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タンゴ・マ・タンゴ!

 ソフィアス様が私から剥がした物は大体ドラ○もん位あるそれはそれは大きな、顔のついたキノコでした。


「ちょっと!離しなさいよっ!」

「ひぃっ!しゃべるキノコっ!」

「悪い?キノコが喋ってなんか問題でもあんの?この下等生物(人間)ふぜいがっ!」

「口が悪い!」

「それより、アンタ達いい所に来たわね!私のダーリンがそこの岩に挟まれちゃってんだけど、さっさと助けなさいよね!」

「・・・お前を助ける義理は無いってんですよ」

「は?」

「ものには頼み方ってもんがあるでしょうが!!・・・土下座。土下座したら助けてやらなくも無いですけど?」

「くっ!下等生物めがっ・・・!」

「ちょっと、リリー!おやめなさいよ。このキノコもしかしたらクエストのキノコかもしれないわよ?」

「はっ!?ごめんごめん。恐怖の対象がたかがキノコだった恥ずかしさと、コイツの小生意気な喋り方についキレてしまいました!」

「もう、気を付けて頂戴よ(・・・一番キレさせたら危ないのは間違いなくこの娘ね)」


さっきのうめき声の主がコイツのダーリンだったのでしょうか?だとしたら、コイツ含めて2体・・・。


「ソフィアス様見てきてください」

「リリー・・・(なんの躊躇いもなく王子を手下の様に扱う・・・恐ろしい子!!)」

「わかったのだ」

「坊やも・・・(そして飼い主の言う事は絶対な王子・・・歪んでるわね)」


ソフィアス様が洞窟入り口から少し進んだ先程のうめき声のする方に向かいました。

いとも容易くヒョイッと岩を持ち上げると、岩の下から何かが勢い良くこちらに移動してきました。


「ダーリンっ!」

「ジョセフィーヌ!!」


え、コイツ、ジョセフィーヌって大層な名前なの?そして二人・・・うーんと、2体?で熱い包容を交しています。キノコきめぇ・・・。


「あの・・・、お忙しい所失礼しますが。私達雨の日にしか、生えないキノコを探しに来たのですが、ご存知ありませんか?」

「ちぃぃっ!ちょっとは空気読みなさいよね!!」


イラッ


「ちょっとコイツ焼きキノコにしてもイイですか・・・?まずはお礼じゃねぇんですかねぇ??」

「リリー!お口と柄が悪くなってるわよ!」


人って、ロクな人と出会わなければ心が荒んでいく一方ですよ。キノコにまでバカにされちゃぁ、キレるっしょ。


「はっ!これは失礼!親切な方々、助けてくれてありがとう」

「ダーリン!人間なんかにお礼言うことないわよ!むぐぅっ!!!」


いちいちイライラするのでついウッカリ雌キノコの口に苔を押し込みました。雌キノコはもんどりを打って悶ています。


「ジョセフィーヌっ!!あなた、何をするんですか・・・っはっ!!」

「お前の女、ちったぁ黙らせろや?なぁ?」

「りっリリーシュカ!?その顔は是非私だけに向けてくれないか?」

「・・・惚れた」

「あ?」

「貴女のその強く可憐な振る舞いに惚れた!レディ、私とお付き合いしてくれないだろうか?」

「貴様っ!リリーシュカは私のフィアンセなのだ!!」

「レディ。こんな男より私の方が確実にレディを幸せにする自信あります!」


えー・・・意味不明な展開〜。今までの、ただひたすら雌キノコに凄んでる私を見て、何故可憐って言葉が出るんでしょうかー?キノコに幸せにしてもらうとか何その罰ゲーム。そしてソフィアス様まで何言ってるんでしょうかー?恋人になった事すら無いのに、何故フィアンセまですっ飛ばしちゃったんでしょうかー?まじで、自分が知らない内にソフィアス様の私の立ち位置がステップアップしてるのがKO・WA・I!!


「あの、私ソフィアス様の婚約者じゃないですし、キノコとお付き合いする気もありません」

「種族を越えた愛・・・燃えるだろ?」


いやー、このキノコも話聞くタイプじゃないですね。この世界、まともな思考能力の人少ないんですかね?あ、コイツらは人じゃなくてキノコでしたね。


「げぇーっほ、げほげほ。うぅ・・・何すんのよ小娘ぇ!」

「黙るんだジョセフィーヌ!!俺はこれからコイツと旅に出る。お前は里に帰れ」


えぇー。雄キノコ、めっちゃキメ顔でこっち見てるんですけどー?もしかして“コイツ”って私の事ですかい?こっちも知らん間に関係ステップアップってかい?もうさー、キャラ被りは要らん訳ですよ。ソフィアス様一人ですら持て余してんのに、訳分からんキノコまで面倒見たくないっちゅーの。


「いやよ!ダーリン!ずっと一緒に居るって言ったじゃない!」

「ジョセフィーヌ・・・すまないな。俺は真実の愛を知ってしまったんだ」

「ダーリン・・・。わかった。ダーリンの幸せが私の幸せ・・・。小娘っ!ダーリンを不幸にしたら許さないんだからっ!」


雌キノコはそう言うと泣きながら(鳴きながら?)洞窟の奥へとダッシュして行きました。


「あっ、ちょっ!!」


なんか色々ツッコミどころ満載なんで、どっからツッコんだらいいかわかんないんですけどー。なんであんなに諦めがいいんだ?もっと頑張れよー!もっと食い下がれよー?雄キノコ置いてかれても困るんですけど。


「・・・ジョセフィーヌ。いい男に出逢い、幸せにしてもらうんだ・・・」


なんだこの雄キノコ。自分自身に酔ってる感がキモいです。


「リリー・・・アンタだめんずホイホイなんじゃ・・・」

「ジェシー。言わないで(泣)あの、キノコ。あなたは何のキノコなんです?」

「私に興味が沸いたのかい?レディ?私の名はマシュー。私とジョセフィーヌは気高きタンゴ・マ・タンゴって種類のキノコさ。晴れてる日は里から出ないけど、今日みたいなロマンティックな雨の日は雨音に誘われてランデヴーするのさ」

「こいつだーーーーー!!!」


やっぱりコイツらです!雨の日にしか生えないってか出現しないキノコ!動くどころか喋るし、思考能力まであります。気高いかどうかは知らんけど。


「ソフィアス様はさっきの雌キノコ連れてきてー!ジェシーはこの雄キノコを網で捕獲して!」

「了解!」

「わかったのだ!待っててくれなのだ!!」


ジェシーが素早く網でマシューと名乗る雄キノコを捕獲。ソフィアス様は洞窟の奥へとダッシュして行きました。


「な、何をするんだ?」


うごうごとうごめくキノコ。気持ち悪いです。


「ちょっと大人しくしててもらいますよ」


よし、雄キノコ1匹ゲットだぜ!!


「おーい!リリーシュカー!キノコ捕まえたのだ〜!!」

「ソフィアス様、お帰りなさい。ってなんかちんまいのが増えてる!!」


ソフィアス様の網に入っている、先程の口の悪い雌キノコがちっちゃなキノコを抱いています。


「さっき産まれたのだ」

「へ!?産ま・・・?」


その言葉にマシューがピクッと反応しました。


「ジョセフィーヌ、まさかその子は・・・」

「・・・ダーリンの子よ。私一人で育てようと思ってたのに見つかっちゃった」

「あぁ、ジョセフィーヌ。私が悪かった!責任・・・取るよ。結婚しよう!」

「ダーリンっ!!」

「そういう事なので、レディ・・・済まないが先程の話は無かったことにしておくれ・・・。さよなら私の愛しいレディ・・・。」

「あぁ、はい。いっすよ。永遠にお幸せに」


私はこの世界に来てから1番いい笑顔で、ジェシーとソフィアス様に 連 行 し ろ っていう口パクとジェスチャーをしました。




大人キノコ2匹こどもキノコ1匹。合計3匹。速やかにギルドに引き渡しました。

今回は少し長くなってしまいました。きっとキノコの呪いでしょう・・・。今回も読んで下さり、ありがとうございました(^^)

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