか?」

「・・・ダメ・・・なのだ・・・グスッ」

「いやいや、このままだと出発出来ないですし、タマタンの追手が来ないとは言えませんからね。置いてっちゃいますよ〜?」

「・・・いいっ・・・のだっ!リリーシュカにっ・・・会わせるっ顔がっ・・・ないっの・・・だっ」


 泣きグセがついて、喋るのも大変そうです。


「私は全然気にしてませんから、昨日の事も覚えてないですもん」

「・・・う、そ、なっのだぁぁ」

「嘘じゃないですって、ほら・・・」


本当はバッチリとトラウマレヴェルの記憶があるのですがいつまでも引きずる訳にはいきません。

私は無理矢理毛布を引っ張りましたが、所詮女の力・・・いや、所詮力のステ13の力。見事に引っ張り返されました。

ただ、予想以上にソフィアス様の力が強く、引っ張られた反動で私は、毛布にくるまったソフィアス様の上に乗っかってしまいました。


「わぁぁ、ソフィアス様すみません!すぐどきますからっ」


もぞもぞと起き上がろうとしましたが、上手くバランスが取れません。うわー、重たいだろうなぁ!すんません、ほんっとすんません!


「り、リリーシュカッ、大丈夫っか?どこかっぶ、ぶつっぷつけてないか?」


ソフィアス様が毛布を捲って、私ごと起き上がりました。

私ごと毛布を捲ったので、今度は逆に私が毛布に包まった状態になってしまいました。顔だけだしたミイラ状態です。


「あ・・・、大丈夫です。どこも打ってませんよ」

「あ、安心っした、のだっ」


ソフィアス様の顔は泣き過ぎてパンパンになっていました。そして、その顔をふにゃぁっと綻ばせて私の無事を知って微笑んだのです。


「もー!こんなに顔パンパンにして!目も、充血して真っ赤ですよ。ヒールかけますから、もう泣いちゃ駄目ですよ?」


私は毛布の隙間からなんとか手を出してソフィアス様の顔に手の平を向けました。


「リリーシュカ・・・」

「ヒール!・・・うん、もう大丈夫ですね。元の綺麗な顔に戻りましたよ」

「リリーシュカ・・・すまないのだ」

「何故、謝るんですか?」


ソフィアス様は泣きすらしていませんが、滅茶苦茶ヘコんだ顔をしています。


「リリーシュカに変なものを見せてしまったのだ・・・」

「だから、私は昨日の事は覚えてませんて。さ、元気を出して先を急ぎましょう?」

「・・・・・・わかったのだ」


さて、いい加減ソフィアス様から降りないと。そう思ってソフィアス様から離れようともぞもぞと身をよじらせた瞬間、思い切りぎゅっと抱き締められてしまいました。


「そ、ソフィアス様っ!?」

「ごめんなのだ。ちょっとだけでいいから、ほんの少しだけこうさせて・・・ほしいのだ」


ソフィアス様・・・。

普段は何事にもポジティブ過ぎるくらいポジティブなのに、弱々しい声をしています。泣きじゃくったり、世間知らずで年上なのに、全然年上っぽくなくて。

・・・でも、私を抱きしめてる腕が、胸が逞しくて、凄くビックリしました。

 なんだかんだ言って、ソフィアス様もちゃんと殿方だったんですね。

 あ、れ・・・。よくよく考えたら、私男の人に抱きしめられた事も無かったです。


わぁぁ!!


意識した途端、心臓が物凄い勢いで脈を打っています。

え、ソフィアス様にドキドキするとか、ありえませんよ!だって、あのソフィアス様ですよ!?


私はソフィアス様と出会ってから今までの記憶を振り返りました。


・・・・・・・・・・・・うん。やっぱ無いです。

正気に戻った私は、ソフィアス様に切り出した。


「はい!もういいですか?急がなくては!」

「うん。ありがとなのだ」


お供の黒子が居なくなってから、心細く、そして不安もあったんでしょうね。まぁ、私は監視の目から逃れられて良かったですけど。


「リリーシュカ!」

「はい?なんでしょうか?」

「私はリリーシュカに情けない姿ばかり見せてしまっているのだ。私は必ず強い男になるから、見てて欲しいのだ」


いつもなら聞き流したり拒否したりしていますが、あんな事があったばかりですし、今日くらいは素直に応援してあげてもいいです。


「頑張ってくださいね」

「リリーシュカが優しいのだ〜」

「私だって鬼じゃないんですから!さっ、支度してください」

「リリーシュカ、大好きなのだ(私はこの命よりも大切な娘の為に出来る事は何でもすると、誓うのだ)」

「恥ずかしいですよ!!」


この時にソフィアス様は何か固い決意をしたのだと、後々になってからソフィアス様の取った行動で知るのでした。


「アニキ、あの金髪の兄ちゃん大丈夫ですかね?」

「大丈夫ですよ。だって、ポジティブなのがソフィアス様の取り柄ですもの。ロバートの作ったキノコスープ飲んだらきっと元気が出ますよ」


ソフィアス様もキノコがトラウマになっていたみたいで、ローバートとキノコスープを見て怖がり、危うく先程の毛布ぐるぐるに戻りそうでしたが、頑張って己の精神と格闘して乗り越えようとしていました。



さて、山登りの続きです。キノコ1匹増えた私のパーティーですが、これからどんな困難が待ち受けているのでしょうか。(困難あるの前提)

今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)

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