今生が終わりました
2作目となります。
どうぞ宜しくお願いします。
私、伊勢谷キリエ(16)は幼少期から患っていた不治の病により本日寿命が尽きました。
でも、ちっとも怖くなんてありません。生前大好きだった異世界転生物よろしく、きっと私にも異世界での次の人生が待っているからです。
えっと、とりあえず魂は抜けましたが、どこに行けばいいんでしょうかね?
なんせ、死んだのは初めてですから(笑)
病院の屋上で途方に暮れていると、3人のお仲間が居ました。
80歳以上はいってそうなぷるぷるしてるおじいちゃんと、50代くらいの親しみやすそうな感じのおばさんと、生前はさぞモテたであろう20代そこそこな少し影のある感じのイケメンのお兄さんの3人です。
因みに普通の人間と亡くなった人の違いですが、亡くなった人は本体と繋がっていた、いわばへその緒的な紐みたいなのが頭から出てるんです。途中で切れているので、確実にお亡くなりになっています。
というのも、屋上に来る間に危篤の方を観察していました所、生きてる間は魂が抜けかけていても、ちゃんと魂と本体に紐が繋がっていましたので、ソレはお亡くなりになると切れてしまうものだと判断しました。
「あの、皆さんこれからどこへ行くのかわかりますか?」
私は話しやすそうなおばさんに向かって話しかけた。
「あら〜!あなたもあっちの男の子もまだ若いのに死んじゃったのね・・・早すぎるわぁ。あ、あたしもこれからどうしたらいいのかわからなくてねぇ。おじいちゃんはわかる?」
おばさんは涙ぐみながら私達の早すぎる死を悲しんでくれています。・・・魂でも泣けるんですね。
「わしは先に逝ったばぁさんが迎えに来る筈なんじゃが・・・」
「うーん、じゃあ、私も身内が迎えに来てくれるのかしらねぇ?旦那と子供達はまだ生きてるし、だとすると誰かしらね・・・」
おじいちゃんとおばちゃんが話しているのを聞いて、私も誰が迎えに来てくれるのかを考えましたが、なんせ親はおろか、おじいちゃんおばあちゃんよりも先に死んでしまったので検討もつきません。
私は最後にお兄さんにも聞いて見ました。
「あの、お兄さんはわかりますか?」
少し影のある(亡くなったばかりで落ち込んでいるのかもしれませんが)お兄さんは屋上の柵にもたれかかったまま答えてくれました。
「・・・俺は、この世界じゃないとこへ行けるならどこでもいい。」
「あれ?お兄さんも異世界転生希望ですか?私もです!男性に生まれ変わって、異世界で冒険者とかになって色んな冒険したり、チートで無双したり、時々魅力的な女の子達に囲まれたりするんです♪」
「そういった意味では無いのだが・・・」
あれ?違うんですかね?同志が居たと思って嬉しかったのに。
「あ〜、皆さん揃って居ますね〜。皆さんこーんにーちは〜!!」
ふいに上の方からやたらテンションの高い女の人の声が聞こえてきました。太陽を背に颯爽と飛んでおられるようですが、逆光で眩しくてよくわかりませんね。
「あれ〜?声が聞こえないな〜!こーんにーち」
「あの、とりあえずここまで降りてきてもらえますか?よく見えませんので」
太陽が眩しすぎて上を見ているのが辛かったので少し食い気味に言ってしまいました。
「あっ、ごめんね〜。私天界の人事部から来ましたアンネロイと申します〜☆アニーって読んでくださいね〜♪」
私達の所まで降りてきた彼女は、頭上に浮いた天使の輪、背中でパタパタしている白い羽根、独特な白いワンピースの様な服を着た『THE天使』って感じの出で立ちの少々天然っぽそうなお姉さんでした。
「わぁ〜!本当に天使っているんですね!この天使のわっかはどうやって浮いてるんですか?これって何の意味があるんですか?あっ!天使の羽根って本当にまーっ白なんですね!ちょっと触っていいですか?」
私は初めて見る天使に興味津々です。おじいちゃんに至ってはアニーに向かって拝んでいます。
「あっ、触らないでください〜!あぁ〜!拝まないでください〜」
両腕をブンブンさせて金色のセミロングの髪の毛を振り乱しながらアニーが私と攻防戦を繰り広げています。
「・・・ところで、俺達はこれからどうすればいいんだ?」
お兄さんが腕を組みながら、早くしろという感じで言った。
「あ、そうですよぉ〜!私はあなた達の転生先について案内しに来たんです〜。えっとここでは何ですので、まずは天界に行きますよ〜。その前に、点呼をとりますね〜。伊勢谷キリエさ〜ん」
「はい」
「柏森直斗さ〜ん」
「・・・はい」
「萩野ノブ代さ〜ん」
「はいよ」
「梶原惣右衛門さ〜ん」
「・・・フガフガ」
おじいちゃん!死んでまでも入れ歯が外れそうになっています。
「はぁ〜い。全員居ますね〜。それではこれから天界へと参りまぁ〜す♪」
アニーがそう言うとまたまた空から何かが降りてきました。だから、逆光なんですってば。
・・・ん?んん?アレはっ!!!
すぐ傍まで降りてきた時にようやくそれがフラ○ダースの犬に出てくるような荷車だと気付きました。
「えっ!これに乗って行くんですか?」
ちょっと恥ずかしくない?当事者になってみて、初めて分かる感覚。
「そうですよぉ〜、さぁ、速やかに参りましょう〜」
おじいちゃんをおばさんと一緒に、サポートしながら荷車に乗せて全員乗り込んだ所で荷車は天界へと向かって上昇していきました。