王子様の名はソフィアス
冒険者ギルドまでやってきました。受付のお姉さんに、牛乳配達の配達先のサインと、ラブリーちゃんママのサイン並びに報酬アップの一筆、広場の管理人さんの草抜き完了報告、荷物の受領書、サリエラさんのサインを渡しました。
「お疲れ様です、ってこれ全部一人でこなしたんですか?」
「いやぁ〜。なかなかやりごたえがありました」
「す、凄いです。しかも、オデッサ婦人の娘さんは赤ちゃんながら、シッターいびりが凄くて有名なのに報酬倍増とか・・・」
え。最初の舌打ちとか粉々ビスケットとかあれ、やっぱりワザとでしたか。
「でも、一人なんでなかなか名声値上がらないんですよねぇ」
「いいえ、出来高ボーナスがあるのでこの様子でしたらすぐにランクがあがると思います」
「出来高ボーナス?」
「えぇ。今回のオデッサ婦人の依頼の様に、期待以上の成果があった場合は、依頼主から報酬を増やしますとギルドに連絡が入ります。その依頼はもらえる名声値が倍になります」
へぇ。頑張れば報われる・・・なんて素敵なシステムなんでしょう!
「はい、こちらが今日の報酬になりますね。パスポートに入れておけますがどうします?」
「銀貨はいいとして、銅貨めっちゃありますね!私力無いんで、銅貨は全部パスポートに入れてください」
「了解しました。では、銀貨1枚のお渡しと残りの銅貨8000枚はパスポートに入れましたので」
8000枚とか。アイテムボックスがあっても数えるの嫌だし重そうですよね。
ただ、パスポートの残高に要注意ですね。不足したら即王様ポイント貯まっちゃいます・・・。
ええと、宿屋は1泊銅貨4000枚だったかな。全部で4泊分・・・。
毎日今日みたいに身を粉にして働いてれば暮らせないことはないですね。
「ここにリリーシュカが居ると聞いたが」
「あ、はい。私ですけど、どちら様でしょうか?」
この荒れた雰囲気の冒険者ギルドにそぐわぬ、高貴な雰囲気たっぷりの金髪碧眼の見目麗しい紳士が私に何のようでしょうか?
そして、なんだか私を下から上までジロジロ見てきます。なっ、なんでしょうか!?
「ふむ。なるほどな。父上から聞いた通りのおなごだな」
「へ?」
「可憐でかわいらしい・・・」
「はっ!?」
「リリーシュカよ、私と一緒に城で暮らさぬか?」
「あ、あの・・・」
「案ずるでない。決して不自由などさせぬ」
城ですって・・・!?まさかこの人・・・。
「あぁ、すまない。私はこの国の第一王子、ソフィアスだ。父上から光の子が現れたと聞いて馳せ参じた次第だ」
「第一・・・王子・・・」
「ソフィアスで良い。さぁ、私と一緒に来い」
「すみません。ソフィアス様。私はこの国で自分の力で暮らしたいんです。王国には頼りません(いや、ちょっと印籠みたいな使い方しましたけど)」
「なんとっ!!・・・そなたは私を試すというのだな!?私に国を捨てろと・・・っ」
「いや・・・あの・・・」
「みなまで言うな!わかっておる。わかっておるが・・・暫く考えさせて欲しい。くっ・・・」
ソフィアス様はそう言うと走ってギルドを出て行きました。
ええと・・・。こちらが口を挟む隙の無いまま、一人で盛り上がって去って行きましたね。
ソフィアス様は、見目麗しいのに少し残念な御方なんでしょうかね。アレが父親じゃー、仕方がありませんけど。
「・・・アレがこの国の王子様なの?お嬢ちゃんも変なのに目をつけられちゃったわねぇ」
窓口の近くの席でお酒を飲んでいるお姉・・・お兄さんに声をかけられました。
「そこ座ってお話しましょうよ。私お嬢ちゃんに興味あるのよね」
「はぁ」
私お腹空いてるから早く宿に戻りたいのですが。お兄さんは筋肉隆々のマッスルボディで、なかなかの渋い20代くらいの方です。女性の言葉遣いなのが気になりますが・・・。その内「どんだけ〜」とか言い出しそうな雰囲気です。昨日のヒャッハーの方とは似て非なる感じです。
「私、ジェシーって言うの。ランクDの冒険者やってるわ」
「えっ、お兄さんみたいに強そうな方でもランクDなんですか?」
「お・ね・え・さんよ」
「えっと・・・」
「あ、好きな物頼んでいいわよ。リリーシュカちゃん」
「あ、名前・・・」
「あら、知ってるわよ〜。あなた昨日ここで取り乱していたじゃない」
「その説は、すみません・・・。ピザ頼んでいいですか?朝から何にも食べてなくて」
「どうぞどうぞ。でね、本題だけど。あなた私とパーティー組まない?」
「えっ、私とパーティー組んでくれるんですか?」
「勿論よ。こちらからお願いしてるんじゃない。パーティーを組めば一人でやるよりも効率よくランク上げられるわよ」
「あ、ありがとうございます!是非っ!では、いただきます!!はむっ!モグモグ・・・」
わー、なんて素敵な事なんでしょうか。少し変わっていますがピザもご馳走してくれましたし、優しそうなおに・・・お姉さんです。
私は運ばれてきたピザを思いきり頬張りました。
「はふっはふっ、むぐむぐ。ふむぉいひぃぃぃぃ(おいしい)〜〜!」
「ふふっ。そんなに慌てなくても逃げたりなんてしないわよ。じゃぁ、パーティー申請送っておくから後で了解しといてちょうだい」
「ふぁい!・・・ごっくん。宜しくお願いします!」
「こちらこそ」
ピザのケチャップがついたままの手で、ステータス画面を開いてお姉さん事ジェシーの申請を許可しました。
わー、私にも仲間が出来ました♪もう、ぼっちなんかじゃないです。仲間は生きる意味の1つです。・・・重いなんて言わないでクダサイネ・・・?