ばぁやの愛情
あ、あれ?なんかこの飲み物惚れ薬入ってないです?だって変です。ソフィアス様が格好良く見えるなんて・・・。
「やだ、この子いつの間に着替えたの?」
「えっ?」
ふと見ると、ソフィアス様に抱かれたリリーちゃん(お人形さん)の服が、少しも違わず今現在の私のかっちょいいトレジャーハンター風の服とお揃いになっていたのだった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?何、何なの?いつの間に?ホラー?ホラーなの!?髪の毛が伸びる人形みたいに勝手に着替えるの?その子っ!!!?」
「いや・・・その。ばぁやに作ってもらったのだ」
えっ!?ばぁやさんなんてどこに居たんです?っていうか、リリーちゃん(お人形さん)の着ている服が細かい装飾までそっくりそのまま再現されていて怖いんですけど!!!
「え?あの、ソフィアス様?王国とか、人に頼っちゃダメと・・・」
「わかっている!わかっているが、ばぁやは私の世話がいきがいなのだ。私の世話をしないと死んでしまう生き物なのだよ!私は少しでもばぁやに長生きしてほしいのだ・・・」
「いや、それはまずおいといて。ばぁやさんいつの間に作ったんです?私が服を買ったのはついさっきですよね?あれ?もしかしてさっきの黒子が絡んでます?」
「だって、リリーシュカが新しい洋服を買ったら、リリーシュカ(お人形さん)だって新しい洋服着たいだろう!!(キリッ)だから、私の警備の者に頼んでばぁやに連絡とってもらってリリーシュカ(お人形さん)の服を早急に作ってもらったのだ!」
「ちょっと待って!ややこしい!!お人形さんの事は"リリーちゃん"って呼んで!いちいち『(お人形さん)』って入力するの大変だって言ってますよ?」
「え・・・誰がだ?」
「あれ?誰の事でしょう・・・?今、口が勝手に開きましたよ!怖い!!」
「っていうか、ばぁやさんの仕事っぷりはんぱないわね。精巧さと仕事の速さ・・・只者じゃないわ」
「ふふん。ばぁやは凄いのだぞ!裁縫師の最上位の称号持ちなのだからな」
「いやでも、どうやってばぁやさんに服の特徴を伝えたんです?」
「私のスキル『複写』を使ってだが。紙を持って、リリーシュカを見て、念じる」
ソフィアス様の手元の紙に私の姿が浮かびあがりました。ひぃっ!これ写真ですよ!っていうかガッツリ盗撮じゃないですか!!
「はっ!まさか昨日お人形さんつくる時も私をそのいやらしい目で舐め回すように見て複写したんじゃ?」
「おいおい、私を見くびらないで欲しいのだ。昨日と言わず、私はいつだってリリーシュカを舐め回すように見ているぞ!!」
あーーー、さっきのはやっぱり無し。うん、無しです。ちょっとでもこの人を格好いいとか思ったのは血迷っただけでした。
人は見た目じゃないってさ、普通は見た目がちょっとアレだけど性格がめっちゃいい人に使う事が多いと思う言葉だけど、まさか見た目はめっちゃいいけど性格がアレな人に使う事になろうとはね・・・。ビックリですよ。
ってか、ソフィアス様全然お城と切れてないじゃないですか。なんですか、「私の警備の者」って。私は周りを見回してみました。
木の影にささっと隠れる黒い影がありました。
・・・居た!居ました!!あの人ずっとついてくる気ですかね?アレですか?“はじめてのおつかい”みたいに生暖かく見守ってる感じですか?
なんというか、私と目が合ってから隠れるとか本当に警備の人なんでしょうか?素人じゃないんですか?
はぁ。今更ソフィアス様に約束破ったんだからついてくるなと言っても無駄でしょうね。見えないとこでストーカーされても怖いですし、どっちかって言ったらまだ見えるとこでストーカーされてる方が動向が分かるから安心ですよね。
・・・って、安心とかアホか!!どっちにしろ怖いわ!確実に私感覚がマヒしてきてますよ。
「ん?ソフィアス様・・・。何してんすか?」
ソフィアス様がリリーちゃんを花壇のヘリに座らせて複写をしています。
「リリーちゃんのアルバムを作ろうと思ってな!王国の名産品として売り出せば王国も潤うだろう」
「やめてください!!誰も欲しがりませんから。そんなの見て喜ぶのはソフィアス様だけですよ」
「なんと!今の発言は私だけがリリーちゃんを愛でる許可を貰えたと言う事か・・・?ふふ。私だけのリリーちゃん・・・」
ぞわ〜〜っ。
「ソフィアス様、もういっその事私(本物)じゃなくてもいいんじゃないですか?リリーちゃんとお城に戻られたらいいのに」
「ヤキモチか?ヤキモチなのか!?大丈夫だ!私の1番はリリーシュカだからな!リリーシュカが私の嫁で、リリーちゃんは私の愛人なのだ!」
え、これなんだ?愛の言葉を言われてんだか、馬鹿にされてんだか良くわかんないですね。
「あ、そうだ。リリーシュカ。これを私の人形に着せてあげてくれないか?」
そう言って渡されたのは、リリーちゃんとお揃いの、メンズ用にアレンジされた服だった。
ばぁやが気を利かせて作ってくれたんだ・・・ってはにかみながら照れてるソフィアス様に促されて、無心でソフィアス様人形を着替えさせた私。一体何をやっているんでしょうかね。