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薬屋冒険録=異世界の薬屋さん=  作者: うー
一章 かくて新たな営みの始まり
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2

「もうちょい、こう、道具とかくれても良かったんじゃない?」

 湯気の出だした壷を見詰めながら、誰にともなく呟く。

 テミルダから貰った装備品は、今着ている服と靴、厚手のローブ、大きめの背嚢と腰鞄、そして山刀(マチェット)だけだ。それぞれに、質は良いが突出した性能では無い。

 幸いにも、辺りにいる獣や魔物は、ユウタにとって脅威になるような相手ではなかったが、狩れるかと言うと、狩猟の経験も、ましてや、戦闘の経験もないユウタには難しい。

「おかげで、健康的な食生活ですよ・・・・」

 強制的菜食主義生活である。『お通じ』もすこぶる良好である。

「そろそろいいかな?」

 壷を火からおろし、鑑定してみる。


 ※体力回復薬※ 肉体的な疲労を癒す


「で、これを冷ます・・・・っと」

 壷を火から下ろし、暫らく放置しつつ、新たな作業に取りかかる。

 乾燥させた『アキカマツ草』は、磨り潰して小ぶりの壷にいれる。これは麻痺毒だ。毒草の『ギタリス草』も、粉にして小分けする。

「さて、これに『魔力を込める』んだけど・・・・、どうやって?」



 壷に両手をかざし、力を込める。

「ふっ・・・・・」

 額に右手を当て、内なる力を呼び覚ます。

「ぬぅ・・・・むぅうううんっ!」

 両手を広げ、声の限りに叫ぶ。

「みんなの力を僕に分けてくれ!!!」

 etc、etc・・・・


「駄目だ・・・・、さっぱり出来ない・・・・」

 精神の暗黒面をスパークさせる、『厨二的なあれやこれ』を含む数十回の試行錯誤にもかかわらず、魔力が込められた様子が無い。

「誰かに見られてたら、僕、生きて行けない・・・・。また明日やろう・・・・」

 主に、精神的に疲れはて、立ち上がろうと、壷に手を付く。

「おぉ、・・・・・おぉ?」


 壷の中の体力回服薬と何かが繋がった感触があった。

「これが、そうなんだ・・・・」

 感覚を確かめながら、繋がりを強めて行く。自分の中から、何かが流れ出して行く。薬が求めるままに、『それ』を流していると、やがて、繋がりが切れる。


 ※生命力回復薬※ 生命力を回復する。(回復率十割)


「何事も、自然体が一番って事かぁ」




 あれから何日かが過ぎ、ユウタは、色々調べながら、薬を作っている。

『素材に魔力を込める』と効果が上がり、『薬に魔力を込める』と変異する。『体力回復薬』は『生命力回復薬』に、『傷薬』は『治癒薬』へと変わった。また、込める魔力の量で、効果が上下するようだ。

「そろそろ、人の居る所へ行かないとだなぁ」

 小雨にけむる森を眺める。人里に出る頃合いなのは、ユウタにも判っている。だからこそ、麻痺薬や毒薬を、せっせと作っているのだ。

 テミルダの話では、周囲の魔物は自分にとって脅威ではないらしいし、町を探しに行くのも悪くない。

 そんな事を考えながら、粉にした麻痺薬を保存用に作った壷に入れて行く。



 ふと、誰かに呼ばれた気がして、森の奥を見る。一瞬戸惑いはしたものの、腰鞄の薬を確かめ、マチェットを握り洞窟を出る。

 日の暮れかけた、薄暗い森の中を歩く。雨に濡れた草や枝が、体に当たるが、さほど歩く邪魔にはならない。

 しばらく歩くと、茂みの陰に、黒い何かを見つけた。大きさは、柴犬ほどの。

「蜘蛛・・・・だよな・・・・」


 ※森林蜘蛛※

 森林に棲む蜘蛛の魔物。毒を持ち、糸を吐く。

 状態:負傷・瀕死


 特別に蜘蛛が好き、という訳でも無かったが、気が付いたら蜘蛛に近寄り、治癒薬をかけていた。


 ※森林蜘蛛※

 森林に棲む蜘蛛の魔物。毒を持ち、糸を吐く。

 状態:瀕死


 傷は治った様だが、生命力がヤバそうだ。生命力回復薬をかけ、ついでに体力回復薬もかける。


 ※森林蜘蛛※

 森林に棲む蜘蛛の魔物。毒を持ち、糸を吐く。

 状態:健康


 回復した蜘蛛は、動かずにじっとしているが、もう大丈夫だろう。

「ほら、帰りな。僕も帰るからさ」

 ユウタが声をかけると、蜘蛛は、茂みの奥に消えていった。ユウタは、ゆっくりと立ち上がり、洞窟へと歩き出す。

「そういえば、魔物って初めて見たなぁ」

 こんな初邂逅も悪くない。そんな風に思いながら、洞窟に戻るのだった。




色々と試行錯誤しているのは、主人公も作者も同じです。

主人公は結果を出すけど、作者は迷走中なのが違いですね・・・・


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