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「我等の失態で御主は元の世界に帰還する事が叶わなくなった」
そう告げられたのは一人の少年。
「それはいったい・・・、と言うか・・・そもそも此処は・・・?」
恐る恐ると言った感じで訊ねる少年は、十代中頃であろうか。
「此処は・・・」
声の主、朧気に何かの輪郭をとった光の塊が答える。
ここが次元の間である事、次元間に亀裂が生じた事、その際に少年が次元の間に囚われた事、元の世界側の亀裂は既に修復されている事、光の塊が語る話に少年の顔色は悪くなっていく。
「帰れないってどうして・・・」
狼狽した少年の問に光の塊は告げる。
「彼の世界側の亀裂が閉じた際に御主の存在は彼の世界の理から外れた」
その為に、少年が存在していたと言う事実が元の世界から消失したのだと光の塊は告げる。
「御主の縁者であった者達との縁(えにし)も失われ、彼の者達の記憶からも御主の存在は失われた」
元より次元に再び亀裂を入れる事が出来ないうえに、出来たとしても元の世界に繋がる可能性が皆無に等しいのだと抑揚無く続ける。
「御主の選べる道は二つあり、その一つはここに留まる事」
茫然自失となった少年に構わず光の塊は言葉を続ける。
「その場合は我の眷族となりこの場の監視と管理を任せる事となる、悠久に」
極々稀に起きる今回のような事象に対応するための管理者として、永遠の刻をここで過ごすのだと。
「今一つは、我の管理する世界の住人となり生きる事」
異なる世界へと転移しその世界の理の住人として生きる、その世界の理の内に組み込まれるのだと。
「どちらを選ぶ?」
問われても少年は答えない、俯いたまま小さく首を振り続けるばかりだ。
「よく考えるが良い、時間は悠久にある」
少年は長い間深く俯いたまま立ち尽くしていたが、やがておずおずと口を開いた。
「貴方の世界で生きようと思います」
「で、あるか」
光の塊は徐々にその輝きを強め、やがて辺りは眩い光に包まれた。
流行りの異世界物を書いてみたくなったのでとりあえず。
温く緩く生きて行く主人公を温く緩く書いていけると良いですね。
更新は遅く不定期になる予定です・・・・・