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はじめてのクエスト(2)

 とりあえず、ラブリーちゃんの周りのビスケットの粉を手でかき集めて応急処置しましたが、後で御報告しなくちゃです。

 ラブリーちゃんてば、ご丁寧に足でビスケットの粉をカーペットにねじ込んでいましたので、かなり奥深くに入り込んでいるかと思われます。


「だぁ」


 今度はおもちゃですかね。ラブリーちゃんのお気に入りのおもちゃは可愛らしい喋るクマさんです。


「はい、どうぞ」

「だぁ!あぶーっ!!」



 私はラブリーちゃんの椅子の2mほど先にクマさんを置きました。ふふ、怒ってる怒ってる。


「だぁ!だぁ!!ちっ!」


 ・・・本当にこの子可愛くないです。


「さぁ、赤ちゃんだからって甘えてちゃダメですよ。頑張ってあんよしましょうね」


「あぶー!!」

「ほらほら、クマさんはここですよー」


 ラブリーちゃん、椅子から立ち上がろうとガッツを見せています。


「立て!立つんだ!じょ・・・ラブリー!!!」

「あぁぶーーー!!!」


ガチャッ


「ただいまー☆ラブリーちゃんいい子にしてたかしら?って何やってんのーーー!?」


 マズイです。ラブリーちゃんイジメてたのバレちゃいました。


「あぶぅ〜〜!!!」

「まぁぁ!ラブリーちゃん、あんよ出来たのね」


 奥様が見たのはラブリーちゃんが根性で数歩歩いてクマさんをゲットしたとこでした。


「あなた、ラブリーちゃんのあんよの練習までしてくれたのねぇ〜!ラブリーちゃんなかなか歩こうとしなくて。初めて歩いたのよ!凄いわ!」

「は?はぁ。ラブリーちゃんとってもいい子でしたよ。あ、そういえば、隣のご夫婦が偶然窓から見えたんですがラブラブですねぇ☆いつもですか?」

「えっ?お隣りの旦那さんは、冒険者で長期クエストに出てるから居ないはずよ。ちょっとその話詳しく!」

「はぁ、ラブリーちゃんがビスケットをこぼしてしまったので、失礼かと思いましたが掃除道具を探していた所、そこの窓からお隣りの様子が見えたもので」


 奥様はダァーッとお隣が見える窓に駆け寄ると、満足そうに微笑んだ。


「あれは、お隣の旦那さんのお友達ね。うふふ。あの奥さんいつも厭味ったらしいのよね。まさか旦那さんの留守中にこんな・・・こんなっ・・・ふしだらな事っカーテンも閉めないで・・・」


 奥様・・・。お隣の情事をガン見してらっしゃいます。


「あっ、あなた。本当に今日はありがとうね!お隣の奥さんの弱みも握れたし、報酬奮発しちゃう♪ほら、ラブリーちゃんもお姉ちゃんにご挨拶して」

「だ・・・だぅ、あぶぶー」


 ラブリーちゃんが私に、お気に入りの喋るクマさんとお揃いの小さなクマさんのキーホルダーをくれました。ラブリーちゃん・・・っ!ラブリーちゃんもあんよが出来て嬉しかったんですね?うぅ・・・大人げなく意地悪してごめんなさい。


「まー、ラブリーちゃんもこのお姉ちゃんを気に入ったのねぇ〜。またお願いするわぁ♪」

「奥様、ラブリーちゃんの椅子の周りのビスケット・・・」

「あぁ、後は私がやっておくからあなたはもう帰っていいわよ。私はやる事あるから・・・」

「はい。では、私はこれで。ラブリーちゃん、ありがとう。またね」

「だーあぶー!」


 私はお隣が見える窓辺に再びさっと移動した奥様に一礼をして、そそくさとラブリーちゃんの家を後にしました。

あ、あっぶなー・・・!!なんとか色々ごまかせましたかね!奥様とお隣さんの今後が気になりますが。


チャラララ〜♪

【リリーシュカがスキル・探索、スキル・猛獣使い、スキル・詐欺師をゲットしました】


 次は広場の草抜きですね。暑い、暑いです。とっても暑いの1時4時〜って歌無かったですっけ?

 そして、広場って名前だけあって広いですね〜!一人でやる作業じゃないと思いますがぼっちなので仕方がありません。しかもこれこなしても名声1しか貰えないとか・・・ふふふ。やってやりますよ。やってやりますとも!!キュピーン


「ホワァタタタタタタタタタタタタタタ!ホワッチャーーー!!」


 ふう。力の要らない体力仕事ならなんでもござれですよ!


チャラララ〜♪

【リリーシュカがスキル・忍耐をゲットしました】


 荷物の配達も滞りなく終わり、気が付けばすっかり辺りは暗くなっていました。

 私は自分が泊まっている宿に来ました。食事スペースのお掃除です。

 夕飯の前までにテーブルを拭いたり、床を磨いたりします。あ、配膳は料理人のクエストみたいですので、私はノータッチです。

 宿屋の女将さんのサリエラさんに聞きましたが、やはり掃除機なんてものはこの世界には無く、箒で履くのが主流みたいです。後は水や風の魔法が使える方がお掃除代行をやってくれるそうです。私は風の魔法など使えないので、全部手作業です!


「いやぁ、最初辛気臭そうな顔したアンタがいきなり入ってくるなり宿代の後払いを認めろなんていうもんだから、正直なんか災いも一緒に連れてきたんじゃないかって思ってたけど、なかなか頑張るもんだねぇ。」

「サリエラさん・・・私のイメージどんなっすか?」

「しかも、王国の刻印持ちとか、人は見かけによらないもんだねぇ」

「私のイメージ!!」

「でも、あんた。パスポート使えばこんな苦労しなくてもいいんじゃないの?」

「いいえ。人に用意された、約束された未来など私は欲しくありません。あのパスポートを使うくらいなら、私はどんな困難にだって立ち向かって見せる!!ドヤッ」

 

 『私が言ってみたい言葉ランキング』上位の言葉です。使う機会がありました。くす。


「ぷっ。アンタ変わってんねぇ。自分に酔い過ぎて鼻の穴開いちゃってるよ?さー、さっさと掃除の後片付けして夕飯作るよ!アンタはギルドに報告に行ってきな」

「はい(鼻の穴は恥ずかしい)!そういや、朝から働き詰めで何にも食べていませんでした!すぐに戻ってきます!」

「あいよ、気を付けて」


 サリエラさんは前世の私のお母さん位の年齢の方で、口は荒っぽいけど、優しさ溢れる女将さんです。

 

 掃除道具を用具入れにしまって、クエスト達成の報告をしに冒険者ギルドに向かいました。

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