表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬屋冒険録=異世界の薬屋さん=  作者: うー
一章 かくて新たな営みの始まり
6/10

 喉に食らい付こうとする魔物の口に、竹筒を押し込む。意に介さぬとばかりに、魔物が竹筒を噛み砕いた瞬間、魔物が硬直する。


 ※小妖鬼(ゴブリン)

 メッセチーナに広く分布する魔物。武器道具を使う。知能は低い

 状態・麻痺


 麻痺した魔物を見下ろす。未だ敵意の籠った眼で、此方を睨み付けて来るが、四肢は痙攣して動けない様だ。


 一瞬だけ、眉間に皺を寄せてマチェットを降り下ろした。相棒は?と見やると、丁度三体のゴブリンを倒し終わった様だ。

『マスタ、大丈ブ?』

 大きく肩で息をしているユウタを、気遣う様に、ルビーが聞いてくる。

「ははは・・・、まだ全然慣れないや・・・。でも、大丈夫。」

 洞窟を出て、三日も過ぎた頃から、魔物が襲って来る様になった。十日程過ぎた今では、一日に三度は襲われている。

 生きる為、死なない為に戦う。分かってはいるが、未だに慣れない。人型の魔物を、殺す事にも忌避感が有る。それでも、慣れなければいけないんだと、唇を引き結ぶ。

「さぁ、魔石取っちゃおうか」

 魔物には、魔力を蓄える『魔石』と呼ばれる器官がある様だ。魔道具等の素材らしい為、魔物を倒したら、採取している。

『マスタ、良イ?』

 ルビーが、足をつつきながら聞いてくる。

「うん。ルビーが倒した奴は、食べちゃって良いよ」

 最初の頃は、ルビーが魔石を持って来てくれたのだが、ある時、魔石を食べたいと言う、ルビーの『おねだり』にやられた。それ以降、魔物を倒した時は、魔石を食べさせている。

『魔石、力。マスター、守ル』

「そっか~、今でも十分守って貰ってるけどね~。ルビーは、良い子だねぇ」

 襲って来る魔物の殆どを、ルビーが倒している。一頻りルビーを撫でまわすと、下ろしていた背嚢を背負う。もう少し歩いたら、今日の夜営地を探さないといけない。出来たら、薬の素材も見付けたいな。そんな事を考えながら、ユウタは、ルビーと歩き出すのだった。



 夕食を取り、道中で見付けた薬草で、薬を調合する。ドーダ草とヨツモギ草を磨り潰し、水を加えて、温めながら練り上げていく。丁度良い頃合いで、鑑定してみる。


 ※傷薬※

 若干の抗炎症効果、殺菌作用が有り、患部の自然治癒力を高める。


 この傷薬に魔力を込めると、治癒薬に成るのだが、今は止めておく。出来の良すぎる物は、要らないトラブルを生む、と、以前読んだ小説に書いてあった。

「元の世界の知識って言うのも、なかなかにチートだよね」

 乾燥させた薬草から作ったお茶を、一口飲み込み、息を着く。お金に代えられそうな薬は、作れるだけ作ったほうが良いだろう。ルビーのお陰で、食べる事には事欠かないが、何しろ無一文なのである。


 ※治癒薬(極)※

 身体の損傷、欠損を、魂が記憶している状態まで治す。


 腰鞄から竹筒を取り出し、鑑定してみる。

「これ、絶対トラブルの元、だよなぁ・・・・」

 魔力を限界まで込めたこの薬は、古傷以外の部位欠損も治して仕舞うらしい。此が、どれくらい不味い事に為るのかは、流石にユウタにも分かっている。竹筒に、何本か取り、もったいないが、残りは捨てた。

「余程の事が無いなら、此方で十分だし」


 ※治癒薬(普)※

 身体の損傷を治す。


 一度魔物に傷付けられた時に、使ってみたら、一瞬で治ったので、この薬も普通では無いかも知れない。

「傷薬は、『あっち』と変わらないんだけどねぇ」

 最も、三日で治ってしまうので、元の世界の常識では通用しない。良くも悪くも、此処が異世界なのだと、改めて思う。

 お茶を飲み干し、ルビーに魔石を幾つか与え、ローブに包まる。

「明日も、いっぱい歩かなきゃね、お休み、ルビー」

 そう言って、ユウタは意識を薄れさせていく。どこかで、何かが割れる音がした気がする・・・・。



『マスター、起きて下さい、マスター』

 ルビーに起こされて、目を覚ます。早朝の森は薄暗く、肌寒い。もう少し寝ていたいけど、出発の準備をしなければいけない。

「ん~、お早うルビー・・・・。大きくなったねぇ?」

 目の前には、馬程の大きさになった、ルビーが居た。

『お早うございます、マスター。昨夜、また進化しました。頂いた魔石と、マスターの魔力で、進化が早まった様です』

「そうかぁ、ちょっと鑑定()ても良いかな?」

 了承を貰い、ルビーを鑑定してみる。


 ※ルビー※

 種族・デミアラクネー(ユウタの従魔)

 タランテリアの上位種。毒を持ち、糸を吐く。糸は丈夫で、織物等の素材になる。人族程度の知能を持つ。

 技能・吐毒。粘糸。鋼糸。機織り。手芸。縮小化。念話。


「念話かぁ、離れていても、会話が出来るのか」

 テミルダの加護の知識で、技能を確認していく。今までも、声で会話していた訳では無いが、よりはっきりと、また、距離が離れても、会話出来る様だ。

「縮小化って、どれくらい小さく成れるの?」

『分かりませんが、やってみます』

 ルビーが、そう答えると、淡く輝いた。光が治まると、其処には、手のひらに乗るくらいの蜘蛛が居た。

「ずいぶん可愛らしくなったねぇ。でも、此で一緒に町に入れるね」

 問題が一つ解決したと、安堵しながら、朝食の支度を始めるのだった。



『マスター、私、自分で歩いた方が良くないですか?』

「ん~?、せっかく可愛くなったんだし、其処にいなよ」

 川沿いを歩くユウタの肩に、小さくなったルビーが掴まっている。ルビーは、自分が従魔で有るからと、元の大きさで歩くと、ユウタに告げるのだが、ユウタは、小さいままで良いと言う。

『私は、従魔です。このままでは、お役に立てません!』

「魔物の気配とか、探って貰ってるじゃん。十分役に立ってるよ」

『マスターは、私に甘過ぎです!』

 両前足を振り上げ、主人が従魔を甘やかす事に、異議を唱えるルビーを、指先でからかいながら歩いていると、目の前が開けた。どうやら、森を抜けたらしい。遠くに、川に架かる橋の様な物も見える。街道も近い様だ。

「今日は、あの橋の辺りで夜営しようか。行こう、ルビー」

『ですから、私をマスターが乗せるのでは無く!マスターを!私が乗せる・・・・!』

 ユウタは笑いながら、ルビーを擽り歩き出す。

『聞いてるんですか!マスター!・・・・』

 肩の上では、どこか幸せそうに、ルビーが怒っていた。

ようやく森を抜けました。

ユウタが甘やかしなのも、ルビーさんが可愛らしいのがいけないのです。

多分この先も、がっつりした戦闘シーンは無いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ