赤ちゃんの作り方知ってる?
ニーヴェン様と有意義な時間を過ごし、ジェシーと二人、再び馬車酔いする覚悟を決めてげんなりしながら馬車に乗り込もうとした時に、ニーヴェン様がてててっと私の所に来て、こんな事を言いました。
「僕、リリーシュカお姉様が本当のお姉様になったらいいのになぁって思ってます」
「うーん、でも私ファレル様とまだお会いした事がないですからねぇ」
「いえ、あの、その・・・」
ニーヴェン様が私とソフィアス様を交互に見てもじもじしています。いえ、言いたい事はわかってはいるんですけどね。わざともう一人の兄の方を言ってみました。
「あの・・・ソフィアス兄様は不器用なんです。いつもガンガン押すばかりで一旦引いてみるとか、そういう大人の駆け引きが出来ないというか・・・。で、でもっ、リリーシュカお姉様の事本当に大好きみたいなのでソフィアス兄様とリリーシュカお姉様が結ばれたらいいな、と・・・。・・・でもリリーシュカお姉様のお気持ちが一番大切ですよね!ごめんなさい。わがまま言ってしまいました!兄様の事、宜しくお願いしますね!あ、そうだ!これ、気休め程度かもしれませんが飲むと酔いにくくなりますので、どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
ニーヴェン様は私に小さな包み紙を数個くださいました。酔い止めの薬みたいです。
そしてペコリと可愛いお辞儀をして豪華な馬車へと乗り込んでいきました。
ニーヴェン様・・・なんて兄思いの、そして気の利くいい子なんでしょう。でも、ごめんなさい。私この後、お兄さんとおじいさんを見つけたら 男 の 人 になる予定ですので・・・。どうしてもといいましたら、中身お兄さんかおじいさんのリリーシュカにお願いしてみてくださいね。
ニーヴェン様に頂いた薬をジェシーと二人で飲みました所、気休めどころか全然酔わなくなりました!
まだありますので、何回かは乗り物酔いは大丈夫そうです。
「驚いたわぁ、ニーヴェンちゃんに会うまでのあの馬車酔いはなんだったのってくらい意識がハッキリしているわ」
「本当、この薬効きますね。いやー、快適快適♪景色を見る余裕まで出てきましたよ!」
「・・・こんな事なら意地を張らずに薬持ってくれば良かったのだ。リリーシュカが居るから大丈夫とかリリーシュカに頼る事しか考えていなかったのだ。私はリリーシュカに何かあったらの事まで考えていなかったのだ・・・シクシク」
「あら、坊や。そんな事気にしても今更しょうがないじゃない。人はね、こういう事を積み重ねて大人になっていくものよ。それに坊やの周りを取り巻く環境だって一般とは違って特殊なものだしね」
さすが、前世では早世なほうだとはいえ、人生の半分は生きた人の言葉は重みがありますね。
「でも、ファレルとニーヴェンだって私と同じ環境で育っているのにしっかりしているのだ・・・」
「それはしょうがないわよ。先天的に授かった個性なんだから。そういう事を誰からも教えてもらえなくてもサラリと出来ちゃう人も居るの」
「うぅ・・・。私のいい所はどこなのだ?」
「えっ?ええと・・・あの山を越えた辺りにあるんじゃないかしら?」
「ほっ本当か!?」
一気に言葉が軽くなりました。思いつかなかったからってそれはさすがに無いでしょう。
「・・・ソフィアス様のいい所は、前向きな所じゃないですか?」
「リリーシュカ?わ、私にもいい所あったのか?」
「ええ、まぁ。その前向きな思考は尊敬に値しますけど」
「じゃ、じゃぁ結婚・・・」「し・ま・せ・ん」
「結婚結婚っていうけど、そもそも坊やは赤ちゃんの作り方知ってるの?」
「それくらいちゃんと知っているのだ!!・・・好きな人同士が結婚した後に、向かい合って、両手を繋いで、キスをして、一緒のベッドで寝たら出来るのだ!!(ドヤッ)あ、でも相手が今日は嫌よ、とか今日はダメよって言ったらしちゃいけないのだ。無理矢理は絶対ダメって教わったのだ。・・・あぁ、もう恥ずかしいのだ!!///」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(え、まじで?)」」
「・・・良かった。旅の道中の私の貞操の危機は無くなりました」
「そ、そうね。とっても安全ね」
「あぁ〜〜、私も早くリリーシュカとの赤ちゃん欲しいのだ~」
「結婚しないと作れないわねぇ。それより人前でそういう事言うのやめた方がいいわよ。はしたないわ。リリーの好みの大人な男性になるんでしょう?」
「わかったのだ!!大人の男は、人前で赤ちゃんの話をしない・・・と」
「なにしてんの?」
「忘れない様にメモを取っているのだ!もう私の代わりに覚えててくれる者が居ないからな!」
「・・・自立への第一歩ってとこかしらね。君の〜ゆく〜道は〜果てし〜なく遠い〜♪・・・って、果てしなさ過ぎて思わず歌っちゃったわよ」
とりあえず、ぼんやりとした性教育しか受けていないみたいで、現在結婚していない以上、キスすら仕掛けてこなさそうなのが救いです。
もしかしたら、ニーヴェン様のがソフィアス様より精神的にも大人なんじゃないでしょうか。
ふと、窓の外を見ると山の山麓が見えてきました。ようやく馬車を降りれます。
初めての馬車の旅は馬車酔いするし、馬車の車輪が小石を踏む度に馬車が跳ねるので、お尻をぶつけて地味に痛かったしでやっぱりイメージと実際に経験するのとでは全然違う事がわかりました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました(^^)