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第15章 正念場

正念場



準決勝から事態は一変した。あまりにドラマティックな幕切れに世間は狂喜乱舞の様相だった。


こいちゃんの実力はこれで証明された感はあった。


マスコミの騒ぎぶりは以上な程だった。スポーツ紙の一面はこいちゃん一色だった。


決勝へコマを進めた美香石高校


あとは、伏魔殿がどんな判断をするのか、それだけが心配だった。


「ここまで来たお前らを褒めてやる。しかし、ここまで来たら勝取って来い!甲子園行くぞ!」


監督の力の入った言葉に僕たちは大きく返事をした。


「私達は強くなった。でも、もっと強くなれると思う。みんなで思いっきり野球しよ」


主将らしくこいちゃんがみんなに激を飛ばした。


決勝の相手は昨年の優勝校、報告学園。相手は強敵だった。


そうそう簡単に行く相手では無い事は想像できた。


夏の暑さは半端なく、それにもましてスタンドの応援は地方大会とは思えないくらいにヒートアップしていた。


予想は大会屈指の好投手の投げあいかと思われたが、やはりお互い連戦の疲れは隠せず乱打戦の様相を見せていた。


一回からお互いに点の取り合いになった。美香石は絶好調の打線はいつもの繋がりで得点を重ねた。


報告学園も斉藤の立ち上がりを攻めて得点をあげていた。


「しっかり守っていけよ!相手のペースになるな」


監督も決勝戦の難しさを実感してるようで、熱くなっていた。


五回まで4対4の同点。斉藤は幾分持ち直してはいたがまだまだ不安定なピッチングが続いていた。


準決勝のホームランで気を良くしたのか、こいちゃんは絶好調でヒットを量産していた。


僕自身も調子よくリードオフマンとして相手をかく乱していた。


七回、チャンスはやってきた。れんちゃんの二塁打の後にやまちゃんが続き1点をあげた。


そこ後も連打でこの回に3点を取った。


斉藤も最後の踏ん張りで力のある球を投げ続けた。


徐々にヒートアップする応援団!僕達の甲子園を意識し始めた。


自分に平常心と言い聞かせながら九回の守りに着いた。


色々あった一年間だった。甲子園と言う夢ともう1つの夢、こいちゃんと甲子園で4−6−3を決める


ガッツで行こうと出会い、そして色んな努力。


最高の仲間と過した野球生活もこの回で終わってしまうか、それとも夢の甲子園とうご褒美をもらえるか、


斉藤は落ち着いているように見えた。こいちゃんは何だかそわそわしていた。


「こいちゃん、落ち着いていこう!」


「うっちゃんは冷静やなぁ、心臓が口から出そうやわ」


決して冷静ではなかった。ただ、冷静を装ってただけだった。


先頭バッターを必死に食らいついてきたが、気迫は斉藤が勝った。


「ワンアウト、ワンアウト」


あと二人!


祈る様な応援の中で僕達の呼吸は自然と荒くなり、鼓動はびっくりするくらい早くなっていた。


続くバッターにはセンター前に運ばれた。


「ドンマイ、ドンマイ。ゲッツーで決めるぞ!」


れんちゃんが斉藤を激励した。


斉藤が僕に向かって、次いくぞとばかりにグラブで僕を指した。


セットアップから斉藤は冷静なピッチングをしていた。


三球目、伝家の宝刀チェンジアップは打者のタイミングを外した。


打球はこいちゃんに向かって転がった。


「こいちゃん、ゲッツーや!」


僕はセカンドベースに向かって走った。


打球はこいちゃんのグラブに向かって吸い込まれた。


同じようなシーンが甦った。昨年の秋季大会での4−6−3の失敗!


いや、今回に限ってそれは無い。


こいちゃんはしっかりボールを捕るとクイックで二塁へと身体向けて投げた。


僕はそのボールを捕るべくいつものタイミングで行った。


何年このタイミング4−6−3を決めてきたか、絶対の自信をもっていた。


こいちゃんからのボールはまさに理想的場所に来て、それを僕は流れるように捕り一塁に投げた。


二塁塁審のコールが「アウト」を告げ、そして一塁手のグラブにボールが納まった。


「アウト!」


「ゲームセット!」


勝った、甲子園や!


僕達はマウンドに走った。ナインが斉藤を中心に重なり合った。


みんな口から喜びと興奮の言葉が溢れた。


スタンドの声援はまさに狂喜乱舞の声だった。


「やったぁ、甲子園や!」


「勝ったで、俺ら勝ったんや!」


れんちゃんも斉藤もみんなが目に涙を浮かべていた。


最後の校歌を思いっきり歌って、僕達は応援団のスタンドへ向かった。


こいちゃんの号令で礼をした。


スタンドからは祝福の言葉が波のように押し寄せた。


中でも、山本くんの声は大きく僕達に聞こえていた。


ガッツで行こうのスタッフさん達も笑顔や泣き顔やでむちゃくちゃだったが、僕達の勝ちを心から祝福してくれていた。


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