リリーシュカと愉快な仲間たち
ひょんな事からセルドジルワール王国の第一王子、ソフィアス様と行動を共にする事になってしまった、トホホな私です。
どこかに厄除けのお寺とか無いですかね?・・・無いですかね(泣)
「今日はこの後すぐ、パーティーの仲間と会う約束をしているので、冒険者ギルドに向かいます」
「承知した」
セルドジルワール王国の王都ラディプール(現在地)はお昼にチャイムが鳴ります。まだ、そのお昼のチャイムが鳴っていないので約束の時間は過ぎていないと思うのですが・・・。
冒険者ギルドまで来ました。まだジェシーは居ません。
私とソフィアス様は冒険者ギルドの酒場スペースの空いているテーブルに座って待つことにしました。
「・・・ねぇ。ソフィアス様。私のお人形さんはアイテムボックスに入れないのですか?」
テーブルの上にちょこんと座っている私のお人形さんを見て切り出してみた。
「リリーシュカ(お人形さん)をそんな窮屈な所に閉じ込める事など私には出来ない」
私はソフィアス様(お人形さん)をソッコーで窮屈な所に閉じ込めましたけどね。
「でも、冒険に行ったら持ってるの邪魔じゃないですか?」
「リリーシュカ(お人形さん)が邪魔な訳があるか!!リリーシュカ(お人形さん)は私の命よりも大切なものなんだぞ!?」
「は、はぁ」
オリジナル(本物)はここですけど。お人形さんにそこまで私を投影してらっしゃる事にビックリです。うん、病的で凄い怖いです!!
「あ、そういえば。ソフィアス様は剣士を極めたと仰っていましたがソフィアス様の職業ってなんですか?」
「王族に職業は無い。適正ジョブのみただひたすら鍛えるしきたりだ。私の適正ジョブは剣士と炎の魔導師だ」
「2つもあるのですか?凄いですね。ソフィアス様には弟さんが二人いらっしゃいますよね?弟さん達は何が適正なんですか?」
「弟・・・すぐ下の弟ファレルは弓士と諜者で末っ子の弟ニーヴェンは水と風の魔術師だ」
「皆さん複数の適正ジョブがあるんですね!」
「そしてニーヴェンが1番国王に向いているスキルを持っている。残念ながら私には国王としての素質とスキルは持っていなかったが」
ソフィアス様はふ、と寂しげな顔をしました。国王に向いているスキルって何でしょうか?少なくともあのおっさんにすらあるのに、ソフィアス様に無いものとは・・・。
ギルドの入口からジェシーが入ってくるのが見えました。
「あらやだ。昨日の変わった坊やと一緒なの〜?」
「ジェシー、こんにちは。こちらはソフィアス様です。国王に押し付け・・・許可を頂いてご一緒する事になりました」
「んま〜!何これー?リリーそっくりねぇ」
「リリーシュカ(お人形さん)という。私の命よりも大切な物だ」
「ま〜!リリーの事愛しちゃってるのねぇ。狂気じみてるけど」
「ま、まぁ、リリーちゃん(お人形さん)の事はさておき、これからのプランでも考えましょうか?」
「そうね。食事をしながら相談しましょ」
お昼ご飯を兼ねながら、私はこの世界に来たばかりで何のシステムも理解していない事など説明した。
「なんと・・・。リリーシュカは別世界での前世の記憶があるのか。だからこんなにも私を惑わせる特別なオーラが漂っているのか?」
「いや、わかりませんけど」
「・・・・・・」
「ジェシー?どうかした?」
「・・・・・・私もよ。私もなのよ!!前世の記憶持ってるわ!」
「えっ?」
「私はリリーよりも1月前にここに来て、そりゃもう天界で設定した見た目と性別が違うし、知らない世界だし困ったわよ〜」
「ジェシーも天界でキャラ設定したの?私も設定したのと違ってた!」
「まぁ、奇遇ね〜。あのアニーって天使いい加減な仕事してくれちゃって!」
「やっぱりアニーですか!!うー!苦情言いたい」
「言えば良いじゃないか」
私とジェシーが天界についての話をしていると、それまで蚊帳の外だったソフィアス様が口を開きました。
「死なないと天界に行けないじゃないですか!」
「いや、連絡すればいい」
「えっ?連絡、とれるんですか?」
「街の入口とかに回復ポイントがあるだろう?あそこから通信可能なんだが」
「本当ですか!?ジェシー、こうしちゃいられないわ!早くご飯食べてそこ行きましょ!!」
「そうね!ひとこと言ってやらなくちゃ気がすまないわ!」
思わぬ所で一致団結した私達はお昼ご飯を流し込み、街の入口の回復ポイントまでやってきました。
回復ポイントは淡い水色のガラスっぽい球体がふわふわと浮かんでいます。この球体に触れるとHP・MP、状態異常などが全回復します。病院要らずですね。
「二人とも、パスポートを出してくれ」
「「はい」」
「パスポートの裏に番号が書いてあるだろ?この球体の端にボタンがある。ここを押すと、数字が表示されるからこの番号を入力、と」
ソフィアス様が慣れた手つきで操作をしています。
プルルルルルルルッ プルルルルルルルッ
「はい、こちら天界お客様相談室でございます」
天界の人達こんな仕事もしてんのー?ずるっと体制を崩してしまいました。
「リリーシュカ・ラティシエ並びにジェス・クランベールがアンネロイとの対話を望んでいる」
「かしこまりました。只今呼び出しを行っていますので少々お待ちください」
ジェス?あぁ、そうか。ジェシーは身体は男の人だから、名前だけでも女性っぽくしたかったんですね。
ブゥ・・・・・・・・・ンっと音がしたと思ったら、回復ポイントの周りにバリアみたいなのが張られて周りの景色が歪んで見えます。
フッと周りの歪んだ景色が無機質な感じの空間に変わりました。
「お待たせしました〜。アンネロイです〜。アニーと呼ん・・・」
「「あー!!アニー!!」」
「いやん。言葉を遮らないでください〜」
目の前にアニーが現れました。こんなシステムが回復ポイントにあったなんて!電話BOXの進化版みたいなものですかね。