闇の精霊テネブル
なんで、こんな事になってしまったのでしょうか。
私達は、燃え盛る闇の神殿をただただ呆然と眺めていました。
火の周りが早く、ウンディーネの魔法を使った所で全焼は間違い無しです。
ペルセポネからソフィアス様を無事に奪還した後、張り詰めていた緊張が解け、意識を失ってしまった私に皆が回復アイテムを使ってくれたおかげで痛みもなく復活しました。
因みにペルセポネは例の網で捕獲済との事です。どうやらこの女は四天王だったらしく、四天王は残すところアニーのみとなりました。
「リリーシュカ、本当にゴメンなのだ・・・」
「まぁ、それはもういいですけど。ソフィアス様、血、足りてます?顔がゲッソリしてます」
「ハハハ、超・余裕っち!なのだ」
ソフィアス様、なんかの格ゲーやった事あるんですかね。何でもありのこの世界、アーケードゲームがあったとしても驚きませんよ。
それはいいとして、ソフィアス様は、後一回私がキスしたらお亡くなりになりそうなレベルです。
「ハニィが眠ってる間に闇の神殿内部を軽く見に行ってきたけど多分アンデッド系のモンスター居るよ」
「ま、ま、ま、まじですか!?」
「カタッカタッて音がしてたから多分・・・」
「ひぃ。骨ならまだいいですけどゾンビ系だったら無理かもしれません」
「大丈夫なのだ!今度は私がリリーシュカの盾になるのだ!」
「宜しくお願いします」
私はイフリートの魔法で松明を人数分作りました。だいぶ明るいです。しかし、松明を持ちながら戦うのは辛いですね。
こんな所に神殿を作る物好きさんはどこのどなたでしょうか。
神殿内に入るとやっぱり暗いです。
「イフリート、燭台みたいなのがあれば片っ端から火をつけてください」
『全く精霊使いが荒いやつだぜ』
イフリートは壁やシャンデリアのロウソクに火をつけてくれました。
「めちゃくちゃ明るくなりましたね!」
部屋の全貌がはっきりとわかるようになりました。と、同時に骸骨のモンスターがカタカタと音を立てながらこちらに向かってきました。
「ひぃっ!キモいです!」
「リリーシュカ!私の後ろに」
「私達が惹きつけるから、ハニィとソフィアス様は先の部屋に行ってー!直ぐに追いつくから」
「わかったのだ!リリーシュカ、こっちなのだ」
「あっ・・・」
ソフィアス様が私の手を取り、先の部屋へと向かいました。およ?少し頼もしいです。私はソフィアス様の背中を見つめ、ちょっとだけドキドキしました。
そのドキドキは直ぐに違う意味でのドキドキになるんですけど。
「グォォォォ・・・オ」
「ピキャァァァァ!で、で、出たーーーー!!」
「リリーシュカ!落ち着くのだ!怖かったら目を、つぶっているのだ」
やっぱり居ました。紫色したボディに腐りかけの身体。目玉は飛び出して垂れ下がっている憎いアンチクショウが!!バッチリと見てしまいましたよ!リアルで見るとマジでグロ注意です!モザイクです。
「イフリート、焼き払っちゃってください!ファイヤーウォール!」
「オォォォォォォオ!!」
「ひぃっ、燃やしても次から次へと涌いてきます!!」
「ファイヤーウォール!ファイヤーウォール!ファイヤーウォール!」
「ちょっ?リリーシュカ!目を瞑りながら魔法連発したら危ないのだ!」
「全て燃えて無くなれぇぇ!燃えろ燃えろー!!」
「リリーシュカ!!ちょっ!本当に目を開けてなのだ!ほら、モンスターはあっち!わぁぁぁぁ!」
私は目を瞑ったまま無心で炎の魔法を連発しました。次の攻撃を出そうとした時に、グィッと腕を引っ張られました。
「リリーシュカ!ここはもうヤバイのだ!引き返すのだ!」
ふと、目を開けると神殿内部は火災発生しており、退路は最早引き返す以外ありませんでした。
「う、うわぁぁぁぁぁ!?」
先に進んだ私達が戻ってきた事で何事かと驚きふためいている皆に避難指示を出し、冒頭に至るわけですが・・・。
すいません。私 の せ い で し た。
「どうする?これ・・・」
ジェシーが苦笑いを浮かべながら私を見ます。
「え、えへへ・・・。と、とりあえずずらかりますか?」
「い、いいのかな?私達後で怒られないかな?」
「フォォッ・・・・・・!」
最早リジットさんもこの惨状に言葉を失うほど驚いているようです。
『キヤァァァァァァァァ!!ボクノオウチガッ!!』
目の前に2本足で立っているイフリートと同じ様な黒い羽根を背中に生やした黒い犬が何やら叫んでいます。何処かに出かけていて今帰ってきた様子です。・・・あれ?これ闇の精霊じゃね?
「あ、あの。テネブルさん?」
『マッテ!ボクイマイソガシイ!ボクノオウチガモエテルノ!アルマゲドンデモキタノカナ!?シュウマツ!?テンシガラッパフイタ?』
この火災が私の仕業とは思ってもいないようですね。このまま、ヨハネの黙示録説を信じていてください。
「あれを消したら話聞いてくれますか?」
『ケシテクレルノ!?ケシテクレタラナンデモイウコトキクヨ!!』
「良し、男?に二言は無いですね?」
この時の私は、物凄いカリスマオーラを放ったペテン師の様だった、根拠はわからないが物凄く堂々としていた、と後にジェシーが語っていました。
私はウンディーネの力で速やかに火災を鎮火し、それはそれは恩着せがましくテネブルに契約を迫りました。
『アリガトウ!ボクノオウチ、モウスメナイケド・・・クスン』
「大丈夫ですよ。後で復旧してあげますから、泣かないでください」
『ホント!?』
「はい。私と契約して旅している間にちょちょいっと直しておきますからね」
『ワーイ♪ヤサシイニンゲン♪』
「では、森羅万象の理の元に汝、テネブル 我、リリーシュカ 互いにおける精神の繋がりを契約という名で誓う」
『ワレ テネブル ナンジ リリーシュカヲ アルジトミトメ ケイヤクスルコトヲ ココニチカウ』
私の指輪から黒いモヤの様なものが出てきてテネブルを覆い尽くし、テネブルの首にガシャコンと首輪がハマりました。おぉぉ!身体がポカポカとしてきました。
ふふふ。契約さえしちゃえばこっちのもんですよ。例え神殿の火災の原因が私だとしても。
・・・ね?ドキドキするでしょぉ?
今回もお読み下さり、ありがとうございました┏○ ペコリ