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第三章 ガッツで行こう

ガッツで行こう



午前中の守備練習の時だった。


グランドにカメラを持った団体がやってきた。


監督が呼ばれて何やら話してる。


僕たちは、めちゃめちゃ気にしながら、練習していた。


まぁ、カメラの向いているのは、こいちゃんの方だったけど。


監督が僕を呼んだ。


「こいつが宇梶です。」


監督が紹介したのは、人気アイドル、B6の山本君と緒方君だった。


カメラは僕に向けられ、二人のアイドルに質問されつづけた。


いつもテレビで見ていたシーンを僕が演じていた。


彼らは僕たちの、こいちゃんへの気持ちを確かめ、こいちゃんの事を聞いた。


そして、一緒に夢を実現しょうと言ってくれた。


僕たちにとっては、彼らは夢への掛橋だった。


次に、こいちゃんが呼ばれて、いざヒロインの出番となった。


最初は、僕も一緒だったが、後はこいちゃん一人で話していた。


「何の話ししてたんだよ。」


れんちゃんが、駆け寄って聞いた。


「いつもテレビで見てるやろ、あんな感じで、こいちゃんの事や、チーム事」


「うっちゃん、テレビ写ったをか?」


「カメラは向いてたけど…」


れんちゃんの悔しそうな顔が、何だか面白かった。


昼ご飯の時、B6の二人も一緒に食べて話した。


さっきあれだけ悔しい顔していた、れんちゃんもさすがに緊張気味で、これまた面白かった。


二人は本当にいい人で、僕たちは彼らに惹かれ、信頼さえしかけていた。


こいちゃんも照れながらも、テレビ局のディレクターの注目に答えていた。


午後の練習はカメラが僕たちを、いや、こいちゃんを撮り続けた。


「上手くいくとええなぁ」


斉藤が声をかけてきた。


「簡単じゃないと思うけど、上手くいくと信じてる。」


斉藤は大きく頷いた。


僕たちは、どうしても一緒に甲子園を目指したかった。


練習の後、みんなの話題は「ガッツで行こう」の事ばかり。


誰が写っただ、誰と話しただなどといつまで言っていた。


こいちゃんは少し弱り顔だったが、さすがに女の子。


B6の二人と話した事に喜びは隠しきれなかった。


今年も夏の甲子園が始まっていた。



反響



例の番組が放送されたのは、夏の甲子園が盛り上がり出した頃だった。


強豪校が地方予選で敗退したため、本命なき大会だったが、無名の公立校の大躍進が世間の注目を浴びていた。


「昨日見たか。」


朝から、やまちゃんの鼻息は荒かった。


「ええ感じやったなぁ」


れんちゃんはかなり写っていたので、上機嫌だった。


「放送終わってから、電話とメールが大変やったんやから」


こいちゃんが困り顔で言った。


確かに、僕も親戚や、小中の同級生から引っ切りなしに連絡があった。


「俺もすごかったは、えらい反響やな」


斉藤の言葉にみんなが頷いた。


あれから三回ほど取材はあった。


なんだか、カメラがある事に慣れた感じだったが、放送されたのを見ると、少し考える所もあった。


「昨日の放送はかなりの反響のようやなぁ、朝から職員室も電話鳴りぱなしや。あまり調子に乗らんと、沈着冷静にやれよ。」


監督の言葉に皆、気を引きしめた。


僕たちの計画は始まったばかりだった。


「うっちゃん、帰る時一緒に帰ってや。」


「なんで?」


「朝も何だか、いろんな人に声かけられる、一人は心細いねん」


確かに、こいちゃんは今や世間の注目も的や、何かあったら困るから、ガードは必要だった。


「わかった、一緒に帰ったるわ。」


練習中、何だかギャラリーが多かった。放送の影響か、夏休みだと言うのに部活に関係ない生徒の姿があちこちにあった。


僕たちは練習試合が近い事もあって、より実戦に近い練習をしていた。


一応、レギュラー組に僕もこいちゃんもいた。


新チームになってから、早一ヶ月、かなりいい形で来てるきがした。


練習の終わりに、監督がテレビ局から取材の一貫て゛、甲子園の決勝戦に四人連れて行きたいと、申し出があったと言った。


テレビ局からは、こいちゃんと僕が指名されているので、あと二人だった。


監督はじゃんけんで決めろと言った。練習は休みの日だったので、その辺は全員クリアだった。


短距離走で決めようとか、遠投で決めようとか、色々でたが、最後はくじ引きで落ち着いた。


当たりを引いたのは、れんちゃんと斉藤だった。


やまちゃんの悔しがり方は凄まじいかった。


甲子園の決勝戦を見に行くのは、二年ぶりだった。


棚ぼたの話しに、何だかワクワクしている僕だった。


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