第6章 秋季大会
秋季大会
僕たちは日に日に有名人になっていた。
テレビ、雑誌、新聞、あらゆるメディアが、美香石高校野球部を取り上げ、高野連のルールに苦言をていしていた。
しかしながら、一行にルールが変わるような感じなく、秋季大会が迫っていた。
「大会まで二週間やで、何の動きもないなぁ」
「れんちゃん、そんな早くに結果はでえへんで、来年の夏までにでたらええねん」
「うっちゃんの言う通りや、あせるな。」
いつも斉藤は冷静だった。
確かに、盛り上がりはあるが、現実何も実益はなかった。
これからが、どうするかだ。
秋季大会に向けて、練習でもレギュラー組のセカンドは、一年の安井誠が入っていた。
決して下手ではないが、まだまだって感じではあった。
ファンレターの返事はかなりの効果を生み、全国での盛り上がりに一役買っていた。
「こいちゃん、秋季大会は間に合わないけど、来年には…」
「うっちゃんありがとう。公式戦には出たいけど、今でも何の不満もないよ」
こいちゃんはキャプテンとして、チームを引っ張っていた。
チームは夏から、確実に成長していた。
斉藤は秋季大会注目の右腕として、評価が高かった。
この大会を頑張って、より注目を集めれば、先が見えるかもしれない。
連勝と不安
秋季大会が始まった。
我が美香石は、周りの応援のおかげもあり、連勝した。
斉藤は下馬評通りのピッチングを見せ、打線は繋いで繋いで、得点をした。
元々、守備には定評があるチームなので、そのあたりは、そつなく熟していた。
ガッツで行こうも盛り上がっていた。
毎試合、B6の誰かが応援に来てくれていた。
「うっちゃん、不安無いか?」
れんちゃんがいきなり聞いてきた。
「何がや?」
「北川や、少し守りのリズムが悪いと思うねん」
確かに北川は、この大会になって、あまり守りのリズムは良くなかった。
ハンブルや悪送球があったし、連携もタイミングが合わない事があった。
「まぁ、一年やし、徐々に上がるわ」
連勝中のうちにとっての唯一のウィークポイントではあった。
明日はベスト16の掛かった試合。
強豪、神栄高校。これに勝てるば、うちの実力はかなりのものだ。
「うっちゃん、次の資料。エースはかなり手強いよ」
こいちゃんは相手チームのデーターをまとめてくれていた。
「斉藤の調子もええし、井上も当たってきてる。行けるで、次も」
スコアラーとしてベンチに入るこいちゃんは、対戦相手のデーターをきっちり調べていた。
誰より野球が好きな、こいちゃんは、野球を誰より知っていた。
僕たちは一戦一戦と、自信をつけていた。