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氷姫の絶対領域  作者: 団子魚
第一章 ルタニア王国の氷姫
4/6

第4話 姫様は温泉に浸かる 「ぺたんこ言うな。」


夕食を取った後でのんびりと入る温泉は最高だ。

疲れがお湯に溶けていくし、魔素もここで回復しているんじゃないかな。


「お嬢様、ご一緒してよろしいでしょうか。」


私の回答を待たずして、アニエスが入ってくる。


「ルシールは?」


「何か料理を作ってましたね。デザートなのか明日の下ごしらえなのか。」


むう。やっぱりアニエスは大きい。ルシールよりもちょっと大きいくらいだ。


「心配しなくてもお嬢様も成長しますよ。」


「そんなこと心配してないわよ!」


「シルヴィ様はあんなに大きいのですから。」


そう、お母さまの身長はたいしたことは無いけど、胸はかなり大きい。


「お嬢様はまだぺたんこですけどね。」


ぺたんこ言うな。

アニエスはお湯につかる前に、瓶に入っている魔法水を手に取り、頭や体にかける。この魔法水は体に付いた汚れを落とす効果がある。全身に塗り込んだ後、お湯をかけて流す。

この温泉に入る前にはこれを必ず行うことになっている。


「よいしょっと。」


アニエスは私の横に入ってくる。


「やっぱり、これが一番ですね。」


「今日は星が見えないのが残念だけどね。」


空は曇っていて、星も月も見ることはできない。

立ち上がって、遠くの空を見てみたけど、やっぱり見えない。


「ねえ、アニエス。」


「どうしました。お嬢様。」


「こんなに簡単に、古代遺跡やモデーヌの街へ行くのを許可されるとは思っていなかったのだけど。」


「まだ、魔法院の許可は出ていませんよ。」


「それはそうなんだけど。おじい様、何かおかしくなかった。」


「国王陛下はお嬢様の前ではいつも変ですけど。確かに、教会からの手紙やお告げの内容には何もおっしゃりませんでしたね。それなのに、お嬢様が調査に行くというのには納得しておられました。」


「そうなのよね。欠片ってのが何のかも分からないのに。」


「何かご存じなのかもしれませんね。出発の時期を指定されたのも意図があっての事かもしれません。」


「そうなのよね。2カ月の勉強で何か変わるものかしら。」


「お嬢様は、一般常識を勉強してください。普通はスカートで魔獣を追いかけたりはしないものですよ。」


「あの服はお気に入りだから良いの。」


それに簡単には傷つかないしね。


「それはそうと。私とルシールも2週間は魔法院を優先させるようにとのことです。」


「そうなの?」


「はい。」


「欠片って何なのかしらね。やっぱり、大戦に関係あるのかしら。」


大戦。

十と何年か前の話だ。

人間に害をなす魔物が至る所に現れ、人間との大きな戦いとなった。

最終的には、とある魔法士とその仲間が解決したと聞いている。


「とある魔法士って。お嬢様のお父様の話じゃないですか。」


「いやだって、あのお父様の名前をだしたら、いとも簡単に解決してそうな感じじゃない?」


お父様が苦戦することなんて想像もできない。


「まあそうですね。でもそれでしたら、今ならアデル様たちもいらっしゃいますし、大戦と同じことが起きても大丈夫なのではないでしょうか。」


「アデル兄さまが主人公の光の剣士って本が出ていたわね。そんなに真面目な人じゃないのに。」


「そんなことを言っては駄目ですよ。アデル様のファンはとても多いのですから。」


「私にだってファンの人いるわよ。」


「そうですね。私たちがお嬢様の一番のファンですもんね。」


アニエスが笑顔で近づいてきて手を私の方に伸ばしてきて、そのまま抱きしめられた。

ここはお風呂よ。

背の違いから、アニエスの胸元に私の顔が抱えられる形となる。


「何するのよ!?」


「ちょっとお嬢様。暴れると溺れちゃいますよ。」


「もう。突然変なことするからでしょ。」


何とか振りほどく。

あー、びっくりした。


「ふふっ。アデル様に負けないように、私がお嬢様の本でも書いてみましょうか。タイトルはそうですね。姫様のお使いってとこでしょうか。」


「完全に子供扱いじゃない!」


「良いんですよ。お嬢様はそのままで。」


「見てなさい。すぐに大きくなって見せるんだから。」


そう言って、私はお湯から出ていく。


「湯冷めしないようにしてくださいね。」


「もう、分かってるわよ。」


最近はアニエスに少しは認められたかなと思うときもあったけど、やっぱり子ども扱いされる。

今に見てなさい。アニエスより大きくなってやるんだから。



温泉から上がり、食堂へ行くとルシールはまだ何かを作っていた。フェリスさんもいる。


「あ、お嬢様。もうすぐ出来ますよ。」


「なに作ってるの?」


「今日のデザートは新作です。冷やした焼き菓子とチーズクリーム、それにカラメルでちょっと大人のデザートにしてみました。」


「へー、おいしそうじゃない。」


焼き菓子の上にチーズクリームと茶色いソースが乗っており、焼き菓子にソースがたっぷりとしみ込んでいる。一番上の香草が香りと彩を加えていた。

こっそりと手を伸ばしてクリームとソースを一口。

ちょっと苦みがあるが、さわやかな甘さと酸味が拡がる。

もう一口。


「お嬢様。お皿に盛りつけましたからこちらをどうぞ。はしたないですよ。」


見つかっていたらしい。

トレイに本日のデザートを4つ乗せて運ぶルシールについていき、先ほど夕食を取ったテーブルに着く。フェリスさんも私の隣に座り、デザートを頂く。


「うん、なかなかいけるじゃないの。」


「これ誰かに教わったの?」


「実はこれサン・クリストの宿の方に作り方を教えて頂いたんです。何でもその方のご出身の地方の料理みたいです。」


しつこい甘さではないから、食べやすく。すぐにお皿の上は空になってしまった。

あそこにはまだもう一皿ある。


「まだ召し上がられますか?それでしたらこちらをどうぞ。お姉ちゃんはまだ来ないみたいですし。」


アニエス、ごめんね。

2皿目も頂き始めたところで、アニエスが入ってくる。


「ルシール。デザートできた?」


アニエスと目が合う。私の前にはからのお皿と、食べ始めたところのお皿。


「お嬢様。それでは大きくなるのはお腹周りですよ。」


思わずお腹を押さえてみる。えっ、私、太ってなんかいないわよね。

運動はしてるし、確かに食べすぎと言われることはあるけれど。

アニエスの分を食べちゃってるのは悪いとおもうけど。


「あ、お姉ちゃん。いま新しいのを持ってきますから待っていてください。」


何だ、まだあるんじゃない。

安心して2皿目を頂く。うん、おいしい。


「こんなデザートがあるのなら、いろんな街に立ち寄ってみるのも悪くないわね。」


「お嬢様、目的を忘れちゃだめですからね。」


何度も言われなくても分かっているわよ。


久々の自分ベッドにもぐりこむとすぐに眠気がやってくる。

明日は久々に魔法院に顔を出す。おじい様から調査の話が伝わっているだろう。忙しくなりそうだ。


今日の反省。反省は…。反省は…zzz。



※一方その頃、王城では。※


「お父様、本当にあの子達だけで行かせるんのですか?」


ルタニア国王の執務室では、レティの母シルヴィとレティの祖父でルタニア国王でもあるドミニクが机を挟んで座っている。

机の上には教会からの手紙。


「欠片って、あのゼノの欠片ですよね。ここはリオ様にお話しして…」


「教会の神託にはレティの名がある以上、他の者に調査させるわけにはいかんだろう。当然、万が一に備えて王国軍の精鋭を各町に配置してレティを見守らせるくらいはやるがの。」


「軍の精鋭ってそこまでしなくても。」


「この手紙を見る限りは、それほどひっ迫したものではないように見えるし、東の街で魔物やゼノで被害を受けたという報告も聞いてはおらん。レティの出発の前に危険かどうかくらいは分かるだろう。」


「それでレティには2週間は勉強するように言ったんですか。」


「それだけでは無いがのう。後はプラシェンヌのリオ殿にもこの事を伝えるとしよう。リオ殿なら別の形でレティの助けができるかもしれん。」


「それでしたら私が行きますっ。」


「おまえは自分の仕事がまだ終わっていないだろう。水路の事は自分で言いだした事なのだから、しかりと最後まで面倒を見んか。大体、お前は一度行ったらなかなか戻って来んだろう。」


「うう。分かりました。」


「まあそろそろ二人目の孫を見たいという気はするのだが…。」


レティシアの知らないところで、旅の準備と大人の計画は進んでいく。



(ユメミ)・・・

(コロナ)・・・

(レティ)何よ。2人とも私とほとんど変わらないでしょ。

(コロナ)朝霜荘の温泉は私も好きですけど、たぶん私たちの温泉回で比較される流れですよね。

(ユメミ)レティは温泉宿で暮らしているんだから、温泉回は沢山あるわよね。

(レティ)・・・


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