第二章 計画実行
計画実行
夏休みに入り、僕たち新チームの練習も気合いが入ってきた。
9時から3時までレギュラー取りにみんなが一生懸命だった。
うちの監督は守備の良さこそが最大の攻撃だと言う方針で、徹底的に鍛え上げられる。
こいちゃんも新キャプテンとして、毎日奔走している。
そんなある日、僕は監督に呼ばれた。
午前の練習の途中だった。
夏休みの職員室は先生方も少なく、ただ冷房だけが効いていた。
「宇梶、何かテレビ局に送ったやろ?」
キタ!例の計画だ。やっぱりまずかったかなぁ?
「ハイ、送りました。」
「お前、ナイスや!」
はぁ?監督は満面の笑みで話しを続けた。
昨日、番組から取材の申し込みがあったらしく、校長に相談したところ、学校のピーアールになるからと大乗気だと言う事
そして、監督もこいちゃんの事を何とかせなあかんと思っていたらしく、かなり乗り気だった。
「来週に取材にくるそうや。上手い事いくためには、お前らも頑張らなあかんぞ」
こんなに早く取材が来るとは、ハガキを出した僕もびっくりだった。
こいちゃんは、野球少女だけど決して男みたいな感じではなく、どちらかと言うと美人なタイプだった。
僕たちは昔からの野球仲間だから、恋愛感情はおこらないけど、学校内ではかなりの人気があった。
テレビの企画としてはバッチリだと思うんだけど…
「ほんまか、うっちゃん!」
やまちゃんが大声を出した。
昼ご飯の最中に、さっき監督に呼ばれた話しをした。
「こんなに早く来るとは思わんかったわ」
「うっちゃん、でかしたで」
れんちゃんも興奮ぎみに僕に言った。
話しが見えない、こいちゃんだけが弁当を食べながらポカンとしていた。
「ねえねえ、何の話し?」
やまちゃんが、事の次第をこいちゃんに話した。
「えぇ〜!マジでそんな事したの?」
こいちゃんは目を真ん丸にして僕に近寄ってきた。
みんなのの気持ちを話し、僕の夢を話した。
「そんなにみんなが思ってくれてたなんて、私…」
感激したのか、こいちゃんの目から涙がこぼれた。
僕もみんなもそれに胸がいっぱいになっていた。
いつも冷静な斉藤が、激を飛ばした。
「こいちゃんもお前らもこれからやで、テレビが来てあかん思われたら終わりやからな。」
この言葉にみんなは俄然やる気になった様子だった。
この夏休みは暑くなりそうな気がした
こいちゃん
こいちゃんと初めて会ったのは、小学校二年生のときだった。
近所の少年野球チームに入った時に彼女は居た。
元気いっぱいの彼女は誰よりも野球を楽しんでいた。
小学生の間は試合にも出れたし、何の問題もなかった。
中学に上がると野球部入部は、かなりすったもんだしたが、先輩も同級生も小学校からの面子が多かった事もあり、何とか入部できた。
それからは、僕たちと同じ練習に必死についてきた。
そんな、こいちゃんをみんなは認め、信頼していた。
仲間に男も女も関係無い環境になっていた。
確かに、体力的に無理な部分は無きにしもあらずだったが、短距離にしても長距離にしても、タイムは僕たちと変わらなかった。
人一倍練習し、センスがあったので、こいちゃんはチームでも守備の名手になっていた。
身長168センチ体重56キロスリーサイズはしらない。
男に混じって、硬球を操るこいちゃんは、僕たちの大事な友達で仲間だった