かけがえのないもの
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
地鳴りと共に大きな揺れが城を襲いました。
「きゃぁぁぁぁ!」「うわぁぁぁぁ!」「じ、地震か!?」
一斉に悲鳴が聞こえだし、あたりは、騒然となりました。
何が起こったのでしょうか。私とソフィアス様は謁見室を出て、城の外を見ました。
「じ、地面が崩れ落ちているのだ!」
「ソフィアス様、あそこ!」
お城の周りは既に闇に包まれており、お城の地面がガラガラと崩れ落ちています。
城の裏手にある星が浜の海の上に、おっさんとハデス様が浮いています。
ハデス様は手負いみたいで、動きが鈍く不利な様子です。
「ハデス様!!」
「お前は・・・。ゼウスの奴めが天界側からワシを押さえつけておるのだ・・・。ワシはもはや身動きが出来ぬ・・・」
「そんなっ・・・!!」
「よくわかっただろう、リリーシュカよ。神にたてついても無意味だと言う事が」
おっさんはそういうと、右手を天にかざしました。
「うっ!」
まただ・・・。またです。魔力を全て奪われた時と同じ感覚です。
地面に突っ伏した状態になり、物凄い力で押さえつけられているみたいです。
「リリーシュカ!!父上!狙うならリリーシュカではなく私にしてください!」
「ソ、フィアス・・・様っ」
ソフィアス様が私を抱き起こそうとしますが、私の身体はビクともしません。
「ソフィアスよ。もはやワシはお前の父などではない。・・・犯罪者の息子をもった覚えもない。国民よ聞けっ!ソフィアスとその妻リリーシュカは、ここに居るハデスと共謀し、ワシを陥れようとしているのだ!」
何を・・・。
「お父様、やめてください!リリーシュカお姉様とソフィアス兄様は悪くないです!」
ニーヴェン様・・・。
「おぉ、ニーヴェン。可哀想にの。すっかりこの二人に騙されて」
ざわざわ
「やっぱりリリーシュカ様は・・・」
「国王様が国民を見捨てる訳ないわよね!」
「国王ー!悪者を退治してくれー!」
あぁ・・・。また逆風が吹いてしまいました。おっさんめ。どこまで卑怯なんでしょうか。
私は目を閉じて考えました。そういえば、私には物騒なスキルがありましたよね。今思い出しましたよ。一体どんなスキルかはわかりませんが、おっさんを倒す手がかりになれば・・・。
“王殺し”
これは私に最初からあったスキルだ。物騒過ぎて気にも留めていなかったのですが。
これ、今使わなくちゃ二度と使う事の無いスキルだと思う。
ぐぐっと力を入れてなんとか立ち上がった。
「何っ?ばかな!ワシの重力魔法をくらって、動けるはずが無い・・・」
「馬鹿はどっちですかね・・・。国民をも謀り、あままつさえ自分の息子までをも愚弄するなんて・・・」
「ふん。今更お前如きに何が出来るとは思ってもいないがな」
「おっさんが馬鹿にしてる人にだってね、心ってもんがあるんですよ。そんなにお山の大将を気取りたいのなら、心の無いロボットの国でも作ればいいんですよ!!」
「なんだと!?」
「光は闇を生み出す・・・。ならば闇を全て光で照らしてみせますよ!」
お願い。この世界を、この大切なかけがえのない世界を救う力を私に・・・!!
「リリーシュカ!」
ソフィアス様が心配そうに私を支えてくれています。
「ソフィアス様・・・。愛しています。心から・・・」
「リ、リリーシュカ!?いきなりなんなのだ〜///」
なんだか今伝えておかないとダメな予感がします。
私を中心に光が集まってきます。
もはや、この世界にある光はこれだけですか。ならば私自身が光となりましょう。
シャイニー、イフリート、シルフ、ノーム、ウンディーネ、テネブル!巻き込んでごめんなさい。私は皆を救いたい。だから力を貸してください!
『『『『『『そんなの当たり前だよ!』』』』』』
あぁ、私の中にちゃんと皆居ますね。とても温かいです。
「リリーシュカ!物凄い光なのだ!」
もっと、もっと明るくです!影1つ残さないくらい強く・・・!!私は宙に浮き、おっさんに掴みかかりました。
「王様、この世界はもう諦めてください」
「何を・・・っ」
「この世界に要らないのは、貴方です!!国王モルゾヴァ!!」
私の全身全霊をかけて。それこそ悔いなんか残らない様に。これ、凄い魔力が減っていきます。くっ、まだです。まだっ!このままではモルゾヴァを制しきれない!
「うるぁぁぁぁぁ!!皆ぁ!アニキに力をあげるっスぅぅ!」
「お師匠様ー!魔力の事は心配しないでくださーい!!」
「我々タマタンが支援しますぞ〜!!」
ロバート!ギルバート!長老まで・・・!沢山のタマタンがここに集結しています。
ありがたいです・・・。えっと、魔力ボトルみたいに考えればいいんですかね?
「が、頑張れぇぇぇ!」「すまなかった、リリーシュカ様!」「ニーヴェン様と、先程来られたファレル様から全てを聞きました!この世界がこんなになってるのは国王のせいだと!」「この国は皆のものだ!国王一人が好き勝手にして良いはずが無いだろう!」
み、皆さん。ファレル様も無事だったんですね!良かった!
「ぐぅ・・・。ふっ。ふははははは!どうだリリーシュカよ。この愚かな国民達は安易に流されおる。先程までお前を罵っておったのに。お前が命を賭して救おうとする価値など無いだろう?」
「・・・混乱しているのだから仕方がないでしょう?世界が急にこんな事になって、何を信じていいかもわからなくて。そんな不安な時にすら人は間違えちゃいけないって言うのですか?人は間違えても、それを反省して強くなれるんですよ。そんな事も知らないんですか?」
くぅっ!おっさんしぶといです。魔力が尽きそうになるとタマタン達が私めがけて飛んできます。ジェシーが次から次へとぶん投げています。
タマタンは私にしがみつくと、パァッと弾けて消えていきます。
え?これなんだか自爆みたいな感じじゃないですか?
「ぐぅぅぅ・・・!」
後一息です!天界のゼウス様は無理でも、モルゾヴァだけはこの世界から消さねばなりません。
今回もお読み下さり、ありがとうございました┏○ ペコリ