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喫茶店改装しました

ああ…、やり過ぎた。

全額負担は流石にやばかった…。



カブトの店、空き家になってるじゃないか。


ガラス越しに見える店内にはかつて陳列していた商品は1つも無い。

扉には鍵がかかり何やら札が付いている。

読めないがきっと「閉店」か「空き家」か「入居者募集」だろう。


「店…売っちゃったのかな」


そこまでしてお金を…、これはなんとかしなければ。

罪悪感にかられながら大通りを歩く。


「あ、イオリの旦那ぁ。今さっそく改装工事やってるから、楽しみにしててくれな」

「え?カブト?」


ふいに聞こえてくるカブトの声、僕はその声の主を見つけ呆気にとられた。

なんとカブトが出てきたのは喫茶アンズの隣の家。


「いやぁ、ここ空き家だったんで買い取ったんだよ。で、ここの土地も利用することにしたんだ。大丈夫大丈夫、アンズ店長からも許可もらってるし土地ごと買ったからよ。で、旦那の部屋だけど」

「いや!待って!ちょっと待って!アンズ…店長?」

「ああ、まだ聞いてなかったかぁ。お店合併するからよろしくな」


実に良い笑顔のカブト、トカゲスマイル。


「ああぁぁ、なんたる至福。怖い見た目の種族代表ともいえるリザードマンのこの俺が、可愛い種族代表といえる猫族とともに働けるだなんて!」


「え!ええ!?どういう契約になってるの?」

「お店の外装に至るまでの改築を出資することでアンズ店長の配下に加わったのさ!」

「それ一方的に搾取されてない!?良いの!?」


「これでも商人だぜ?損得勘定くらいは出来るさ。この店は大きくなると確信してる。喫茶アンズの片隅に小さな雑貨店を開き猫グッズを売るんだ」

「…カブトじゃ怖がられ無い?」

「抜かり無い!売り子は他に雇うぜ」


「それにしても…よくお金あったね?」

「んん、ああー、実は元々そこそこ金もってたんだよ…」

「なんだ、意外と金持ちなんだね」


「リザードマンが一番稼げる場所ってさ、戦場なんだよ。俺も昔は傭兵だった。山賊まがいのこともした。殺した相手から金品だって奪った」


しんみりと語り出すカブト。

僕は何て声をかければ良いか分からなかった。


「そんな時によ、出会ったんだ。猫族の女に。いや、出会ったって言い方はズルいな。仲間で囲って襲ったんだ。金品奪って金持ちに売り飛ばすつもりだった」

「でも、しなかったんだね」

「ああ、一目惚れだったからな」

「……ん?」

「可愛かったんだ。すごく」

「………んん?」

「俺はその時気付いたんだ、俺は…可愛いものが大好きだったんだ!って」

「けっきょくただの猫好きじゃないか!」

「はははは、その子さらって逃げようとしたら傭兵仲間に囲まれて俺がボコボコよ」

「それでけっきょくその子とはどうなったの?」

「んんー、猫の王が現れてよ。俺以外の傭兵連中ボッコボコにして、その猫族の女連れてどっかに消えたよ。俺は傭兵連中の金品持って逃げ出した。それを元手にここで店始めたんだ」


「猫の…王…、先代の…。どんな見た目だった?」

「お?イオリの旦那は猫族だろ?見たこと無いのか?」

「うん、実は無いんだ」

「夜だったから良く見えなかったけど、大きさ以外は普通の猫だったな」

「そっか…」

「まぁ、そんな訳で金はあったってわけさ」

「なるほどね、…ああ、その人にまた会いたかったりする?」

「いやいや、もう何年経ったか忘れちまったくらい前だしな。でも、今どうしてるかぐらいは知りてぇなぁ…」

「機会があれば調べてみるよ」

「おお、ありがてぇ!」



「あ、それと。改装に伴い特注したいものとかあるんだけど、良い?」

「おう、もちろんだぜ」




………

……………




【喫茶アンズ】【開店準備中】


「でよぉ、イオリの旦那、頼まれた物用意してみたけど、なんだいこりゃあ」


改築が終わり一回りも二回りも大きくなった店内に鎮座する謎のオブジェ。


一本の柱に螺旋階段の様に設置された円盤。

そして天井から吊るされた板へと繋がる。

その板は道として連なり、また他の階段の様な円盤へ。


「ニャ!?これは…」

「あー…ウズウズするナァ…」


「二人には分かったみたいだね、でもダメだよ?これは猫サイズだから、二人が乗ったら壊れちゃうからね」


そう、猫用のタワー、そして通路である。

他にも猫がすっぽり納まりそうなサイズのザルもたくさん設置してもらった。



さて、アンズと出会った時以来やったこと無いけど上手くいくだろうか。

大きく息を吸い込み、猫たちに号令をかける。


「暇な野良猫集合!!」


……………。


……………………にゃー。

…………にゃー、にゃー、にゃー。

にゃー、にゃー、にゃー、にゃー、にゃー。


猫たちがゾロゾロとやってきては僕の前で座り込む。

全部で20匹はいるだろうか、ちょっと多すぎるくらい集まってしまった。


「まずはみんなお風呂!汚れとノミを落として!」


にゃー、にゃー、にゃー、にゃー、にゃー。


猫たちをお風呂へと誘導していく。

その光景を大口開けて見つめるカブト。


「え!な!……ええ!?」

「あ、カブトは知らなかったニャね?イオリは王さまニャ」

「えええええええええ!?」

「でも言い広めちゃダメニャ。猫の王さまが強いのは猫を守る時だけだからニャ」

「なるほど、単独で襲われたら大変だ。…俺がつきっきりで守らねぇと」

「絶対嫌がると思うニャ…」


うん、聞こえてる。絶対に嫌だ。



さて、猫はお風呂を嫌がると思われがちだが、それはたんにお風呂に慣れていないだけだ。


「さぁ、みんな。お風呂は怖くないと思い込め」


これでもうお風呂を怖がらない、命令権の使いかた間違えてる気がしないでもない。



綺麗になった猫たちが店内でくつろぎはじめる。


「さぁ、猫カフェの出来上がりだ」


「…店内に猫が居るだけニャ、この子達のご飯代がかかるニャ」

「まぁまぁ、あれ見てみ?」

「ニャ?」


猫に囲まれて今にも昇天しそうなトカゲ男がそこに居た。

カブトの横にエサ代募金と書いた箱をそっと近付ける。文字はソマリに書いてもらった。

カブトは何の躊躇いも無く銅貨を貯金箱の中へ…。


「ああいう客が常連になって金落としていってくれる」

「なるほどニャ…、イオリもなかなかに悪だニャ」

「いやいや、それほどでも」


「ところで、メニューに勝手に加わってるこのコーヒーってどういうことだニャ?」

「待ってて、僕がやってみせるから」



この世界にコーヒーを飲む文化は無い。

しかし香炭として使うさいに粉にするためのミルがあるのだ。


コーヒー豆を火にかける。

あまり火を通すと本来の味が損なわれてしまう。

それをミルで粉状に。


フィルターは無い、目の細かい布で代用する。

下にカップを置いて上からお湯をかける。


ト…ト…ト…ト。


ポタポタとカップに浅黒い液体が溜まっていくのを見つめるアンズたち。


「良い匂いニャ」

「ふふ、飲んでみる?」

「ちょっとだけ…」


コーヒーを口に含んだアンズの尻尾がピーンと上を向く。

目が不味いと訴える。


「なんだニャこれ!やっぱり苦いだけニャ!」

「やっぱダメか…、じゃあこれで」


コーヒーにミルクと砂糖をタップリと。


「飲んでみて。カフォオレだよ」

「ニャ!?これは美味しいニャ!甘くてまろやかニャ!」

「じゃあメニューにカフォオレ追加だね」

「コーヒーは削除ニャ」

「えー、コーヒー好きな人だっているんだよ?」

「じゃあ激マズ注意って書いとくニャ」

「え、えー…」



喫茶店のサクセスストーリーになってきてしまったのでそろそろ切りつけて話を進めたいと思います。

あ、でもけっきょく拠点は喫茶店で猫人とか他の種族とかもまだまだ増えていく予定ですが(笑)

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