表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

大集会で倒れました

間が開いて申し訳無い、お待たせしました!

え?待ってない?……お待たせしました!

大集会という名の宴会は陽が傾いてもまだ続いていた。

いつの間にか組まれていたかがり火が煌々と城を照らす。

猫人たちも流石に踊り疲れた様子だ。…では何をしているか?

お茶を淹れたりお菓子を配ったりしている。



「おーにゃ、かしくいにゃーな」

やって来たのは白い毛並みの猫人の女性。

…スカートを履いているからおそらく女性だろう。

猫の王とは言われても僕の人格は人間だ。

立って歩く以外は大きな猫だと言える猫人の性別は見た目では判断しづらい。

正直オスでも可愛い。


「ありがとう、いただくよ」

そう答えてはみたけれど、食べても大丈夫か少しだけ不安にかられた。

見た目は日本の焼き菓子である甘食に似ており美味しそうではある。

僕が受け取ると白い猫人は嬉しそうに目を細めて次の人へ配りに行った。


「イオリ?食べないニャ?」

不思議そうに僕を見つめるアンズ。


「いやぁ…、食べても大丈夫なのかなぁって」

持ってきたお菓子は色も形も不揃いで、手作りである事を物語る。

人みたいに振る舞ってはいても猫に分類される猫人、猫の作った物を食べても平気だろうか。


「イオリはよく分からない事を言うニャね?毛?毛が入ってるか心配してるニャ?」

「え…入ってる時があるの?」

「そんなのたまにしか入ってないニャ」

「たまになら入ってるんだ!?」

「それも愛嬌ニャ、猫人は立派なお屋敷に雇われたりもしてるから安心するニャ」

「出てきた食べ物に毛が入ってたら雇い主怒るでしょ!?」

「わざわざ猫人を雇う時点で察しろニャ」

「あー、…理解した」


つまり猫人を雇う人はそうとうな猫好きなのだろう。

ほぼ人間である猫族ならまだしも猫人はほぼ猫だ。

僕だって猫は大好きだ、気持ちは分からないでもない。

海外の子供向けアニメに出てきそうな、あるいは某狩りゲーのオトモのような、そんな二本足で歩く愛くるしい猫が家事をしてくれたら…。

大抵のミスは大目に見てしまうかもしれない。


僕はお菓子を一口かじると歯に挟まる不快感を味わう。

不快感の正体を指で取り除くと白くて細い糸状の…。


んんんんんん!?


「いきなり入ってたけど!?」

「ニャハハ、大当たりニャね」

味は甘食そのもので可もなく不可もなく。

歯に挟まった毛の不快感だけが印象的となった。




空はすっかり藍色に染まり城跡だけが照らされるなか、周りが少し寂しくなってきた。

猫も、猫人も、猫族も、数が半分は減っていた。


「もしかして、猫の集会って自由解散?」

「そうニャよ、帰りたい奴は勝手に帰るニャ」

「自由だなぁ」

「みんな王様の顔見に来ただけだしニャ」


「にやー、にゃーでもみんにゃにゃがいしてるにゃーにゃよ、みんにゃおーにゃあらにゃーてうれにーにゃんにゃ」


突然現れた紳士服のサバトラ柄の猫人、何言ってるのかさっぱり分からない。

「アンズ、通訳よろしく」

「いやー、これでもみんな長居してる方だよ、みんな王様現れて嬉しいんだ。だってニャ」

「なるほど、歓迎されてるみたいで嬉しいよ。通訳ありがと」

「めんどいから自分で聞き取れニャ」

「う…、いずれ…」


「おーにゃまたにゃー」

「あ、うん。またね」

なんとか聞き取れた、短文ならなんとかなりそうだ。

サバトラ紳士は手を振り闇の中へと消えていく、帰るところだったようだ。



「アンズはいつ頃帰るの?」

僕に付き合って色々教えてくれているがずっと一緒にはいられないだろう。

この世界の案内人のようなポジションの女の子だ、失うと途方に暮れてしまう。

「あ、そうニャね、そろそろ帰るニャ」

「え、じゃ、じゃあ僕もそろそろ帰ろうかな、一緒に…」

「だめニャ、王様は最後ニャ」

「う…」

まぁ、そりゃそうだろう。みんな僕に会いに来てくれたのだから。


「アンズいないと心細いなぁ」

「えー、頼りない王様ニャね。でもだめニャー。私にも用事があるニャ」

「頼むよ、一緒に居てよ」

「だ…、???…分かったニャ。…あれ?」

「やった!ありがとう、アンズ」

「???」

アンズは頭の上にたくさんのハテナマークを浮かべたような表情をしていた。

「どうしたの?」

「いや?…んんー?なんでも無いニャ?」




子猫や子猫連れの親猫達が解散しきった後、残っていた猫人と猫族が顔を見合わせる。

あ、大人達の第二幕が始まるな。直感でそう感じる間だった。


「へへへー、そろそろ良いニァー?」

「いーにゃいーにゃ、せーだいにいこにゃー」

「どいにゃーよどいにゃー!いくにゃー!」


ゴロゴロと転がってくる大樽、それに乗って颯爽と現れる猫人達。

器用に玉乗り、いや樽乗りと言うべきか。

何匹かは樽の勢いに付いていけず転んで落ちる。

しかしそこは流石の猫の反射神経、怪我も無く着地する。


この世界の事は知らないがこの光景を見ればだいたい予測はつく。

…あれは酒だろう。


「にゃーー!のまにゃーにゃー!のめにゃーのむにゃー!」

「おおー!今日の為に造ったマタタビ酒だからにゃあ!」

「まずは王様だにゃ!王様ー!王様ー!こっち来るにゃ!」

「おーにゃもーさけはのめるにゃーな?」


強引に酒の席へと着かされる。

「いや…、待って!僕は未成年…」

「のむにゃー!のむにゃー!」


木で出来た盃にトクトクと注がれる液体、脳を掻き回す香り…。

初めて嗅ぐ香り…、アルコール?いや…、これが、マタタ…。

あ……、もう…ダメ……だ。


「おーにゃ?おーにゃー!」

「匂いだけで倒れたかにゃ?」

「寝かせと……」

「そ…」

「…」

「…」


……………

………




イオリのマタタビ初体験。

猫族になって初めて嗅ぐマタタビは刺激が強すぎたようで。

アルコールの匂いもしますからね、よほど濃いのを出したのでしょう(笑)


そしてイオリもやはり物語の主人公。

イオリの特異性も少しお披露目、次ではっきりと明記します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ