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投稿した翌朝に、サブタイを間違えていたことを発見して、慌てて修正・・・・
「私の管理する世界に転移する、と言うことで良いのですね?」
掛けられた声に頭を上げると何時の間にか光は収まり、目の前には柔和な笑みを浮かべた女性が立っていた。
「私は貴方がこれより向かう世界の管理者、[テミルダ]と呼ばれている者です」
先刻よりは遥かに存在感の感じられる声で、女性は言葉を続ける。
「まずは、此度の顛末をお話ししましょう」
極稀に次元間に亀裂が発生する事象が生じ、今回は少年がそれに引き込まれてしまい次元の間に囚われてしまった事。本来であるならば囚われ人の確認をし、囚われ人がいるのならば救出し、しかる後に次元の亀裂を閉じなければならない事。今回は元の世界側の亀裂周辺に多数の人間が存在し、その為にかなり性急に元の世界側の亀裂が閉じられたこと。
「慌てていたんでしょうねぇ」
少年が次元の間に取り残された事を知った元の世界の管理者は、次元に再び亀裂を入れようと悪戦苦闘したらしい。そのせいで元の世界の理に歪みが生じ、今はその後始末に追われているのだと言う。
「ここまでで何か聞きたい事は有りますか?」
テミルダの問いかけに、少年は答える。
「とりあえずは理解しました・・・、一応は事故って事なんですね・・・」
「そう思って頂けると、助かります。彼の世界の管理者からは、確認が不充分であった事の謝意として、転移する際には可能な限りの助力を惜しまない、と言付かっています」
それからテミルダは、彼女の世界について語り始めた。
「文明レベルで言うのならば、彼の世界で言う中世。有り体に言うならば『剣と魔法の世界』、と言うところでしょうか」
人族の他に、獣人族、精霊人族等が文明を築き生活している。それぞれの種族毎に国を興したり、様々な種族で作られた国もある。俗に言う『ラノベ的な世界』なのだと。
「あぁ、物凄く良く解りました。最初に比べると、随分と俗っぽいんですねぇ?」
「貴方がこちらの理に組み込まれましたので、私も素の状態で意思が伝えられるようになったのですよ」
縁(えにし)も出来ましたしねと、テミルダは微笑みを浮かべる。
「それでは、転移の準備を始めましょう。まずは、私の加護を貴方に」
柔らかな光が少年を包む。
「この加護は私の世界、『メッセチーナ』で生きる為に身体構成を構築して、メッセチーナにおける森羅万象から、禁則事項を除く知識を貴方に付与するものです」
光が収まると、少年の髪は黒から、明るい茶色へ。瞳は黒から暗い青へと変わる。
「次に、貴方の『技能』を引き出しましょう。ただし、技能は貴方の根元にある才能によって決まります」
再び光が少年を包み、やがて収まる。
「貴方に発現した技能は、『調薬』と『鑑定』ですね。魔法は・・・・、取り敢えず付与・・・・、あぁ、なんとか・・・・」
「魔法の才能は僕には無い、ってこと・・・・、ですね?」
「その様ですね。取り敢えず、種火程度の火と少量の水の魔法は付与出来ましたが・・・・・」
申し訳なさそうに、テミルダは頭をさげる。
「いえ、充分です。ありがとうございます」
種火と水の確保が出来ただけでも有難い。と、少年は答える。
「最後になりますが、彼の世界の管理者の謝意を受け、彼女の助力を受け取りますか?」
どこか不安げに、テミルダは、少年に訊ねる。
「えぇ、緊急事態だったみたいですし、ましてや、神様みたいな様ですし?、有り難くお受けいたします」
「それでは、こちらを」
安堵した様にそう言って、テミルダが差し出した光の珠は、ふわりと浮かび上がり、少年の胸に吸い込まれる。
「彼女の加護は、私の付与した技能を最適化するものですが・・・・、やはり、魔法はそのままの様ですね・・・・」
「有るだけ有り難いですよ。お気遣い感謝します」
「それでは、最後にこれを。」
幾度目かの光が収まると、少年の姿がメッセチーナでは良く見かける、旅人のそれへと変わる。
「では参りましょう。メッセチーナへようこそ!」