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さよならグリーンアース(3)

「お姉様・・・!リリーシュカお姉様っ!」


う・・・。ニー・・・ヴェン様の声がします。


「大丈夫ですか?」


目を開けると、ニーヴェン様がポロポロ涙をこぼしながらこちらを見ています。背中は・・・もう痛みはありません。身体も自由に動かせます。私、生きています!!

私が身体を起こすとニーヴェン様が私にギュッと抱きついてきました。


「良かったです!リリーシュカお姉様死んじゃうかと思いましたっ!ふぇぇぇぇぇん!」

「ニーヴェン様が助けてくださったんですか?」

「お父様が物凄く怖い顔をしてこの部屋から出てくるのを見かけて・・・。僕、本当は自分の部屋から出ちゃダメだって言われてたのにどうしても気になってしまって・・・」


ニーヴェン様が来てくれなかったら私は今頃・・・っ。ゾォォォォッ。


「大丈夫ですよ。ニーヴェン様のお父様は悪い夢を見ているだけですから」

「悪い・・・夢?」

「そうですよ。私とソフィアス様がきっとお父様を悪い夢から覚まさせてあげますから」


私はニーヴェン様を抱き締め返しました。こんな小さな子まで心を痛めているというのに、あのオッサンめ。

ニーヴェン様と一緒に部屋を出ると、城の中はとても静かになっていました。


「ジ、ジェシー?アミュールさん?リジットさん!?」


返事が返ってきません。まさか!アニーが?モルゾヴァが?

私はニーヴェン様と小鳥ちゃん達がいる所まで戻ってきました。

誰も・・・居ません。先程まで私達の侵入を防ごうとしていた人達も見当たりません。


「リリーシュカお姉様・・・っ。これは一体どうなっているのでしょうか?」

「だ、大丈夫です。ニーヴェン様は何があっても私が守りますから」


私も訳がわかりませんが、せめてニーヴェン様を安心させたいから強気な発言を口にしました。自分にも言い聞かせる様に。

ニーヴェン様が心細そうに私の服の裾を掴んできました。


バルコニーに出て、見渡した景色を見て、私は愕然としました。


闇が・・・。闇が城の周りを全て飲み込んでいて、すぐそこまで来ています。


先程私がモルゾヴァに背中を刺されたから、ハデス様が私を見限ったのでしょうか?そんな・・・。


「はっ!ソフィアス様はっ!?ニーヴェン様、こっちです」

「お姉様?」


私はニーヴェン様の手を引いて、謁見室まで来ました。謁見室の床に横たわるソフィアス様。マズイです。まだ戻ってこないなんて・・・。

私はモルゾヴァに会いに行く前にソフィアス様に耳打ちをしました。王家の秘薬で天界に行ってアネッサ様にこの状況を知らせてほしい事と、ゼウス様(本体)を説得してほしいと。


私が倒れてからニーヴェン様が来るまではそんなに時間が経っっていない筈ですよね・・・。


「あぁ!ソフィアス兄様の魂が・・・、魂を繋ぐものが切れそうですっ」

「大丈夫ですよ、ニーヴェン様!後1時間程は・・・」


魂が繋がっている時はまだ仮死状態で30分程経過で死亡。死亡した事で、魂が身体と完全に離れてからのタイムリミットは1時間。それまでになんとかしなければなりません。まだ少しだけ時間に猶予がありますけど・・・。うぅ。今は天界はどんな状況なんでしょうか・・・。


私に出来ることといえば、ソフィアス様をただ信じて待っているだけ・・・。

私はソフィアス様の手を握り締めました。説得がダメでも、早く・・・帰ってきてください。


どれ位経ったのでしょうか。


「ソフィアス兄様!帰ってきたんだね!」

「え?ソフィアス様そこに居るんですか?」


私には見えません。私には霊感などなく、むしろ零感でした。

私が握りしめているソフィアス様の手がピクッと動いた事でようやくソフィアス様が帰ってきたのだと実感しました。


「ソフィアス様!ソフィアス様ぁっ!!」


私はムクリと起き上がったソフィアス様に抱きつきました。戻ってきてくれた。戻ってきてくれた!!


「り、リリーシュカ・・・?はっ!!早く逃げないと行けないのだ!」

「えっ?逃げるって・・・?」

「話は後なのだ!」


再会の喜びもつかの間、皆で逃げようと謁見室のドアを開けたら、もう城の殆どが闇に飲み込まれていました。


「これは・・・。一体どこに逃げれば・・・?」


思わず口に出してしまいました。あまりニーヴェン様を怖がらせたくは無かったのですけど。


「あぁっ!兄様!お姉様!闇が、闇が来ますっ!!」


ふと周りを見ると私達を取り囲む様に闇がじわじわと迫ってきています。もう、逃げ場がありません。

せめて、ニーヴェン様だけでも逃がしてあげたかったのですが・・・。


「オール・・・バリア・・・」


そんなの気休めに過ぎない事位わかっています。でも、最後まで諦めたくなんてなかった。

ソフィアス様は私とニーヴェン様を庇う様に抱き締めました。

そして闇はじわじわと私達を飲み込んで行きます。

痛くもなんともないですが、このまま未来永劫転生する事もなく冥界で暮らすのか・・・と虚無感が半端ないです。

この世界の終わりにソフィアス様と、ニーヴェン様と居られただけでも幸せと思うしか無いのですかね。



み ん な ! ! ! 



虹の子になったのに、私はこの世界に対して・・・何も、出来なかった。

今回もお読み下さり、ありがとうございましたm(__)m

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